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山の上の新刊書店ARBOR BOOKS店主の日々

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27歳、山の上で本屋をはじめます。

本が好きだと思ったのはきっと小学生の頃。 生粋の小説好きな母の影響で、家にはたくさんの本があった。 母への誕生日プレゼントは、昔から東野圭吾や内田康夫だった。 人より少しだけ近いところに本があった私は、足繁く小学校の図書室へ通い、少しカビくさい奥まった場所に並ぶ本棚を居場所にしていた。 当時はそれがドッジボールが強いあの子や、足が速いあの子よりもかっこいいと信じ、夏目漱石全集やシャーロックホームズシリーズに並ぶ活字を上手く理解できないまま眺めていた。 幼稚で表面的な行動

    • 2024年9月23日 読書の秋はほんとにあった

      ・ガラッと気候が秋に。山の上は少し肌寒いほどの心地よい風が吹いていました。もう熱くならないでほしい。 ・涼しく天気も良かったのでドライブして休憩に来られる方がとても多く、14時半ごろまではお店の前にたくさんの車と人が。英彦山は紅葉の名所らしく、秋は繁忙期らしい。次から次へとカフェにも本屋にもお客様が来店してくれる日で、これからの繁忙期に向けて気が引き締まりました。 ・読書の秋とはよく言ったもの。確かに今日の気候は山の上で本を買うという行為を後押ししてくれた気がします。心地

      • 2024年9月22日 タレント本

        ・朝から霧が濃く、涼しい気候。今日ははじめてお客様が途切れたという感覚がないくらい連続してご来店いただけました。話を聞くと、口コミで人から人へ伝わっている様子で、伝えてくださった方々へ感謝しかありません。健全に知っていただき、土地に根付く本屋になれるよう精進します。 ・古本の説明をサインやPOPで全てわかるようにしておらず、お客様が古本の棚を眺めている時に説明のために話しかけるという作戦で会話をしています。全部標識でわかってしまうと私がいる意味もあまりないなと思うのでしばら

        • 2024年9月21日 浅瀬

          ・台風が近づいているせいか、山が揺れるほど風が強く、霧のような雨が続いていました。今日は静かに本を読みながら本屋のことを考える日に。 ・わざわざさんの「山の上のパン屋に人が集まるわけ」を読みながら、思考をまとめていくことに。 ・個人書店として週末に本を販売していき、赤字を平日の仕事でカバーするというやり方は、誰が見ても健全ではない。期限を決め、早いうちに解消しておかなければ、私が本屋を始めた意味がないと考えています。 ・まず薄利多売は個人でするには健全ではありません。変

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          2024年9月23日 読書の秋はほんとにあった

          ・ガラッと気候が秋に。山の上は少し肌寒いほどの心地よい風が吹いていました。もう熱くならないでほしい。 ・涼しく天気も良かったのでドライブして休憩に来られる方がとても多く、14時半ごろまではお店の前にたくさんの車と人が。英彦山は紅葉の名所らしく、秋は繁忙期らしい。次から次へとカフェにも本屋にもお客様が来店してくれる日で、これからの繁忙期に向けて気が引き締まりました。 ・読書の秋とはよく言ったもの。確かに今日の気候は山の上で本を買うという行為を後押ししてくれた気がします。心地

          2024年9月23日 読書の秋はほんとにあった

          2024年9月22日 タレント本

          ・朝から霧が濃く、涼しい気候。今日ははじめてお客様が途切れたという感覚がないくらい連続してご来店いただけました。話を聞くと、口コミで人から人へ伝わっている様子で、伝えてくださった方々へ感謝しかありません。健全に知っていただき、土地に根付く本屋になれるよう精進します。 ・古本の説明をサインやPOPで全てわかるようにしておらず、お客様が古本の棚を眺めている時に説明のために話しかけるという作戦で会話をしています。全部標識でわかってしまうと私がいる意味もあまりないなと思うのでしばら

          2024年9月22日 タレント本

          2024年9月21日 浅瀬

          ・台風が近づいているせいか、山が揺れるほど風が強く、霧のような雨が続いていました。今日は静かに本を読みながら本屋のことを考える日に。 ・わざわざさんの「山の上のパン屋に人が集まるわけ」を読みながら、思考をまとめていくことに。 ・個人書店として週末に本を販売していき、赤字を平日の仕事でカバーするというやり方は、誰が見ても健全ではない。期限を決め、早いうちに解消しておかなければ、私が本屋を始めた意味がないと考えています。 ・まず薄利多売は個人でするには健全ではありません。変

          2024年9月21日 浅瀬

          2024年9月16日 本屋の未来は明るい

          ・雨の予報でしたが午前中は雲も相まって清々しい晴れ。ゆったり時間が流れていました。 ・開店早々におじいさま二人がドライブがてらご来店。さくっと1冊本を持ってこられ、ご購入。奥さまへのお土産にされるらしく、とてもほっこり。 ・もうお一人には「おすすめの本ある?」と聞かれ、詳細を尋ねるとご自身は本は読まないけれど英彦山のお土産に奥さまへ買って帰るとのこと。寝る前によく本を読まれているらしく、お話を伺いながら本をおすすめする。最終的に「海のうた」を選んでいただきました。楽しそう

