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#102 学習指導の順序として考える鉄棒技:先に教えるべきはだるま回りか、逆上がりか

今回は、鉄棒の技「だるま回り」と「逆上がり」についてお話していきたいと思います。
だるま回りと逆上がりはどちらが先に教わる技かしっていますか?

答えをだす前にこちらを考えてみて下さい。

小学2年生の算数の授業で、分数わり算の計算問題が登場してきたらどう思いますか?
まだ分数自体も習っていない2年生にです。
できるわけがありませんよね。

逆に、小学6年生の算数の授業で、九九の問題がでてきたらどう思いますか?
簡単すぎて、授業になどなりませんよね。

あれっ?
鉄棒の話じゃないの?と思った方。
安心してください。
これは鉄棒の話と密接な関係があるのです。

算数で学習する簡単な整数のわり算は、鉄棒の技でいうとだるま回りなのです。
そして分数のわり算はというと、なんと逆上がりなのです。

どういうことかというと、
算数の授業では、全国どこの小学校でも、整数のわり算→小数のわり算→分数のわり算と系統的に指導されていきます。

しかし、体育の授業では、分数のわり算にあたる、逆上がりを先に教えてしまっているケースが多くみられます。

つまり、指導の順番が間違っているのです。

なぜこのような現象が起こるのか?
それは、体育に教科書がないことが理由の1つです。
また、低学年の鉄棒の授業で活用する学習カードに逆上がりを入れてしまっていることも理由に考えられます。
だから、逆上がりは高学年になってから指導するべき難しい技だということを先生が知らないのです。

算数の場合、もし分数のわり算は先に教えてはいけないことを知らなくても、2年生の教科書に分数のわり算の問題がでてくることがないから、教えてしまうことはまずありませんよね。

では、分数の意味すらしらない2年生が、分数のわり算の問題を解きなさいと先生に言われたらどうなるでしょう?
当然ですが、解けませんね。
自信がなくなりやがて、算数が嫌いになります。

では、2年生には難しい「逆上がり」をできるようにしなさいと先生に言われたらどうでしょう?
分数と違い、体操を習っている子や、運動神経のよい子は逆上がりができてしまいます。

そこが分数のわり算と大きく違う点であり、指導者が錯覚をおこしてしまう原因かと思います。
できる子がいるんだから、「みんなもがんばろう」っていうわけのわからない論理を持ち出す先生がいるのです。

そして、逆上がりができない子は自信がなくなり、鉄棒が嫌いになります。
場合によっては、不登校になることだってあるかもしれません。

自分が小学生の頃、逆上がりのテストがありました。
私は幸いできましたが、できなかった子たちは、泣きながら練習していたのを覚えています。

昔の先生はなぜか 鉄棒の授業で、逆上がりをさせたがります。
その名残からか、現在でも、逆上がり至上主義の先生が一定数いるのも事実です。

「学習指導要領体育編」によると、逆上がりは、

5,6年生の「支持系、後方支持回転技群 後転グループ発展技の例示」内に、
〇逆上がり足の振り上げとともに腕を曲げ、上体を後方に倒し手首を返して鉄棒に上がること。

学習指導要領体育編

とあります。

つまり、「逆上がりは5,6年生になってようやく指導すべき技」であり、低学年では指導すべき技ではないということです。
さらに、逆上がりとは、
上り技の1つにすぎない」ということを考えると、

逆上がりが仮にできなかったとしても、他の上り技ができれば、技を組み合わせることができるということです。

なぜ、この難しい上がり技に昔の先生はこだわっていたのか?
おそらく教材研究していなかったからだと思います。

現在も、逆上がりばかり指導している先生は、鉄棒運動の教材研究が足りないと言えます。

昔の先生は、逆上がりばかり指導していたので、だるま回りという技自体を知らないで卒業している人も多いのではないでしょうか?

恥ずかしながら、こんなこといっている私自身も、教員になるまでだるま回りという技を知りませんでした。
当然ながら、鉄棒の指導も苦手でした。
無知で指導力がなかったので、必死になって研究しました。
そして現在の自分があります。

私と同じように、鉄棒指導が苦手、分からない…という先生は、経験年数にかかわらず、意外とたくさんいるのではないかと思っています。

そもそも、逆上がりは高学年で習得するべき技の1つにすぎません。
算数でいったら分数のわり算が逆上がりにあたるのです。
だるま回りは算数でいったら、かけ算九九です。

算数では、たし算、かけ算を先に教えるのに、鉄棒になると、難しい逆上がりから教えるのは順番が違いますよね。

算数では絶対に起こりえないことが、体育ではよく起こります。

逆上がりは熱心に指導してはいけません!
なぜか?

鉄棒嫌いが生まれるからです。

鉄棒の楽しさは、鉄棒を使って自由に表現できるところにあるのです。
その鉄棒の楽しさを伝えていきたいと考えています。

それではまた!



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