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ドイツ一人旅_後悔_10_02【海外旅行】

前の話  プロローグ  10日目01

1999年冬 10日目 ミュンヘン~ハイデルベルク

9番線らしきホームに列車が停車しているのが見えた。

「あれだ!」

僕がその列車の最後尾までたどり着いたと同時に、列車は静かに走り出した。ドイツの駅では発車のベルは鳴らず、時間になれば勝手に動き出すのだ。

僕は両手をヒザについて、顔だけは列車の方に向けていた。

「間に合わなかった…」

無情にも列車はみるみる小さくなっていく。いや無情なのは列車ではなく僕ほうだ。約束もちゃんと守れずに。結局、Nさんとは朝に食堂で会ったのが最後になってしまった…

後悔先に立たず。

昨日は発車時刻にギリギリ間に合ったが、時間には余裕をもって行動しようと改めたばかりではないか…。自分の不甲斐なさに腹が立つ。

僕はトボトボと歩き出し、ハイデルベルクに向う列車に乗った。列車の中でも後悔し続け、落ち込んでいた。なんで余裕持って行動しなかったのか。最後にきちんと見送りたかったなぁ…

以前「吊り橋効果」について触れている本を読んだことがあった。不安定な吊り橋に立つことで緊張状態による興奮が起こり、そこに異性がいると脳が恋愛の興奮と錯覚してしまい模擬的な恋愛感情に発展するといった内容だ。

昨日のマリエン橋は「吊り橋効果」があったのだろうか?そんなことをぼんやりと考えていた。

しかし、いつまでも落ち込んでいる訳にはいかないのだ。一人旅では誰も慰めてはくれない。旅行を楽しい思い出にするかどうかは自分の心持ち次第なのだ。そう自分を奮い立たせた。



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