見出し画像

起業家が銀行員に接するときに留意すべき5つのこと

起業家にとって、お金の問題は極めて重要である。資金調達が最初にぶつかる壁といっても過言ではない。

高い志をもって起業したのに、資金調達のために銀行に出向いたときに塩対応をされてめげるシーンがよくある。

起業家から見れば、熱い情熱に興味を示さず、財務諸表の数字を冷徹に見て判断してくる銀行員は”イヤな奴”である。しかし、資金を調達するには彼らにウンと言ってもらうしかない。我慢してやり取りする。そのプロセスに嫌気がさしてしまう。

本稿では、そんな起業家が銀行員と接するときに留意すべきことについて記載したい。

①かっこいいプレゼンテーションは響かないと肝に銘じる。

この20年でビジネスマンのスキルで最も伸びたのはプレゼン能力である。ビジネスプランコンテストなどプレゼンスキルをトレーニングする機会も多く、そういったコンテストの常連である起業家は押しなべてプレゼンの手練れである。

しかし、彼らのかっこいいプレゼンは銀行員には響かない。銀行は、かっこいいプレゼンを鵜呑みにして融資してしまい、不良債権を作った事例が山のようにあるのだ。なので、かっこいいプレゼンを見ると、”きっとウソがあるに違いない””何か隠しているに違いない”と、動じそうになる自分の心を元に戻すパワーを発揮してしまう。

それよりも、大事なことは約束したことを実行する実行力である。”今年度は売り上げを●%伸ばします””費用を圧縮して黒字化を実現します”などと宣言し、それを実現することを繰り返すことである。

それは、「借りたいときにお願いに行く」という姿勢は通用しないことを示している。借りたくなる数年前から関係を築いておくのが肝要である。そういう姿勢が、彼らをウンと言わせる。

②未来よりも過去の実績が響く。

起業家が得意なのは、未来像を示すことである。実現したい世界観を示し、それに自分がどう貢献したいかを述べる。すごく惹き込まれる。人材採用のシーンでは強力なパワーを発揮する。

しかし、銀行員にはそれは響かない。彼らは、これまでの振舞い方が、融資をするに値するかどうかを見ている。過去の経営判断において、適切に判断してきたか。その判断のプロセスは適切か。リスクマネジメントに意を払っているか。

銀行員に接するときは、未来よりも過去について重点的に話すべきである。

③言葉よりも数字で説明する。

約束したことを実行する、過去の経営判断について説明する、ことについて述べてきた。これらはいずれも、数字で説明することが求められる。

言葉で説明していると、銀行員は冷徹(そうに見える)な目で”それは具体的に何%ですか””いつまでにいくらやりますか”などと数字で回答を求めてくる。

それを嫌がらずに、「そういうもんだ」と思ってしっかり準備をしてほしい。数字で説明しようとする姿勢そのものが好感を得る。また数字で説明する準備は経営者として良いトレーニングになる。

④銀行は100億貸して年間1億しか儲からない組織であることを知る。

ここまで、銀行員の特性について述べてきた。④は、なぜそうなるのか、について語る。

銀行員は押しなべて保守的であるが、最初から保守的だったわけではない。保守的な人材を選んで採用しているわけでもない。入行してしばらくすると、石橋をたたいても渡らない人材に育っていく。

それはビジネスモデルに起因する。銀行は、100億貸して年間1億しか儲からない組織である。つまり、1億の貸し倒れが発生すると、その一年の収益が吹っ飛ぶのだ。なので、1億たりとも、貸し倒れを起こせない。勢い、リスクのある融資はできなくなる。

俗に、「雨が降ったら傘を取り上げる」と言われるが、その通り。雨が降っていても傘を差しだしていれば、その銀行は早晩倒産する。いい会社には貸して、悪い会社からは回収する。これは金融業が生まれて以来(世界最古のビジネスと言われている)、不変の真理である。

銀行は「雨が降ったら傘を取り上げる」組織であることを理解して付き合う必要がある。その分、低利のメリットを得ているわけであるから、文句を言ってはいけない。

⑤銀行員にとって何よりも大事なのは出世であると理解する。

出世が大事なのは銀行員に限らない。しかし、その傾向は強いと言えるだろう。いわゆる年功序列人事であるが、各年次で自然と競争が起きるように昇進率が設定されており、出世競争に勝つことが如実に報酬に影響するようになっている。

その人事制度は、この令和の時代にマッチしているかどうかは別にして、競争意識を煽るようによくできていると言える。

大事なのは、目の前にいる銀行員は、そういう競争社会にいることを知っておくことである。入行年次、キャリア(学歴含む)などは知悉しておく必要がある。

何気ない会話で、失礼のないように相手のハートをくすぐるトークができれば、「よくわかっている人」と思ってくれる。(冷徹に見える)銀行員も悩み事を抱える一人の人間である。そしてその悩み事は出世に起因することが多い。彼らの琴線に触れるトークをすることで、腹を割って話してくれるようになる。

そういった人間的な関係を築けることができれば、忙しい仕事の中で優先的に稟議を書いてくれる。他のクライアントを後回しにしてウチの案件を優先してくれる。そこまでいけば、対銀行交渉も一流といえるだろう。









『人の生涯は、ときに小説に似ている。主題がある。』(竜馬がゆく) 私の人生の主題は、自分の能力を世に問い、評価してもらって社会に貢献することです。 本noteは自分の考えをより多くの人に知ってもらうために書いています。 少しでも皆様のご参考になれば幸いです。