          2024年9月16日 本屋の未来は明るい

          2024年9月15日 4時間の価値

          ・帰宅してすぐに寝落ちしてしまったため、遅れました。長距離の運転で疲れることはほとんどなかったですが、連続で往復4時間以上運転するというのは大変ですね… ・BOOKS BIOTOPという本棚について、調整を効かせねばとずーっと思っています。ふらりと訪れる方やカフェに来られた方がその棚を見ているとき、どういうものなのか説明不足感があるなと。どなたでも読んでいただきたいので、古本も販売していく形におさめます。購入か、本の物々交換か、という選択肢がある中で本棚を作っていきます。

          2024年9月15日 4時間の価値

          2024年9月14日 本が売れるということ

          ・お店に到着してまずやることは気温の確認。お店から見える位置に山とかバイパスで見かけるデジタルの温度計があるのだ。表記は27度。まだ夏が粘っている。窓を開けておけば涼しいのが山の良さ。 三連休の一日目ということもあり、いつもより前の道路を通過する車やバイカーさんも少ない様子。この状況で本を買いに来る方がいる…?と早くも初日は一冊も売れない覚悟を決めて、開店。 ・本屋のオープン日、最初のお客さんは大きめのトンボだった。優雅に入店し、店内を闊歩したのちに外へ向かうも窓に激突。開

          2024年9月14日 本が売れるということ

        記事

          2024年9月16日 本屋の未来は明るい

          ・雨の予報でしたが午前中は雲も相まって清々しい晴れ。ゆったり時間が流れていました。 ・開店早々におじいさま二人がドライブがてらご来店。さくっと1冊本を持ってこられ、ご購入。奥さまへのお土産にされるらしく、とてもほっこり。 ・もうお一人には「おすすめの本ある?」と聞かれ、詳細を尋ねるとご自身は本は読まないけれど英彦山のお土産に奥さまへ買って帰るとのこと。寝る前によく本を読まれているらしく、お話を伺いながら本をおすすめする。最終的に「海のうた」を選んでいただきました。楽しそう

          2024年9月16日 本屋の未来は明るい

          2024年9月15日 4時間の価値

          ・帰宅してすぐに寝落ちしてしまったため、遅れました。長距離の運転で疲れることはほとんどなかったですが、連続で往復4時間以上運転するというのは大変ですね… ・BOOKS BIOTOPという本棚について、調整を効かせねばとずーっと思っています。ふらりと訪れる方やカフェに来られた方がその棚を見ているとき、どういうものなのか説明不足感があるなと。どなたでも読んでいただきたいので、古本も販売していく形におさめます。購入か、本の物々交換か、という選択肢がある中で本棚を作っていきます。

          2024年9月15日 4時間の価値

          2024年9月14日 本が売れるということ

          ・お店に到着してまずやることは気温の確認。お店から見える位置に山とかバイパスで見かけるデジタルの温度計があるのだ。表記は27度。まだ夏が粘っている。窓を開けておけば涼しいのが山の良さ。 三連休の一日目ということもあり、いつもより前の道路を通過する車やバイカーさんも少ない様子。この状況で本を買いに来る方がいる…?と早くも初日は一冊も売れない覚悟を決めて、開店。 ・本屋のオープン日、最初のお客さんは大きめのトンボだった。優雅に入店し、店内を闊歩したのちに外へ向かうも窓に激突。開

          2024年9月14日 本が売れるということ

          蛍の恩返し

          大学生の頃、ホタルを助けたことがある。 少し空気に粘性を感じ始めた六月の夜。 幼馴染が運転する車の助手席で、私はぼうっと窓の外を見ていた。 正しくは蛍が見られる穴場を探していたので、闇を舞う光を探してはいたのだが、しばらく見つかることもなく、ただ暗闇を視界に捉えているだけだった。 輪郭が捉えられないほどの暗闇にある川沿いの道をゆったりとした速度で車を走らせ、小さな橋を渡ろうとした瞬間、私は「ストップ!」と声を出していた。 ちょうど車のタイヤが進む方向に、光を見たのだ。 まさか

          蛍の恩返し

          ピンクのトンボ

          忘れられない記憶がある。 写真スタジオのフォトグラファーとして仕事をしていたときの話だ。 新卒入社した会社を辞め、転職した先の映像制作会社が所有している写真スタジオで、家族写真や七五三などを中心に撮影をしていた。 お客様に希望があれば、近くの神社へ行き、受付で挨拶を済ませてご祈願の前後で撮影するということも多々あった。 撮影中、受付の神主さんに番号札を告げられるとお客様は本堂に上がり、ご祈願が始まる。 その間は撮影ができないため、私は待機時間となる。 いつも通り邪魔にならない

