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「SARS-CoV-2下水サーベイランスは感染状況の監視に有用」

TONOZUKAです。


SARS-CoV-2下水サーベイランスは感染状況の監視に有用

以下引用

イタリアIRCCS-Istituto di Ricerche Farmacologiche Mario NegriのGiovanni Nattino氏らは、2020年3月から2021年11月までのミラノ市の下水サーベイランスのデータと、その間に報告された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規患者数および入院患者数との関係を検討し、ワクチン接種完了者の割合が高くなって以降は、市中の感染状況を把握する方法として下水サーベイランスが有用だと報告した。RESEARCH LETTERは2022年4月1日のJAMA誌電子版に掲載された。

 下水サーベイランスが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染状況の監視に役立つことを示した報告はこれまでにも複数あった。一方、報告される新規感染者数は、その地域の検査提供体制や検査対象の設定の影響を受け、COVID-19入院患者数は、感染者数の増加から1週間から2週間遅れて上昇する上に、軽症や無症候性の患者は含まれないため、正確なサーベイランスには不向きだ。そこで著者らは、イタリアのミラノ市で、下水から検出されるSARS-CoV-2ウイルスRNA量と、従来型のサーベイランス指標である新規感染者数と入院患者数の関係を検討することにした。

 2020年3月から2021年11月までの期間に、ミラノ市民の人口の約半分をカバーしているNosedo下水処理プラントで週1回標本を採取し、SARS-CoV-2のヌクレオカプシド遺伝子を指標にウイルス量を測定した。ミラノ市の毎日の新規感染者数、COVID-19入院患者数、ワクチン接種完了者数(2回接種型のワクチンなら2回接種完了、Janssen社のAd26.COV2.Sなら1回接種完了)に関する情報を得た。感染陽性者、入院患者ともに15日間ウイルスを排出するとし、陽性判定の3日前、または入院の1週間前に排出が始まると仮定した。

 ミラノ市でワクチン接種が始まったのは2021年1月で、同年11月には接種率は75%に達しており、入院リスクが高いと見なされた人の接種率は85%を超えていた。
 経時的な下水中のウイルスRNA量の変動とCOVID-19入院患者数の変動をグラフ化すると、ワクチン接種完了者が増えるまでは、ほぼ同様の曲線を描いた。下水中のウイルス量の変動と、新規感染者数の変動も、検査キットの不足が顕著だった感染拡大の第1波の時期を除いて、接種完了者が増えるまでは同様だった。

 その後、ワクチン接種完了者が増加するにつれて、新規感染者数と入院患者数の変動を示すカーブと下水中のウイルス量の変動を示すカーブはかい離していった。2021年11月30日には、新規感染陽性者数は4672人、入院患者数は252人と少なかったが、人口1000人当たりの下水中のウイルスRNA量は7.25×109コピー/日(95%信頼区間2.43-24.80×109コピー/日)で、ワクチン接種開始前の第2波のピーク時(2020年11月10日)の12.30×109コピー/日(4.71-22.31×109コピー/日)に近いレベルになっていた。

 下水中のウイルスRNA量のカーブは、2021年8月に第1波と同レベルまで上昇し、10月にやや低下したものの、11月には再上昇していた。その間の新既感染者数は、8月にわずかに増加したものの、その後落ち着いており、11月以降は再増加を示していた。一方、入院患者数については、その間の変動は非常に緩やかだった。

 下水中のウイルスRNA量は、ワクチン接種率が十分に高くなり、新規感染者数が顕著に増加しなくなった後でも大きく上昇していた。これは、ワクチン接種完了者を含む市民の間で感染が続いているものの、感染者の多くは無症候性であることを意味する。

これらの結果から著者らは、ワクチンには症候性のSARS-CoV-2感染とCOVID-19の重症化を予防する効果があるが、接種率が高くなると市中での感染状況を正確に把握しにくくなることから、下水サーベイランスによるウイルスRNAモニターは、環境中のウイルス循環量を把握するのに有用だと指摘している。

 原題は「Association Between SARS-CoV-2 Viral Load in Wastewater and Reported Cases, Hospitalizations, and Vaccinations in Milan, March 2020 to November 2021」、概要はJAMA誌のウェブサイトで閲覧できる。



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