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あとがき

終わりは始まり。
2019年の春分から始まった十二星座をめぐる旅が終わった。

2019年3月21日、満月と春分が重なり太陽と月の巡りが同期したその日、日本時間6時58分に太陽は牡羊座0度を出発し、一年かけて2020年3月20日の日本時間12時50分に再び牡羊座の0度に帰還した。太陽が春分点を通過するまでの一年間、十二星座それぞれの太陽を感じながら過ごす時間はときにゆったり、ときに忙しなく、まるで時間が伸びたり縮んだりするかのように感じられた。

毎回、太陽が各サインを通過する期間、約ひと月の時間をかけて、星と言葉と共に過ごし、たった原稿用紙2枚ほどの空間にそれぞれのサインの世界を綴っていく。今振り返ってみると、とても贅沢な時間を過ごすことができた。

元々、終わりが決まってないと物事が始められないたちで、星を読むようになってからは、さらにその傾向が強まった気がしている。人の命に始まりと終わりがあるように星の巡りにも一定の周期で始まりと終わりが繰り返されている。その巡りを司っているのがこの「十二星座」と呼ばれるものだ。

毎日チャート上を約一度ずつ時計の反対回りに移動していく太陽。その太陽の動きに促されるように人は朝に目覚め、昼に活動し、夜に休息して、日々を営み、歳を重ねていく。

昨日と今日と明日、この連続性の中でさして変化や成長を感じられず同じ日が繰り返されているように思うときもある。けれど、生まれてから今に至るまで決して同じ星の配置はなく、どれもが獨一無二、唯一の時間なのだ。

このかけがえのない、そして有限の時間をどう過ごすかは各人の選択に任されている。この一年の執筆期間にもいろんな選択があった。その無数の選択の中で思い悩んだときもあった。後半、年が明けてからはパンデミックの影響もあって、日々刻々と変化していく状況の中で次に向かうべき方向をその都度細かく修正していくような時間が流れていた。

そんな慌ただしい時間の流れに巻き込まれつつも、「書く」という行為をとおして、言葉で自分を現実につなぎ止めておくことができた。言葉も星も常に惑い、ひとつの場所に留まることはなく、自分の周囲を巡っていく、ときにまた以前と同じ場所にやって来たような錯覚に陥ることもある。けれど、その度に人の魂はこの「十二星座」という大きな輪の中で生かされていることに気づかされる。

「十二星座」という人の魂の進化と成長の物語に終わりはない。

星を読むことを生業として、もう12年が過ぎ、幸運と発展の星・木星がこの仕事を始めた頃と同じ山羊座に戻って来たタイミングで、このような執筆の機会が持てたことを幸せに思う。

時空間を旅するように生きる。こういう混沌とした時代だからこそ、大いなる星の巡りに身を委ね、毎日を楽しみ慈しむ気持ちを大切にしていきたい。

自分が生きるほんの数十年という期間は宇宙の長い歴史、星たちの寿命から見れば、瞬きする瞬間ほどの短さだ。そして、そのわずかな瞬間とも言える時間をを共に生きることができるということの尊さを忘れずに人と交わり、同じ時を重ねていけたら、これ以上の喜びはない。

最後に文章面談をとおして、この執筆期間を伴走してくださったまるネコ堂の大谷隆氏、合宿や文章筋トレ、ゼミをとおして書く時間を共にしてくださった皆さんに感謝の気持ちを伝えたい。

大谷氏には書き始めた当初「自分を前に進ませる書き方」というひと言をもらって、当時はその言葉の意味がよくわからなかったけれど、書き続けてみて、やっとその言葉と自分がひとつになって来た気がしている。どうもありがとうございました。

18年後、2038年の春分、再び春分と満月が重なる日がやって来る。
まだ見ぬその日の太陽に世界の調和と平和への思いを託して。

                              2020年3月  土星の水瓶座入りを迎えて。



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