如月朔

自然、植物、生き物をこよなく愛しつつ、たまに人生迷子になったりしてる30代 勉強にな…

如月朔

自然、植物、生き物をこよなく愛しつつ、たまに人生迷子になったりしてる30代 勉強になるので、良ければ作品の感想をコメントで残してくださいませ

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【掌編小説】私は兵器です

丁寧にお辞儀をして去っていく女性の後ろ姿を眺めながら彼は言った。 「すごいものですね。僕が生まれた頃はこんな世界が来るなんて想像もしませんでしたよ」 「ああ、そうだろう。私たちにしたって近年の技術的進歩には目を見張るものがある。各地で新しい技術が次々と勃興していくのだからな」 「教授からしてもそう感じるのですね」 「そりゃそうだよ」 そう言うと教授はコーヒーを軽く啜った。 向かいに座る青年も教授に倣ってコーヒーに口をつける。 「まさかアンドロイドが給仕をしてくれる世の中が来る

    • 【掌編小説】ピアニッシモ

      私は好きでもないけどタバコがやめられない。 一人暮らしには少し広いマンションのベランダに立って、ピアニッシモに火をつける。 決して良い匂いだとは思わない。 メンソールも最初に一口以外に心地よいと感じることはない。 でもタバコの匂いと一緒に思い出されるいくつかの思い出は私の胸を程よく締めつけて心地が良い。 対岸のマンションや街灯の明かりの影響で、夜でもベランダから川が見える。 あの川はもう少し下流に行けば東京湾に流れ込む。 昼間でも川の濁った水は底が見えない。 なんだか私の

      • 【掌編小説】犀

        「最近めっきり目が悪くなって困るよ」 「そうなの?それは大変だね」 僕の言葉に対して背中越しに返事が聞こえる。 「視界にぼんやりと影がある気もするんだよね」 「あら、病院で診てもらった方がいいんじゃないの?」 彼は心配そうに言った。 「そうだよね、ちょっと不安になっちゃうよ」 僕は空を見上げる。 太陽の光は分かるがぼんやりと滲んでいる。 そんな僕の視界の中心にはやはり影が浮かんでいた。 「でも君は耳や鼻が良いから心配しなくても大丈夫だよ。俺なんか生まれつき鼻が弱くて全然匂

        • 【掌編小説】メガネの厄日

          (なんだってこんなことになるのか) 彼女は殺気立った表現でこちらを睨み付ける。 テーブルの上に置いた右手。 人差し指でテーブルを忙しなくトントンと叩いている。 (怒るといつもこの仕草をするよな) 「悪かったよ。上司に誘われて断れなくてさ」 男はテーブルに備え付けの椅子の背もたれに両手を載せて体重を支えたまま、向かい側に座る彼女の正面に立っていた。 「いつもそう。私との約束はなんなわけ?」 彼女は吐き捨てるように言う。 「それは、本当に申し訳ない…」 男の声は尻すぼみに小さくな

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        【掌編小説】私は兵器です

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          【植物紹介】チランジア・フリーシー(フリエシー)②

          みなさん、こんばんは! チランジア・フリーシー、ついに開花しました! 白い花が咲くと聞いていたような気がするのですが、もしかすると私の勘違いだったのかもしれないです。 実際に咲いた花はこんな感じでした。 色合い的には白桃のような色〜ピンクのグラデーションといった感じです。 香りはあまり強くないようです。 色合いだけで言えば、以前ご紹介したプルメリアの花に似ていますね。 少し花序が重いのか下向きに咲いていますね。 観察していると、もう幾つか花が咲きそうな気配があります。

          【植物紹介】チランジア・フリーシー(フリエシー)②

          【掌編小説】好きを仕事に

          「はあ、また俺が素材集めに行くのかよ」 カンボジアの遺跡を参考にしたと思われるダンジョンの前でアユムはため息を吐いた。 右手に持った剣と左手に持ったバックラーを交互に眺めて、渋々ながら意志を固める。 ---数時間後 「お疲れ様です。今日の収穫です」 「お疲れ様でした。ありがとうございます。こちら報酬になります」 領主が設定した無駄に胸が大きなNPCがいつも通りの言葉と対応で報酬をくれる。 「ふう」 アユムは大きく息を吐きながらゴーグルとヘッドセットを外す。 そしてPC画面

          【掌編小説】好きを仕事に

          【植物紹介】スイートバジル

          すごく暑い日が続きますね。 私も植物も少し暑さにグッタリしております。 そんな中でも逞しく花をつけていた植物をご紹介します。 透き通った白い花びらが綺麗です。 一見すると羽蝶蘭など小型の蘭のような花の形ですね。 蘭と比較すると雄蕊がかなり目立ちますが、優雅な雰囲気が似ているかもしれません。 こちら何の植物かわかりますか? みなさんもきっと目にしたり、口にしたりしたことがある植物です。 ローズマリーなどと並んで香草の代名詞とも言える「スイートバジル」です。 パスタの上

          【植物紹介】スイートバジル

          【植物紹介】チランジア・フリーシー(フリエシー)

          こんばんは。 猛烈に暑いですね。 6月の気温とは思えないですね。 皆さま、熱中症にはお気をつけください。 今日は少し嬉しい予兆があったので植物紹介をさせていただきます。 チランジア・フリーシー(フリエシー)発音がわかりませんが、アルゼンチン原産の日本ではあまり見かけないチランジアです。 光沢のある硬質な葉を展開します。 成長速度はチランジアの中では割と早い?ような印象です。 しっかりと水をあげても乾きはかなり早いので、もしかすると水を好む品種なのかも知れません。 詳

