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【エッセイ】 書くこと、話すこと、思考すること。


あたしは、やっぱり言葉が出てくるのが遅い。どうしたって、遅すぎる。だから、遅れをとってしまう。会話をしたいんだけど、パパパンと言葉が出てこないんだよ。それは、発話する勇気の問題なのかしら。整理する時間というか、考える時間が欲しい。だから、会話がズレてしまう。

でも、たまに言葉が身体を追い越していっちゃう時がある。まさにこのエッセイはそれを目指しているんだけど、言葉が先に出てきて、自分の思いがけない姿と出会える時もある。これが結構、面白い。

他の人を見ていても、「言葉が追い越してるなあ」と思う瞬間が多々ある。カフェで、ぼんやり耳をそば立てていると、聞こえる会話が面白い。友達とダベダベしてる時なんてまさに。何気ない話をしてるはずなのに、いつの間にか言葉が身体を追い越している。なんか羨ましく思っちゃうなあ。

最近『モモ』を読んだせいかね。

モモの友達、ジジベッポの姿が頭をかすめるんだ。ジジは、口から生まれてきたような、饒舌な空想家。あることないことペラペラ喋る。イケメン。夢のような光景が、口からぴょんぴょん飛び出してくる。嘘つきだの、オオカミ少年だのと言われても、ジジはぜんぜんへっちゃら。そんな時は、こう言ってやるんです。


「学者の本に出てくる話だって、ただの作り話かもしれないじゃないか。ほんとうのことは、だれも知らないんだもの。そうだろ?」

ミヒャエル・エンデ『モモ』


本当にその通りだよ。なにが“ほんとうのこと”かなんて誰にも分からない。身体を超えて、思考を超えて、出てきた言葉が“ほんとうのこと”かもしれないし。じっくり考えて考えて、出てきた言葉が“ほんとうのこと”なのかもしれない。どっちも正解だと思うし、どっちも間違いだとも思う。

ベッポは、無口で頭がおかしい人だと思われている。なにか聞かれても答えない。でも、ニコニコと笑う裏では、じっくり考えている。幸福とは何か、生きるとは何か。深く考えをめぐらせている。そして、こたえるまでもないと思えば黙ってる、ただそれだけ。ベッポの沈黙には、言葉がいっぱい。

あたしは、どちらかというとベッポよりなのかもしれないな。別に深いことを考えてるわけではないんだけど、会話がずれて、テンポがずれちゃう。考える時間が必要なタイプ。こうして、キーボードをタイプさせれば、饒舌なのにね!

ただのコミュ障かよ!

でも、見た目は、普通だから気付かれない。なんだかんだで、あたしは、まだ若いんだろうな。もっと年齢を重ねたら、もっと大人になってたら、また色々と変わるんだろうね。思考の速度も、言葉の反射も、周りの反応も。

その時までは、もうちょっとだけ続けようかな。

書くこと、話すこと、思考すること。

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