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「いちばん美味しい」は自分の中に秘めて

なんでもかんでもナンバーワンを目指すひとっている、天下を取るとか、世界一とか、いちばんいいものを求めるって気持ちを持ってるひとだ。

もしかすると「消費者」として考える分には「いちばんいいもの」を求めるのはいいのかもしれないが、なんでもかんでもいちばんが良いとは限らないんじゃないかと思っている。



僕はラーメンで3年連続してとあるテレビ番組の中で、いわゆる「いちばん」になったお店に行った事がある。
「ラーメンのいちばん」っていったいなんなのよと思うのだが、3年連続でいちばんになった事があるらしいのだ。謎。だけど、テレビ番組の中での事は事実だ。


そこに友人と3人くらいで入ってラーメンを注文した。
メニュウはひとつくらいしかなくって、入るとラーメンしか頼めない系のお店だ。みんな必死こいてズルズルと音を立てて食べている。

「はい、おまちどーさま」ゴトン。


やってきたラーメンは、実に動物臭がハンパない。正直言って臭い。
スープの臭い消しなどの材料は入れてないのかと思うほどだった。

煮干し系の魚のスープが臭くって食べられないというひともいるが、僕はそのにおいは逆に好んでいる。動物系のダシのにおいはどうやら苦手なようである。
僕が住んでいる地域は、もともと透き通ったスープのこってりラーメンを皆食べている地域だったのかわからないが、ドロドロ系のこってりラーメンを食べたのはそのお店がはじめてなのではないかと思った。衝撃すぎた。


そのラーメンに食べ慣れていない僕は、正直「ちょっとこれはキツいな」と思っていたのだが、「ま、こんなもんだろう」と思って完食。
他の友人も完食し、店を出る。

※ラーメンの特徴などを詳細に覚えているワケでもないのだが、細かい点を伝えるのは避けよう。




食べ終わって、そそくさと帰ることに。
帰り際の車の中。なぜか僕らは無言でブイブイと道を走っていた。
と、ひとりがこんな事を言い出した。

「あのさ。ラーメン、美味しかった?」

ついに言い出してしまったか。

実を言うと正直言って僕の口には合わなかった。くさいし、何味なのかわからなかったから、正直また食べたいとは思わなかったかなぁ。はっきりと、塩とか、味噌とか、醤油っていう味があるラーメンに食べ慣れているんだろうと思うんだと、そう言った。


「俺も」
「正直、俺も」

その場にいた全員が、なんだか満足していないようで「いまいち自分には合わなかった」とそう言ったのだ。


つまり、いくらテレビでナンバーワンだとかなんとかと言ったとしても、“それが万人の口”に合うかと言うとそうではないということだ。
中には、まずいだのくさいだのと言って残して帰るひとだっているんじゃないかと思う。
だって、テレビでナンバーワンになっているんだから、相当に美味しいと思ってしまうのも事実だろう。





しかし、こんなことも考えられないだろうか?

テレビに出ることができなかったラーメン屋さんだっているだろうし、予定が合わずに参加できなかったラーメン屋さんだっているでしょ。
そんな順位には1ミリも興味を示さないラーメン屋さんだってもちろんいるだろうし、そんなことを競っている事だって知らないラーメン屋さんだっているだろう。
そんなに有名にはなりたくないラーメン屋さんだってあるだろうし、口伝えで「美味しいラーメン屋さん」だと知れ渡ることを“売り”にしているラーメン屋さんだってあるワケだ。

その「テレビ番組には出られないワケ」を持ったラーメン屋さんなんて無数に存在しているワケで。
ある意味じゃ、たかだかテレビで有名になっただけのラーメン店でもあるワケだ。宣伝の度合いだけが違うって事だ。

そういう“可能性”をぬきにして、テレビで言っている事が全部正しい事なんだと自分の中で決めつけて生活するってのも、なんだかおもしろかないぞと思う。

今だったらなんだろう。
もしかするとケータイ電話かな。ケータイで見るニュースが孤高かと思えばそんなことはないわけで、地域の情報だったら口コミがいちばんだったりする。

自分が住んでいるところが、イコールで世界ではない。



「世間でいちばん」なんてのは、「自分の中でのいちばん」とは全く違うだろう。

自分の中ではあのひとがいちばん好きだと思える事があっても、その辺にいるひとがみんな、そのひとの事を好きかと言ったらそうでもない。


そう。誰かが言っているナンバーワンなんて、「誰かが言っているナンバーワンでしかない」のだな。



誰かのおいしさを共有できる事は嬉しい事だとは思うけど、共有だけにとどめておくのも大事なのでは?と思った次第。





僕だけの美味しいを見つけたい、これからの僕は。

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