ドイツ一人旅_酔っ払い_10_07【海外旅行】
1999年冬 10日目 ハイデルベルク
「そういえば前に一緒に旅行していた友人の話なんだけど」
一人旅をしている劇団ひとり君が話し始めた。
「スペインのレストランでたまたま知り合った地元の男と意気投合して『家で飲み直さないか?』と誘われたからついていくことにしたんだって。地元の男は途中でワインを買って、談笑しながら歩いていたんだ。そして、細い道に入る角を曲がった瞬間、突然ワインを割って、瓶の破片を喉元に突きつけて『金を出せ!』って脅されたんだ。友人は持っていた紙幣をすべて渡して、男はすぐに逃げ去ったんだってさ」
僕は身の引き締まる思いがした。というのも、ガイドブックには「夜は危険なので出歩かない方がよい」と書いてあったのだが、実際はまるで逆で日本にいるときとあまり変わらず安全なので、正直安心しきっていた。
劇団ひとり君の話を聴いて、自分は今ヨーロッパにいて、安全面において日本とは違うのだということを改めて認識した。
すると隣で一人で飲んでいた50歳前後の頭部が見事にハゲあがった酔っ払いのおじさんが声をかけてきた。
「君たちは日本人か?」
「そうだよ」
「俺は日本食に興味があるんだ~。でも一度も食べたことがないんだ。ヒック。一度行ってみたい日本食レストランがあるんだが一緒に行かないか~」
「僕らはもうお腹一杯だよ。これ以上食べられないよ」
「そうか~。それは残念だな~~」
それから酔っ払いのおじさんを含めた5人でしばらく飲み続けた。
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