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プログラミングの試験で0点を取ってから転落人生が始まった話

「何でITの仕事に就かなかったの?」

 WordやExcelの操作を人に教える機会が時々あり、その度にこんなことを良く聞かれる。昨日も聞かれた。確かにその道を極めていれば、今の小売業と比較にならない程の高給で、とんでもない貯金額になっていたはずだ。

 IT系に勤めている友人が居る。激務だがその分給料はべらぼうに高い。なんと残業手当だけで100万円突破した”月”もあったという(年ではなく月である)。年収が決め手となったのか女性との出会いもあり結婚、現在も幸せに暮らしている。

 Fラン大卒の私が勝ち組になるには技術を身に付ける必要があった。にも関わらず、何故ITの勉強を怠ったのか。それは高校時代のトラウマが最大の理由だった。

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 昔からPCが好きだった。教師の大半がワープロ専用機を使っていた中学時代、私はWindows98に触れ、独学でWord、Excel、PowerPointを覚えた。PCを使う仕事に就けたら毎日が楽しいだろうなと、ぼんやり考えていた。

 しかし、高校で早くも絶望を覚えた。「プログラミング」の授業である。
 しかも、フォートランという当時既に絶滅危惧種の言語。しかもしかも、教室で教師が黒板に書き、それをノートに書き写すアナログスタイルだったのである。電算室でPCに触り実践したのは数ヶ月に1回程度だった。
 実感が湧かないにも程があった。何度ノートを見返してもスパイの裏コードにしか見えない。
 試験もアナログだった。たった1問、果てしなく長いプログラムを50分以内に手書きで書くというもの。
 結果、ドラえもんの漫画でしか見たことのない「0点」を取った。分からないなりに頑張って何かは書いたと思うのだが、それに対する少しの加点すら無かった。無慈悲だと思った。

 他の専門科目も軒並み付いていけず、友達が一人も出来ず体育で自由にグループを作る際にぼっちになってしまったのが決定打となり、高校は1年も持たず中退することとなる。

 予備校以外の全ての時間を自分の好きなことに使えるようになり、図書館には良く行った。WordやExcelのマニュアル本を熟読し、そちらのスキルはどんどん身についていった。Wordは零細の活版所クオリティーの文書を余裕で作成できるようになり、Excelは関数を覚えるのが楽しかった。一方でプログラミングの世界からは目を背け続けた。嫌いなこと、苦手なことを無理してやる必要性を感じなかった。

 大学に入る頃にはWindowsパソコンが「テレビ、洗濯機、冷蔵庫」並みに一般家庭に普及し、PCの授業もついにWindowsを取り扱った。これが私からすれば超イージーモードだった。
 まず、タイピングが速いことを褒められた。ブラインドではない変な指使いでミスタッチも多かったのに(今でもそうだが)、それでも学部内で一番速かったのは全体のレベルの低さを物語っていた。
 その後はGoogle検索の仕方やフリーメールの使い方(舐めとんのか)、Word、Excel、PowerPointの基本的な操作をなんと2年もかけてじっくり学んだ。中身はスカスカだった。文系ということもあり、プログラミングは一切無かった。

 一方、プライベートでは自ら新たなことに挑戦した。「ホームページの作成」である。無料のサーバーをレンタルし、HTML言語を手打ちして作った。同じプログラミングでもフォートランはサッパリだったが、HTMLは何故か理解が早かった。「一からモノを作る喜び」を確かに噛み締めていた。
 しかし、それも一年も経たず絶望と化した。友人の弟が「CSS言語」で作った業者レベルのホームページを目の当たりにした時だった。難解なソースコードを見た時の「あ、これ俺には無理だ」感は今でも忘れていない。フォートランの悪夢が蘇った。自分のホームページのダサさに気付いてから更新するのを止め、闇に葬った。

 中途半端なHTMLの知識は、ヤフオクの出品やブログで文字を目立たせる際に役には立ったが、本当にその程度だった。一応「MOS」という今では何の価値も無い資格を取ったが、WordとExcelのスキルだけで出来る仕事は事務職くらいで、それも新卒では女性しか採らない会社がほとんどだった。
 結局PCが好きでありながら、それとは無関係の仕事に就かざるを得なかった。その後も何度か職を変えたものの、14年の社会人人生でIT系の仕事に就くことはただの一度も無かった。全てはプログラミングから逃げ続けた結果である。

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 今や小学生ですらプログラミングを必修で学んでいるとニュースで知った時は驚いた。子どもにはフォートランやC言語はもちろん、HTMLやCSSですら難しいに決まっている、どういうことなのかと疑問に思い、調べてみた。

例えば、小学3年生の事例では、簡単に操作できるプログラミングツールである「Viscuit(ビスケット)」や「Scratch(スクラッチ)」を使い、単純なゲームやアニメーションを作成します。

あらかじめ用意されているブロックを組み合わせてキャラクターを指示どおりに動かすため、小学3年生でも簡単に取り組むことができます。

小学4年生の事例では、プログラミングで動くロボットを使い、簡単な迷路を作ってゴールを目指す学習がおこなわれます。ロボットの直進や回転といった基本的な動作を理解するだけでなく、必要な行動を考えなければゴールできません。

目の前で動くロボットを実際に使うことで、よりプログラミングとの距離が近くなり親しみを感じやすくなります。

小学5年生の事例では、プログラミングを使って正多角形を作図します。正多角形を作るためには、「辺の長さがすべて等しく、角の大きさがすべて等しい」という条件を理解しなければなりません。

プログラミングによる正多角形の作図方法を考えて、実行できるプログラムを作る過程で、作図に必要な考え方を学ぶことができます。また、自分の手で計算や作図するよりも、コンピュータを使う方が簡単であることにも気付くことが可能です。

小学6年生の事例では、プログラミングを用いて電気エネルギーの効率良い使い方を考えます。例えば「トイレの照明を無駄なく使う方法」という課題を提示して、人が使っていない間は電気が消えるようにプログラミングを活用して試行錯誤させます。

 楽しそうである。フォートラン言語をひたすらノートに書くだけの授業がいかに不毛な時間だったかが分かる。そんなので楽しいと思えるわけが無い。

 嫌いになるのは簡単だが、そこから転じて好きになるのはとても難しい。一度嫌いになったりトラウマを抱えてしまった時点で負けなのである。学生の未熟なメンタルなら尚更である。

 あの時プログラミングを嫌いにならず、困難を乗り越えられていれば、私も今頃IT系の仕事に就いて残業手当を100万円貰っていたのだろうか。

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 IT系は激務だけど夢がある。年収1000万すらも狙える。今まさにプログラミングを学んでいる小学生の皆様は、将来の選択肢の一つとして今から考えてみて欲しい。私のように後悔しない人生を歩むためにも。

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