          【植物紹介】チランジア・フリーシー(フリエシー)

          【掌編小説】歯車

          「私は画家として後世に名を残したいとは考えていません」 彼女は鋭く言った。 「なるほど、評価や名声ではなく、自己表現としての作品を作っていらっしゃるということでしょうか?」 インタビュアーが少し気を遣った様子で言葉を選びながら尋ねる。 「んー、それも少し違いますね。どちらかと言えば歯車のように描かされている感じです」 「私は芸術家ではないので分からないですが、ミュージシャンの方とかがよくおっしゃってる、降りてくるみたいな感じでしょうか」 今では少なくなった紙タバコを吸える喫茶

          【掌編小説】歯車

          【植物紹介】立葵

          こんにちは。 暑いですね。 東京は30度以上の気温だったみたいです。 今回は少し趣向を変えて、自宅で育てている植物ではなく散歩の途中に見つけた植物をご紹介します。 一気に暖かくなったので開花してきましたね。 立葵(たちあおい)です。 名前の通りの特徴的なシルエットですね。 アオイ科の植物で元々は中国から薬草として持ち込まれたようですね。 いつ持ち込まれたものかはわかりませんが、歴史としては結構長いのではないでしょうか? 徳川家の葵の家紋が有名ですが、立葵も本多忠勝で有名な

          【植物紹介】立葵

          【風の吹くまま気の向くまま】言葉の持つイメージ

          先日、自動車免許の更新に行きました。 私は以前に交通違反(一時停止違反)があったため、2時間の違反者講習を受けました。 その中で交通事故の死者数について言及がありました。 交通事故によって亡くなった人のうち、最も割合が多いのは? ①車に乗る人 ②バイクに乗る人 ③自転車 ④歩行者 これは④が圧倒的に多いそうです。 冷静に考えればそうだろうと思うのですが、先入観なのか言葉の持つイメージなのか、私はすぐに④と思えなかったのです。 この問いかけに対して私が頭の中は(交通事故を起

          【風の吹くまま気の向くまま】言葉の持つイメージ

          【植物紹介】チランジア・ストレプトフィラ②

          いやはや、とても長かったです。 チランジア・ストレプトフィラ。 開花の前兆をキャッチしたのが3ヶ月前。 ようやく開花が始まりました! 花はイオナンタバンハイニンギーと似ていますね。 まだ一部しか開花していませんが写真を一枚。 花序の付け根部分はピンク色に染まって綺麗です。 花は薄紫色の筒状です。 その先から伸びる白い棒状の雌蕊と黄色の雄蕊が可愛らしいです。 受粉するかは不明ですが、冷凍保存していたバンハイニンギーの花粉を雌蕊につけてみようかと思います。

          【植物紹介】チランジア・ストレプトフィラ②

          【掌編小説】死の予約

          約予(つづまかねて)はタイムマネジメントの達人である。 分刻み、いや秒刻みのスケジュールを的確に組むことができ、また段取りが非常に良いため上場企業の社長5人の秘書を掛け持ちしているほどである。 とある社長にGoogleカレンダーより約予(つづまかねて)とまで言わしめた男である。 つづまは非常に優秀な人物であるが、少し気難しいところもあり予定の変更をひどく嫌う。 秘書という仕事柄、顧客である社長たちの予定変更に関してはつつがなくことが運ぶように対応するが、自身の予定に関しては

          【掌編小説】死の予約

          ドライフラワーあとがき+(全文掲載)

          ええ、今回書かせていただいた文章、非常に読みづらい構成になっております。 申し訳ございません😭 愛の形も文章構成も歪んだ、ごちゃごちゃした文章が書きたい!という欲望に任せて書いてしまいました(笑) 文体、表現も極力キザな感じなど意識してましたので気持ち悪い所も多分にあるかと思います。 この読みにくい文章に最後まで付き合っていただいた方にまず感謝でございます! そして文章構成やオチの性質上、細切れでの投稿には不向きだったと改めて勉強になりました😅 かなり不親切な文章だと思

          ドライフラワーあとがき+(全文掲載)

          【短編小説】ドライフラワー⑰(エピローグ)

          エピローグ パタン。 風の力であろうか。 書棚の一番端に置かれていた本が横倒しになった。 その音で私はふと現実に引き戻される。 「もう三十年になるのか。君たちと暮らし始めて」 いつの間にかピアノの自動演奏機能で再生されていたモルダウが止んでいた。 窓の外で笹の葉がサラサラと音を立てて揺れる。 まだ私が若かった頃、笹舟に幼い願いを託したことが不意に思い起こされる。 あの笹舟は、私の気持ちを一体どこまで運んでくれただろうか…… 私は隣室の扉の方を振り返ってガラスケースの中に

          【短編小説】ドライフラワー⑰(エピローグ)

          【短編小説】ドライフラワー⑯(第3章)

          ●●● 彼女は驚いたようだった。 しかし、私は彼女が抵抗するふうでもないのを見て取ると、彼女のズボンを脱がせた。 左右不揃いな彼女の白い太ももに触れ、ゆっくりと丁寧に、愛撫するように義足を取り付けた。 「作ったんだ。時間が掛かってごめんよ」 彼女は言葉を発することなく、自身の新たな右脚をさすった。 見立て通り、彼女の左脚とぴったり長さが揃っているようで安心した。 「立てる? 行こう」 私は手を差し出した。 彼女は私の手を支えにして立ち上がる。 「少し痛いわ」 当然関節など

          【短編小説】ドライフラワー⑯(第3章)