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【エッセイ】 銀河鉄道に乗って。


今日も仕事をしていない。もう、しばらくしていない。それなのに、焦りもせず、ただオロオロと生きている。家から出ない生活。窓の外を眺める生活。空が白む。トラックが横切る。子どもたちが笑う。家の中にいても、世界の動き、自然の揺らぎを肌で感じる。そうそう、昨日は、漫画を読んで目から涙をこぼしてた。たまの外出は買い物だけ。生きるための外出。たまに食事もする。

昨日は外に出た。たらふく食べた。生姜焼き定食、ご飯少なめで。950円。餃子をつけて1150円。プチ贅沢だ。この一食だけで過ごしてる。

なんでこんな生活をしているかって?
ただ仕事をしてないだけよ。いや、もっと厳密にいうと、「仕事がない」ってだけ。あのね、探してるとか探してないとか、そういう話でもないの。言葉の通り、「仕事がない」んだよね。不思議でしょう。それでも生きてる。そんな生活をしてる人が、世の中にはいるってことさ!

たぶん、うち、老後も同じような生活を送ってそう。ずっとずっと「仕事がない」って、オロオロしてそう。仕事はしたい。でも、仕事がない。だから仕方ない。オロオロ生きる。えっちらおっちら。オーロオーロ。

お金はないよ。いや生きる分はあるけどね。あと二ヶ月くらいは大丈夫。でもそれだけ。なのに焦ってない。心のどこかで「なんとかなるさ」と思っちゃってる。人生なめてるんだと思うのね。ううん、違う。なめてるというか、信じていないだけ。なにが起こるか分からないもの。それが人生っていうものさ。理性だけでは抗えないことがある。

宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を読んだの。何年ぶりだったんだろうか。数年前にも読んだ気がするし、小学生ぶりなのかもしれない。ゴイステじゃないよ、賢治のほう、賢治のほう。


物語の後半、いじめっ子のザネリを助けたはずのカムパネルラが、川に流されて死んでしまったことがわかるんだけど、うち、ゾワっとした。毛が逆だったの。これまで気付けなかったんだけど。この話、すごいと思ったよ。

理屈じゃないんだなって。理性じゃないんだなって。善い人も、悪い人も関係ない。因果なんてありゃしない。人生って、そういうものなんだと思ったの。どうしようもないことが突然訪れる。ジョバンニは、そんなことを学んでいく。美しい銀河鉄道に乗ってね!

なにをしたらいいのか分からない。やりたいことが見つからない。そんなのって、当たり前、当たり前。フツー、フツー。自然と見つかるはずだし、見つかったって、同じ問いがまた現れる。今のうちはまさにそれ。分からないよ、人生だもの。自分に向かって書いてる。

だからといって、投げ出していいわけではないよ?

「仕事がない」こともある。目的を見失う時もある。うち、欠陥だらけの人間なのかもしれない。どうしようもないのかもしれない。でも、別に、うちは不幸なわけではない。銀河鉄道に乗ってる最中。そう思ったら、少し、心ら和らいだ。

うち、この生活が好きなんだ。
オロオロするのが好きなんだ。

これも賢治の言葉だけど。
雨にも負けないし、風にも負けない。
でも、日照りの時は涙を流すし、寒さの夏はオロオロ歩く。

どうして日照りで涙を流すのかな。
作物が育たないからかな。
それだけなのかな。

寒さの夏ってなんだろうね。
単なる気候のことなのかなあ。
寒くて、でも、暑いのかな。

仕事がしたくて、でも、できないからオロオロするとか。
働きたいから、働いているのに、突然、涙が流れてしまうとか。

そういう者に、うちはなりたい!

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