良い文章とはなにか?
良い文章とは、どんな文章なのでしょうか?
それは「わかりやすく伝わる文章」ではないかと思うのです。
なぜか?
「わかりやすく伝わる」ことは、どんな文章にも共通して求められる条件だからです。書いてあることがどんなに正しくても、どんなに重要でも、読む人が理解できずに伝わらなければ意味がありません。
では「わかりやすく伝わる」のはどんな文章なのでしょうか?
その要素は大別して3つあると思います。
①思いやりのある文章
看板、チラシ、新聞、書籍、WEB記事など、文章を扱う媒体はさまざまです。しかし、それらすべてに共通しているのは、必ず「書き手」と「読み手」が存在していることです。書き手も読み手も存在しない文章はどこにもありません。
文章とは書き手から読み手に送られる手紙のようなもの。隅々から感じられる「思いやり」がたいせつです。
難しい言葉にはルビ(振り仮名)が振ってあるか。読んだときのリズムは悪くないか。冒頭の言葉は力が強すぎないか。送る相手はどんな立場にあるのか。わかりにくい言い回しになっていないか......。
挙げればキリがないほど、良い文章は読み手に対する数々の思いやりでできています。
これは専門書でも児童書でも、チラシや新聞でも変わりません。いつか読み返す未来の自分に向けて書いている日記でさえも同じです。
読み手にとってわかりやすく、読んだときに伝わるメッセージになっているかどうか。その試行錯誤の跡が感じられる、思いやりのある文章にすることがたいせつです。
②たとえ話のある文章
わかりやすく伝わる文章からは、ありありとイメージが湧いてきます。
抽象的な話ばかりが延々と続いていると内容に信憑性も出ないし、読み手は眠くなってしまうでしょう。
しかし、有名な小説家やコピーライターでもない限り、文章で読み手に鮮明なイメージを湧かせるのは至難の業です。
そこで、イメージを湧かせるために具体的な「たとえ話」をだすと良いのです。
たとえばこんな文章があります。
「何ごともやりすぎはよくない。 “ 過ぎたるは猶及ばざるが如し ” だ。やりすぎは大抵のことを悪化させてしまう。あとで後悔することのほうが多いのだ。」
なんだかそれっぽいことを言っているようには見えますが、どこか腑に落ちない文章になってしまっています。
しかしこうするとどうでしょう。
「食べすぎや飲みすぎが健康に悪影響であるように、何ごともやりすぎはよくない。たとえば周囲が笑ってくれるからといって、いつも冗談ばかり言っていたらいつの間にか誰にも信じてもらえなくなってしまった、なんてことがある。 “ 過ぎたるは猶及ばざるが如し ” だ。大抵のことを悪化させてしまう。あとで後悔することのほうが多いのだ。」
どうでしょうか。前の文章より納得できる感じがしませんか?
たとえ話を加えると話に説得力が出ます。
さらにいえば、具体的なたとえ話はなるべく「普遍的」であるほうが共感を得やすくなります。多くの人にとって身近な内容である方が「自分ごと化」して読んでもらえるからです。
たとえ話をすることで、書き手にとっては読み手を引き込むことができ、読み手にとっては書き手の世界に入るハードルが一気に下がるのです。
③体温のある文章
体温のある文章かどうかとは、「実感から出た言葉なのか、人から借りてきた言葉なのか」ということです。
文章とは文字の集まりです。視覚的にいえば、読み手の前には紙や板に表示された文字が並ぶだけで、そこに息をする人の姿はありません。
単なる事実記録だけなら人が書く必要はないでしょう。AIのほうがよっぽど情報量が多く内容の濃い文章を書くかもしれません。
文字の向こうに息づかいが聞こえるような文章に人はハッとします。
書いた言葉に自分の思いを乗せて初めて「体温」のある文章になるのです。
「みなさんは仕事で大きな失敗をした経験はないですか? 僕はあるプロジェクトでこんな経験をしました」というような実体験に基づく文章なら、人がつい「なんだろう?」と読みたくなってしまいます。そこに、読み手と同じ生身の人間が書いたことが感じられるからです。
「実際はよくわからないけど、たぶんこうだと思う」では、人は見向きもしません。
体感レベルの話に人は熱狂し、実感に心が湧くのです。
このような条件の揃った良い文章を書くために大切な姿勢は、あまり「良い文章を書こう、書こう」と思わないことだと思います。
たしかに、どうにかして良い文章を書こうと技巧を凝らす努力も必要です。しかし、それらしい文章はできあがっても、伝わる文章にはなりにくいでしょう。
むしろ、相手に伝わる文章にするには、「熱が乗っているかどうか」を意識するほうがよっぽど大切だと思うのです。
良い文章を書こうと思うよりも、「こんな人に伝えたい」「こんな人にもわかりやすくなるように書きたい」と、読み手への想像力を十二分に働かせた文章こそ良い文章になるのだと思います。
ライター:金藤 良秀
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