Free dom~路地裏の幻Ⅱ~
こうたに初めて会った日から2日後、
俺はカフェの現状を確かめるために
高校が終わってから歩いてカフェに向かった
俺の高校からカフェまでは
30分以上歩かないといけない。
8月の終わりだというのに蒸し暑く
歩くだけで汗をかいてしまう。
近くのドンキで500mlのジュースを買って
およそ2か月ぶりにカフェに顔を出した
受付にこうたが座っている
「お疲れ~学校終わりなのに早いね」と
俺が言うと、こうたは
「オーナーとの約束で
週4日17時から21時まで
オープンすることになってるんだよ」
週4日放課後4時間カフェの受付業務か、、
ボランティアの域を超えている。
「最近お客さん来てるの?」
「まぁぼちぼちかな、お客が来ても
アンケート記入と簡単な説明以外は
特にすることないから暇だよ」
こうたは意外と読書家らしい。
ここのカフェには賃貸主が買い集めた
ビジネス書が並ぶ本棚があり
スタッフは自由に読んで良いことになっている。
それが唯一の救いだとか。
カフェの現状について
詳しく聞いてみることにした。
分かったことを順番に整理すると
まずこうたが運営に入った直後
元々、受付をやっていた東京の大学生が
姿を消した。顔を出さなくなっただけでなく
ラインやTwitterまで全部消してしまったのだ
オーナーは事情を知っているのかもしれないが
オーナー自体がカフェに顔を出さないので
聞くにも聞けない。
また元々はフリーWi-Fiだったのだが
賃貸主からWi-Fiの利用を禁止された。
こうたもそのことについては
書類を見せられただけなので
なぜこのような経緯になったのかは知らない
また、一日の平均利用客が3人4人なので
1日の大半はカフェにこうたが一人きりらしい
当初はフリードリンクの予定だったが
現状はオーナーのフィリピン土産の紅茶のみ
カフェをオープンしてからというもの
この事業での収益はない。
誰が見ても健全な運営とはいえないだろう
俺からしたら、それはまるで孤島に
閉じ込められているようなものだ。
カフェに来てから1時間が経った。
2人で話し合っていると、ふと壁に
貼ってあるポスターに目がいった
「学生起業コンテスト」についての
ポスターだ。そこには去年の参加者が
起業の重役の前で自分の企業案を
発表している場面の写真があった。
どいつもこいつも癖がありそうな
人ばっかりだ。はちまき巻いて
熱弁してる人もいた。
こんな奴らが集まったら絶対面白いよな
なんて考えた。ここで俺が思いつく。
「いや、待てよ。お客が来ないなら
俺たちが呼んじゃえばいいじゃん。
俺たちの知ってる限りの
変人高校生集めようぜ!」
「それいいな、絶対楽しくなるわ
俺の友達に変な奴いっぱいいるから
早速連絡してみるわ」
俺の頭の中では最高にハッピーな
カフェの様子がイメージできたいた。
だってそうだろ?
1人でも十分変人な奴が7,8人集まったら
すごいことが起きちゃいそうじゃん
話がまとまってからの行動は早かった。
お互いのツイッターを見ながら
栃木在住の変な奴を探して
見つけたら速攻DM。
「今、宇都宮の中心部で最高に
ホットな学生カフェをやってるんだ。
もしよかったら一度顔出しに来てよ」
こんな感じでとにかく送りまくる。
ちゃんと反応してくれた人には
ラインを交換して、グループに招待
そこで集まる日にちを決めた。
俺の周りにも変な奴が2人程いたので
確認もせずにグループにぶち込んだ。
文句言われるかな?と心配したけど
逆に感謝された(笑)
グループは少しずつメンバーが増えてきた
善は急げなので集まれる人たちで
五か月遅れの花見をすることにした。
(もはや花見ではないとか言うな)
ここからこのカフェにどんな変化が
起こるのかが楽しみだ。