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Z世代が選ぶ、高度成長以前の暮らし方

Z世代の時代がはじまった

まちづくりの仕事をしていると、町内会のような平均年齢65歳超の組織から、脂の乗ったアラフォー起業家グループなど、色んな世代の人たちと関わるのですが、僕が一番刺激を受けるのは、90年代後半以降に生まれた「Z世代」といわれる新社会人や学生たちです。

正直、「Z世代」という言葉にあまりピンときていないんですが、「イマドキの若者」とかよりも、もうちょい範囲を狭めたいので敢えて使います。

Z世代の定義はさまざまですが、ざっくりこんな感じ。

・中学時代からスマホユーザ。(デジタルネイティブ)
・ブランドよりシンプル、消費より体験志向。(LCCで気軽に海外とか)
・SNSでのコミュニケーションが主。(でもプライバシー意識は高い)
・東日本大震災を経験し、社会課題意識が高い。(ソーシャルネイティブ)


僕は、これまでの記事でよく「未来」というキーワードを使ってきました。
日本がイケイケドンドンだったバブル時代を幼少期にギリ経験し
中学時代はまだ携帯電話も持っているものはおらず
「日本の未来は~(wow・・・)世界が羨む~(yeah・・・)」
とか、モーニング娘。を熱唱していました。

ちなみに、Z世代はカラオケで「LOVEマシーン」流しても盛り上がらない汗
場合によっては知らないと言われ、大変なショックを受けたりもします。

そして痛感するわけです。

ああ、、もう平成は終わってしまったんだなと。

我が国の時代区分を表すとこんな感じになります 。

時代

今の新社会人は、同じ会社で一生尽くそうとは思っていないし、都心に満員電車で通う気もない。
そこそこ便利でリーズナブルな郊外で身の丈に合った生活をしたい。

もちろん個人差はありますが、ざっくりこういう価値観でいます。

2020年は真に時代の転換点になった年で、コロナ禍で以前とまったく違う世の中になった上、このZ世代が本格的に社会進出した年だと思っています。


趣味と職業の境界はあいまい

そんなZ世代ですが、昭和世代が未来に対しを目標や希望を失っている中で、過去の良かったものを、自分たちの手で再び作ろうとしている姿を
あちこちで目にするようになりました。

ハッシュタグにすると
#スナック   #駄菓子屋   #商店街 #横丁 #銭湯 #団地 #和風  #レトロ #田舎 #古民家
といったイメージ。

もちろん、僕の仕事上のバイアスが掛かっていることは否めません。

しかしです!
彼ら彼女ら、まだ20ちょいくらいなのに、小汚い横丁や野毛、新橋の赤ちょうちん的店を好む人も少なくないんですよ。
居酒屋といえば、安さと無難さでチェーン店ばかり行っていた自分の学生時代が恥ずかしくなります。

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そして、商店街ツアーなんかも、高い興味関心をもって参加してくれます。
何をやりたいのかよくよく話を聞くと、「自分で店を持ちたい!」とか、「スナックのママに憧れる」とか、「地元の有機野菜を販売したい」とか、楽しそうに、それも結構真面目に言ってくるし、「もうやってます笑」ってケースも結構ありますね。
あとはカフェとか、シェアハウス系も根強い人気。田舎の良さげな空き家を見つけ、オーナーに借りれるか交渉し、ボロボロの部屋を仲間と一緒にセルフリノベして、必要なものは地域からかき集めて暮らしてる人もいます。

僕はそれを、価値・共創型の暮らしと呼んでいます。

ただ、古民家を活用したゲストハウスとか、そういう話はこれまでも沢山ありました。
じゃあ、最近と何が違うのかというと、かつてのプロジェクトは、別の仕事をバリバリやってた人が「セカンドキャリア」として起業するとか、センスが良い建築のプロが関わっていたのですが、今はそういう現場を学生が普通に知っていて、インターンとして参加したり、自ら法人を立ち上げてしまうことが珍しくありません。

価値・共創型の暮らしを実践してる人が、友人知人レベルで周囲に遍在し、SNSを通じてカジュアルに、日常的に、その暮らしぶりを知ることができるようになりました。

僕が学生の頃は、まだまだ資本・競争を前提とした社会で、価値・共創を軸にオルタナティブに生きている人は、マスメディアの向こう側の存在でした。
無論、そうした世界の仕事が、就活で候補になることは99.9%ありませんでした。

もう趣味でも仕事でもない。
ライフワークとして楽しんでいるんですよね。


大人が作ってきた社会システムの限界や矛盾を理解し、自分で決断できる、自分らしさを求める人が増えているんだろうと考えています。


高度成長以前の暮らしを選ぶ


僕ら昭和最後の世代が子どもの頃、漫画やアニメで見ていた、超高層ビル、ハイテクマシンに囲まれたリッチな未来像を、彼らは夢見ていません。

斜陽国家となった日本に対して、Z世代が思い描く未来は極めて現実的で、ときにSNS上での殺伐とした関係性に疲れ、未来だけでなく今の実生活に対しても、かなり閉塞感を覚えているようです。
Z世代が求めているのは、自分に本当に合った生き方、自分のいるべきリアルな場所なんだと。そんな風に僕は捉えています。

その一方で、昭和の大人は何をしているかというと、近未来的な再開発で新しい施設をオープンさせ、ノスタルジックな横丁のような空間を、マーケティング目線でデザインとして積極的に入れ込んでいます。

渋谷のミヤシタパーク(MIYASHITA PARK)や、東京ポートシティ竹芝、東京ミッドタウン日比谷「ヒビヤ セントラル マーケット」などはその典型と言えるでしょう。

しかし、本質志向のZ世代は、それらが資本・競争型の、テーマパーク的発想であることを無意識に感じとっています。

本物の横丁、スナック、商店街、駄菓子屋には、そこに行かないと出会うことができない人との温もり、自分の人生に重なるストーリー、そして自分がその場にお客以外の形として関われる余白が存在します。

計画的に作られた最新の商業施設には、それがない。
なので、今トレンドの店や、エリア初出店なんていうテナントを誘致して、どうにか人を呼び込むように宣伝するわけです。

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価値・共創型のお店は、地元住民によって育まれ、年月が経つほど味わい深く、自分たちの暮らしに馴染んだ場所になっていきます。

そこがお客さんやお店の人にとって、価値のある場所であるかどうかは、不思議と初めて訪れた人にも伝わるのものです。

SNSやネット通販の利用、サービスの無人化が進めば進むほど、それとは真逆の、リアルで非合理的なコミュニケーション、温かく手触りのある場所が恋しくなるもの。
人間にはある程度、雑味や、無駄、ノイズが必要なんだと思います。
そういう雑味がほどよく混ざった場所が、スナック、横丁、商店街といった、かつてどの町にもあったスポットなのです。


まだ日本が貧しくも、お互いに支え合っていた高度成長以前の暮らし方。
懐古主義ではなく、むしろ新しい価値との出会い、自分に合った生き方が見込まれる選択肢の一つとして、今後、Z世代以降の子どもたちにも、じわじわ広がっていくのかも知れません。

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