読書紹介64「下町ロケット ゴースト」~夢とお金の両立、永続する会社とは何かの答えに学ぶこと大。
➀概要・あらすじ
もう5,6年前になりますが、阿部寛さん主演で、「パート2」としてドラマ化もされました。
ドラマの方は、話の流れは同じでも、見せ場や活躍する人物など随分と演出がなされていました。特に、1話ずつに2つの対立場面を描いて~例えば、敗色濃厚な裁判、コンペ、300年続いた農家を引き継ぐのか、大型ロケットの今後の可能性などが描かれていました。勧善懲悪的な場面は、いつも通りすっきりします。
今回の「ゴースト」編は、ドラマの前半部分になります。
ロケットエンジンづくりの技術を生かして、トランスミッションのバルブづくりに挑戦していく姿が描かれています。
ドラマが高視聴率だったのは、もちろん、ドラマ作りの技もあるでしょうが、やはり原作自体が面白かったことにつきます。ただ、原作の「下町ロケット ゴースト」は、次の「ヤタガラス編」とセットになっているようで、裁判に勝利はしたものの、物語の終わり方としては、中途半端な感じでした。
②夢と商売の両立
「下町ロケット1」の時は、ロケットを飛ばす(ロケットの部品を作る)という夢が前面に出ていました。
「下町ロケット2 ガウディ計画」でも、人工心臓の部品をつくって、心臓病で苦しむ人を救うという夢、挑戦が前面に出ていました。
どちらも、開発までの苦労や格闘、夢を追う姿がかっこよく描かれていた気がします。
今回の「下町ロケット3 ゴースト」は、もちろん、トランスミッション開発への挑戦が描かれていますが、より現実的に、ビジネスとして儲けは出るのか、企業の買収など、夢の裏側にある「現実的な事」も多く書かれていた印象があります。
そして、夢と現実の葛藤シーンから、次の言葉が思い浮かんできました。
「道徳なき経済は犯罪であり 経済なき道徳は寝言である」
これは学校の銅像によくある二宮金次郎(二宮尊徳。江戸時代後期の経世家、農政家、思想家)の言葉です。
道徳を理念と置き換えても十分意味が通じます。
経営理念がしっかりとしていなければ、自社の利益、都合優先ばかりに陥り、結局、法律に触れなければ、ばれなければ何をしてもいいという流れになっていきます。そして、窮地に陥っていく・・・。
池井戸さんの「七つの会議」でもそんな会社の様子が描かれていました。
でも、かといって、利益が出なければ、会社、活動自体を続けることは難しい。そこには、「お金(儲け)」が必要です。
会社の存続、永続を考えるのであれば、お金(利益)も理念(道徳)も必要,ということでしょうか。
③企業の不祥事を予見したかのような言葉も多い
2023年にも結構規模の大きな企業の不祥事が明るみに出ました。
事件の背景や会社の体質などは報道されたことからしか私は判断できませんが、「ノルマ」「利益」のために、「道徳・道義」を見失った姿が目に映りました。
そんな会社の不祥事に対して、この本に出てくる佃航平社長とその部下の言葉は、輝きをもって受け止められます。
最近、社会貢献(活動)という言葉をよく見聞きします。
自分のたちの仕事が、誰の喜びにつながっているか、社会で何に役立っているか。もちろん、お金も必要ですが、働くモチベーションとして、人に「喜ばれる」を大切にしていきたいとも思いました。