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起業家が出資を受け入れるときに留意すべき4つのこと

起業家にとって、カネ問題は最初にぶつかるカベであると言っても過言ではない。

本稿では、起業家が出資を受け入れるときに留意すべきことを述べたい。

①相手はあなたがIPOすると儲かる人たちであることを知って付き合う。

相手がベンチャーキャピタル(VC)の場合はとくにそうである。IPOを志向すること自体は悪いことではない。問題は、IPOすべきかどうかという巨大な意思決定を、さしたる検証をせずに、してしまうことである。

IPOせずとも、銀行借入をうまく使って長く活動する企業は多い。経営者も、役員報酬を長年にわたり得ることで、十分にメリットを享受することができる。一方、IPOしたがゆえに、上場維持コストだけが嵩んでしまって、何のためにIPOしたかわからなくなってしまっている会社も多いようだ。(企業がIPOすべきかどうかについては別途しっかり議論したい。)

本稿で述べたいのは、IPOの是非について十分な判断材料をそろえて議論する前に、VCから資金調達をしてしまうと、「実質的に意思決定しちゃってる」状態になってしまいかねない、ということである。

目先の資金需要のために、本来行うべき議論の機会を失わないようにしたい。

②出資は不可逆的。一方的に関係を断つことはできない。親戚になるつもりで決定する必要がある。

銀行借入であれば、返済してしまえば関係は切れる。しかし出資はそうはいかない。関係を切るためには、株式を放出してもらわないといけない。そのときの株価は買い手・売り手の同意で決まる。

売り手が納得しない価格では売ってもらえない。そういう状態になると、ビジネス関係や人的関係は悪化していることが多いので、相手はできるだけ高く売る方向で交渉してくる。つまり、関係を切るのに相当な代償を払うことになる。

よって、出資を仰ぐときは、親戚になるくらいのつもりで相手を見定める必要がある。これに関してはトライアンドエラーは不可能であると思ってほしい。

③相手が望むことを、あなたが提供できるかどうかを検討する。

相手が事業会社の場合、ビジネス上の何らかの連携を求めてくることが多い。株主から見れば、事業シナジーというカッコいい言い回しになる。

相手が望むのは、人材・ノウハウ・施設・商圏など様々だ。もちろん、我が社にもメリットがあるのであれば、よい連携になる。困るのは、「事情が変わったとき」だ。

我が社が当該事業から何らかの事情で撤退したいと思ったとき、相手の同意を得られないことがある。ビジネス面での同意が得られない場合、相手は株主としての権利を主張・行使してくる可能性がある。そうなると、本来シナジーを得られる提携が、経営の足枷になってしまう。

相手が望むことを、あなたがどの程度提供できるか、そして事情が変わったときにどの程度耐えられるか、検討してから交渉に臨んでほしい。

④資本業務提携は排他的かどうかが論点。事業運営上の制約条件になる可能性がある。

上記の通り、相手が事業会社の場合、資本業務提携を締結することが多い。この場合の論点は排他的かどうか。しばしば、相手は「同業他社とは提携しない」ことを求めてくる。(下請法に抵触するかどうかの論点もあるが、ここでは議論は割愛する)

相手から見れば、自社との提携で得たノウハウを、競業会社との提携で使われるとたまったものではない。なので、こういった要求をしてくる。それは明示的な要求もあれば非明示的な暗示もありうる。

目先の資金需要のために、安易に出資を受け入れてしまうと、今の時点で他の競業会社との将来の関係をあきらめることになることに留意して契約すべきである。

資本業務提携に際しては、極力排他的条項を外してもらうように交渉したい。相手には相手の理屈があるので、納得は得難いが、「ウチの将来の成長戦略を制限したくない」という論陣を張ってみよう。

それに対する反応次第で、本当に我が社のことを考えて出資を検討しているのか、自社のことだけを考えているのかがわかる。ある意味踏み絵になるような議論である。


いずれも、目先の資金需要がある時点では、悠長な議論になってしまう。よって、資本政策は不可逆的であることを念頭において、資金需要が起きる前から、上記の議論をしておくようにしたい。

『人の生涯は、ときに小説に似ている。主題がある。』(竜馬がゆく) 私の人生の主題は、自分の能力を世に問い、評価してもらって社会に貢献することです。 本noteは自分の考えをより多くの人に知ってもらうために書いています。 少しでも皆様のご参考になれば幸いです。