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掌編小説【喉元過ぎれば】

お題「食中毒死神」

・・・今回のお題は、毎回バラエティに富んだ投稿で楽しませてくださるハミングバードさんが、少し前にショートショートにトライされた際に使われていたものです。
『※ 慣れている方、同じお題「食中毒死神」で500文字ぐらいで別のサン
プル作品つくっていただければありがたいです』
とも書かれていましたので、めっちゃ今さらですが、下の記事で私の作品をご紹介してくださった御礼も兼ねて書いてみました…(;・∀・)でも800字近くになっちゃって…ごめんなさぃぃ…

※本編ここから↓

【喉元過ぎれば】

死神は今日も今日とてストレスを感じていた。
「生きるも死ぬも同じことではないか。なぜ死だけを嫌うのだ」
神様とはいえ、忌み嫌われるのはストレスである。そしてストレス解消に飲みに行くのは〇〇も神も同じ。

「今日は『地獄や』にでも行くか」
『地獄や』とは、閻魔大王がお妾さんに経営させている居酒屋である。
ガラガラ。引き戸を開けるとそこは地獄の一丁目。
「いらっしゃ~い。あら、しーちゃん、ご機嫌よう」
お妾さんが地獄の業火に照らされて、明るく出迎える。
「おかみ、アレ頼むよ」
「はーい」
生け簀を見ると、獲れたての〇〇がうようよ溺れている。それを鬼の板前が網で掬い取ってまな板の上に置き、包丁を振りかざす。
「静かにしやがれ!」
阿鼻叫喚の図が目の前で繰り広げられているが、死神はさりげなく目をそむける。できれば見ていないところで静かに刺身に変身してほしいと願うのは〇〇も神も同じ。
「あいよ!」
さっきの〇〇がきれいに刺身になって目の前に並べられる。
死神は早速刺身に舌鼓をうつ。
「ちょっとピリッとくるのが珍味だな」
しかしこの後、死神を悲劇が襲う。

翌朝の「冥界新聞」の見出しにはこんな文字が躍った。
『食中毒死神!』
『昨夜、某飲食店で死神が急性の食中毒で死亡。〇〇の中にあった最も毒性の強い悪業を、鬼の板前が取りきれないまま提供した事が原因。板前はまだ〇〇調理の免許を取ったばかりとのことで、死神に申し訳ないとうなだれている』

…さて、ここで気になるのは死神なのに死ぬの?であるが、彼はかつてこう述べていた。
「生きるも死ぬも同じことではないか」と。
だから今、あなたの隣でヒレ酒を飲んでいるのは、〇〇界に転生してフグを食べに来た死神かもしれない。
喉元過ぎれば熱さを忘れるのは〇〇も神も同じ。


おわり

(2023/4/20 作)

※ハミングバードさんが書かれた『食中毒死神』作品はこちらから~ (*´ω`*)
よろしければ、みなさまもぜひこのお題で☆


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