          ピンクのトンボ

          コーヒーノキ to Nepal

          本屋さんを始めることになり、とにかく手当たり次第本屋さんを訪れていた。 今までも週一回以上は本屋さんへ行っていたのだが、もちろん読者として、ただ好きで足を運んでいただけだった。 今では入店した際の店員さんの雰囲気や本の配置、什器のデザインや高さ、店内の動線など、とにかく多くの学びがあるので、何度も訪れた本屋でも新しい発見がある。 これは一読者としても嬉しい変化であり、本屋さんそれぞれの愛というか、こだわりを感じることができ、勉強としてだけでなく、本屋さんへいくことが純粋により

          コーヒーノキ to Nepal

          あの人が好きだったジュースで喉を潤すという祈り

          まだ季節の変化を受け入れられないような空模様の6月14日、今日は父の命日だった。 私は午前中に仕事をある程度進め、昼ごはん簡単に済ませ、油山にある平成御廟まで車を走らせた。 実を言うと、きちんと命日に墓参りへ行ったことは多分ない。 そもそもはっきりとした命日を覚えておらず、夏が来る前に旅立ったという印象だけが残っていた。 今年はどうしてか、6月に入ってすぐ思い立ったように母親に連絡し、父の命日の確認をした。 掃除道具などは持っていないが大丈夫だろうか、確か手ぶらでも行けるよう

          あの人が好きだったジュースで喉を潤すという祈り

          結婚式を終え、寝落ちして目が覚めた夜の隙間に

          今日、ハワイの教会で結婚式を挙げた。 妻とは中学2年生の頃に付き合い始め、13年ほどの交際期間を経て、2023年に入籍した。 入籍してから本日までの1年強の期間は常に「結婚式が待っている」人間であり、それは決して幸せな作用だけではなかった。 何か後ろめたさがあるとか、他の女性に心が揺らいでいるという意味ではなく、ただ文字通りに「結婚式が待っている」という枕言葉が自動的に付き纏ってしまうという意味ではあるけれど、これは感覚的なところなので伝えることが難しい。 式にかかる費用や貯

          結婚式を終え、寝落ちして目が覚めた夜の隙間に

          27歳というボーダーライン

          人は年齢を重ねるごとに成熟し、人格に落ち着きを孕み、所謂大人になっていくのだと、少し前までの私は思っていた。 今この文章を打ち込んでいる27歳の私は、その思考は短絡的すぎたと反省ではないにしろ、考えを改めているところである。 そこには26歳と27歳に明確に感覚の違いがあったことが原因かもしれない。 19歳と20歳が明らかに違ったように、26歳と27歳でも筆舌しがたい大きな違いが感覚的にある。 業務委託の契約書を封入したレターパックをローソンのポストに投函した帰り道、ふと今の私

          27歳というボーダーライン

          パスポートと未来人

          「本当にいま2023年ですか!?」 私の一つ前でパスポートの申請書類を提出している女性がボリュームを制御することすら忘れ、そう声をあげていた。 くすみピンクのゆるやかなニットに細身のジーンズ、肩あたりで外に跳ねる短めの茶髪は現代人にしか見えず、時空旅行者ではなさそうだった。 マスク越しでも当惑を浮かべる受付の女性は「え、と。令和5年の2023年で合ってるかと…」と宣告する。 そのやり取りの一部始終を一つ後ろの順番で待っている私はドラマを見ているようだった。 耳を少しだけ前に

          パスポートと未来人

          たけしにいちゃんの部屋

          雨の日の匂いはいろんな記憶を掘り起こす。 8月の夕方、太陽は低い角度で輝いているのに、頭上からは雨が降り注ぐ、変な天気だった。 アスファルトから立ち上る湿度が全身にまとわりつく。呼吸もしづらい中、地下鉄へ向かう。 どこかの民家だろうか、一瞬鼻腔をなぞった香りがたけしにいちゃんの部屋を思い出させた。 普段生きていて、頭によぎることがあまりない景色が、当時その場にいた自分の視線で鮮明に蘇るので、匂いと記憶の関係性に新鮮に驚かされた。 たけしにいちゃんは母の弟。母は三姉妹でたけしに

          たけしにいちゃんの部屋

          入道雲から生まれる感情

          大人になってもまだ、入道雲を見つけたときの感情を上手く捉えられないでいる。 アスファルトに落ちる木漏れ日、静謐な湖に浮かぶ白鳥、電車の車窓から見えた一瞬の海、田んぼのあぜ道から見上げた星空なんかもそうだ。 こういった美しいものに触れた瞬間、体の隅々から「なんかいい」がとてつもない勢いでせせり上がってくるのだが、いまだにそれを言い表す言葉を見つけられない。つまり、感情に折り合いをつけられないのだ。 それは類似しているであろう「エモい」という言葉のキャパシティでは容量が軽くオーバ

          入道雲から生まれる感情