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ドイツ一人旅_マリア_06_03【海外旅行】
1999年冬 6日目 ミュンヘン~パッサウ
マリアと一緒にゲーテの詩集の音読が続いている。
マリアとは、たまたまパッサウに向かう列車の中で隣の席に座っていた老婦人の名前だ。
向こう車両から、女性の車掌さんがやってきたので、ジャーマンレイルパスに今日の日付を書いて渡した。車掌さんは消印を押すと丁寧に返してくれた。
マリアが車掌さんと何か話をしている。僕とゲーテの詩集を交互に見ながら。マリアが再び『銀杏の葉』の詩の一小節を音読すると車掌さんもにこやかに復唱し始めた。
(ほら、あなたも復唱しなさい)
といった顔で今度は車掌さんが僕を見ている。しかたがないので何度目かの『銀杏の葉』を復唱する…
『銀杏の葉』の詩を読み終えると車掌さんは隣の車両へと移っていった。列車はパッサウに近づいていた。
「今日はどこに行くのかしら?」
「パッサウの街を観光したら、今日はレーゲンスブルグに移動して、そこに泊まる予定です」
「じゃあ、レーゲンスブルグに着いたら手紙を頂戴!」
世話焼きおばさんのような表情でいうと名刺を差し出した。
「ヤー(わかりましたよ)。レーゲンスブルグでも、日本に帰ってからでも手紙を出しますよ」
マリアとはパッサウ中央駅で別れた。列車での会話でお昼ごはんを一緒に食べようと言っていたような気がするが、果たして本当かどうかわからない。
結局そのあと、マリアに会うことはなかった。
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