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アメリカの高校で親友だったベネズエラ人の子と6年ぶりに仲直りした話

私はアメリカの現地高校に2年間通っていたことがある。

その時に一番仲良かったのが、イラク人とベネズエラ人の女の子たちだった。
ものすごい異なるバックグラウンドを持つ私たちはなぜか仲良くなり、毎日一緒にランチを食べたり、図書館で勉強したりしていた。初めての外国籍の親友だった。

お互いの出身国が地図のどこにあるのかも知らなかったが、高校生というのは「移民」かつ「女子」という共通点だけで仲良くなれるような年頃だったのかもしれない。

ベネズエラ人のアナは、明るくてアニメキャラクターを思わせる大きな目で、めちゃくちゃ可愛かった。ポジティブでちょっとナルシストで、いつもニコニコ褒めてくれる。ナルシストかつ他人の良いところばかり目に付くところが私と似ていて、気は合ったがよく変な言い合いをしていた。
例えば、ベネズエラ人と日本人はどっちが美人が多いのかという謎のディベートを30分間したことがある。アナも私も、ネットで検索した自国の美人を見せ合いっこしたので、目の保養になったことは覚えている。

イラク人の子、ナディラは静かで知性的で、考えてから言葉を発する、めちゃくちゃ優しい子だった。ムスリムの女性が身につけるスカーフを「ヒジャブ」(下の写真)と呼ぶのも、油とスパイスをたっぷり使ったお菓子も、ナディラが教えてくれた。私とアナが言い合いをしていると必死で仲裁してくれるナディラのおかげで、私たち三人組は均衡を保っていた。

ヒジャブ。ナディラはネイビーのがお気に入りだった

ナディラと私はお互いの家に泊まりに行ったことがある。彼女のご家族が朝ごはんや夜ご飯を出してくれて、アラブの生活を身近に感じられた。女性になら髪の毛を見せても良いのだと、初めて彼女が髪を下ろしている姿を見せてくれた。

反対にナディラが泊まりにきてくれた時、私の両親はイスラム教徒にどんなご飯を提供したのか頭を絞った挙句、ハラールのフライドチキンを用意した。(ちなみにハラールとは、イスラム教を信仰する人が食べられるもののことです)

でも、私たちが仲良くなって1年半くらい経った時、喧嘩別れのような形で分裂してしまった。
経緯は簡単で、ナディラの好きだった男の子にアナがアプローチして、ナディラと私がキレたのだった。なんとも高校生らしい喧嘩だなあと今は思う。

二年経ち、私は帰国することになった。アナと喧嘩別れしたことが心残りじゃなかったといえば、嘘になる。でも私とナディラは仲が良いままだったので、その友情を大切にしていけばいいと私は半ば諦めた。

そして日本の大学生になった。アナは私のインスタを何度かフォロー申請してくれたが、私はフォローし返す気もあまり湧かず、放置していたらついに忘れてしまった。
ただ、ナディラが描いてくれた三人組の絵を私は大切に持っていた。アニメタッチで描かれた三人は嬉しそうな笑顔でピースしていた。

そして私は社会人になり、悪戦苦闘しながらも数ヶ月経った。
そんなある時、突然アナからインスタグラムで連絡がきた。和訳するとこんなことが書かれていた。
「私たちが話さなくなってすごく長い期間が経つね。また繋がって、もう一回だけでも話したいと思ってる。あなたが元気でやっているといいな☺️」

ものすごくびっくりした。
アナがそう思っていたことも、わざわざ連絡してくれることも想定外だった。

私はすぐに連絡を返した。
思い出す時もあったが連絡できていなかったこと、連絡をもらって嬉しいこと。
フォローをして久しぶりに見るアナのインスタグラムは、相変わらず超可愛い自撮りばかりで、変わってないなあと笑ってしまった。5年前の投稿に遡ると、芋くさい私が、ナディアとアナと一緒に笑顔で残されていた。私の前髪は自分で切ったから眉上でバサバサしていたけど、とびきりの笑顔だった。

私たちは近況報告をし合う。
アナは「髪切ったんだね、似合ってる」といってくれた。
私は「髪染めたの、相変わらずかわいいね」といった。アナは地毛の茶髪を染めて、ブロンドになっていた。現地の放送局に勤めているらしく、大学卒業をした頃からさらに綺麗になっている。
私たちはどちらも別の国にいるけれど仕事内容が似ていて、同僚だね、と言い合った。

こういうふうに彼女とまた繋がるのは、不思議な感覚だった。
私たち三人には、お互いに高校時代の思い出しかない。
それも休み時間にご飯を一緒に食べたり、ヒーヒー言いながら化学の勉強をしたり、恋バナをしたり(国が違うから価値観も違くて面白かった)、かっこいい男の子にキャーキャー言ったり、そんなことくらいだ。三人で一大プロジェクトを成し遂げたわけでもないし、インスタ映えの動画が残っているわけでもない。

でも、形に残らないような当時の小さな日常の記憶を大切にして、また繋がろうと言ってくれたところに、彼女の強さと優しさを思い出した。英語力ではネイティブに追いつかなかったが、彼女が好きなものは好き、嫌なことは嫌だ!と全力で伝える姿に、私は毎回感動していた。言葉がネイティブじゃなくても繋がれる、伝えられると信じる気持ちでは、私はまだまだ彼女に敵わない。
でも何かを「伝えたい」なら、アナみたいな強さは必要だ。

だから、次は私から言い出してみるつもりだ。ナディラと三人でオンライン同窓会してみようよ!と。



(二人の名前など一部変えております)


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