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駅の売店で 思索メモ #13

駅に小さな売店がある。

そこはぼくの最寄り駅ではないが、その路線では比較的大きな駅で、店に立ち寄る客も少なくない。


小腹が空いていたぼくは、そこでパンとミルクコーヒーを買った。

ぼくはICカードで支払った。レジの小柄な若い女性は速やかに2つの商品をレジ袋に入れてくれて、レシートと一緒にぼくに渡した。

すると店員さんが言った。

「大変お待たせし申し訳ございません」


お待たせし申し訳ございません?


たしかにぼくは次の電車があるのでその合間にここに立ち寄った。それを考慮しても待たされてなんかいないどころか、彼女はとても手際よくしかも丁寧に対応してくれた。素人から見てもかなり無駄のない手さばきだったと思う。

なのになぜ謝らなければならないんだろう。

ぼくは腑に落ちなかった。これが礼儀なのか? 日本の接客クオリティなのか? 数分でやってくる都会の電車のダイヤと、それを乗り継ぐために時間のない日本人へのせめてものマナーなのか。

ぼくがレジで女性に商品を渡して、ICカードで支払いを済ませ、商品とレシートを受け取るまで、ほんの10秒足らずだった。

マニュアルやルールに従ったまで。

そう言ってしまえばこの話は簡単に終わる。だけどぼくが思ったのはこのマナーと礼儀とマニュアルに囲まれてがんじがらめになった日本のゆきすぎた顧客第一主義が次に行き詰まる壁がきっとあるということ。

海外に行っても首都圏をちょっと出ても、もっとフランクで人間らしく、互いの事情を思慮に入れて、些細なことを許し合えるコミュニケーションがあるのをぼくは知っている。

こういう相互扶助的コミュニケーションの欠落したクラスタからAIが普及し始めていくのではないか。

心の行く先はこの先どうなっていくんだろう。

電車でぼくはそんなことを思っていた。


駅の小さな売店で、パンとミルクコーヒーを買った、ほんの一瞬の話。


ライター 金藤良秀(かねふじ よしひで)

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