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「嗅覚障害がある患者は総死亡率が高い」

TONOZUKAです。


嗅覚障害がある患者は総死亡率が高い

以下引用

シンガポールSingapore国立大学のNatalie Yan-Lin Pang氏らは、18歳以上の成人嗅覚障害患者の重症度と死亡率を報告していた観察研究を対象に系統的レビューとメタアナリシスを行い、嗅覚障害のない人と比較した総死亡率のハザード比は1.52だったと報告した。結果は2022年4月7日のJAMA Otolaryngology-Head & Neck Surgery誌電子版に掲載された。

 幾つかの疫学研究で、嗅覚障害の有病率は19~24%程度と報告されているが、年齢が65~80歳になると有病率が半数を超え、80歳超の高齢者では約80%に達するという報告もある。嗅覚障害は、神経変性疾患、心血管疾患、免疫疾患など、複数の併存疾患を伴いがちなだけでなく、食欲減退や栄養失調、腐敗した食品の摂取、ガス漏れに気づきにくいなどの生活上のリスクをもたらす。

 また、アルツハイマー病やパーキンソン病、その他の認知症などといった神経変性疾患の早期の徴候として、嗅覚障害が表れることを示したエビデンスも増えている。神経変性疾患は全て、死亡リスクの上昇と関係する。そのため、高齢者の嗅覚障害は総死亡の独立した危険因子になり得ることを示唆する研究が増えているものの、嗅覚障害と死亡の関係について検討した研究では、一貫した結果を示せていなかった。そこで著者らは、系統的レビューとメタアナリシスを行って、嗅覚障害と死亡の関係を検討することにした。

 PubMed、Embase、コクランライブラリに2021年8月13日までに登録されていた文献の中から、観察研究に関する、英語で書かれたフルペーパーで、ピアレビュー誌に掲載されており、18歳以上の成人を対象として、嗅覚障害と死亡の関係が検討されていた文献を選んだ。嗅覚障害については、12項目からなるBrief Smell Identification Testのような客観的な指標を用いた評価による、または自己申告による、嗅覚障害の存在、もしくは重症度が記されていた研究を選んだ。また、COVID-19による急性の嗅覚障害ではなく、パンデミック前から慢性的な嗅覚障害を有していた患者を対象としていた研究を選出した。
 条件を満たした後ろ向きコホート研究1件と前向きコホート研究10件を分析対象とした。それらは2万1601人を登録していた。参加者の平均年齢は59歳から81歳だった。7件は北米で、2件が欧州で、1件が豪州で、1件が中国で行われていた。10件の研究はバイアスリスクが低く、1件のバイアスリスクは中等度だった。10件の研究は客観的な評価を行って嗅覚障害と判定しており、1件は自己申告に基づいて判断していた。

 9件の研究をメタアナリシスに組み入れたプール解析の結果、嗅覚が正常な人と比較した、嗅覚障害患者の総死亡のハザード比は1.52(95%信頼区間1.28-1.80、I2=82%)になった。対象となった研究の多くが、年齢や性別、BMI、学歴、喫煙歴、飲酒週間、高血圧、糖尿病、心血管疾患、認知障害、頭部外傷などの共変数を調整して分析していた。

 メタ回帰分析を行ったところ、平均追跡期間が有意な調整変数であること(βは-0.0504、標準誤差0.0120、P=0.02)、これにより異質性の91.3%が説明できた。感度解析も行ったが結果に大きな変化はなかった。出版バイアスに対するtrim-and-fill調整とEgger検定の関係は強固だった。エビデンスの質は全体として中等度だった。

 これらの結果から著者らは、嗅覚障害は総死亡率の増加に関連があり、健康と老化のマーカーになり得るため、今後はメカニズムの解明や介入方法に関する研究が必要だと結論している。



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