木村耕一

古典を読むと心が豊かになります。 執筆、編集に携わって40年。古典の楽しさ、生きるヒ…

木村耕一

古典を読むと心が豊かになります。 執筆、編集に携わって40年。古典の楽しさ、生きるヒントを伝えていきます。 主な著書:『こころ彩る徒然草』『こころに響く方丈記』『こころきらきら枕草子』『美しき鐘の声 平家物語』(全3巻)ほか

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  • 歎異抄の旅

    古典の名著『歎異抄(たんにしょう)』ゆかりの地を旅をします。 『歎異抄』は、生きる力、心の癒やしを与えてくれる古典として、日本人に親しまれてきました。 「無人島に、1冊もっていくなら歎異抄」といわれ、その人気は、ますます高まっています。 では『歎異抄』の何が、人々の心を引きつけているのでしょうか。 『歎異抄』ゆかりの地を巡りながら、その魅力に迫ります。

最近の記事

小野小町さん、あなたは、どんな人だったの?(『徒然草』第173段)

 いろいろな詐欺のニュースが、頻繁に流れてきます。オレオレ詐欺、ロマンス詐欺、有名人を名乗る投資詐欺などなど……。気をつけたいと思います。  兼好さんの時にも、まことしやかな文書が、人々の間に広まっていたようです。  どんな話でしょうか。意訳してみましょう。 (意訳)  小野小町(おののこまち)は、絶世の美人として非常に有名なのですが、どんな女性だったのか、極めてハッキリしないんですよ。 『玉造(たまつくり)』という文書には、年老いた小野小町の姿が書き残されています。若い

    • 歎異抄の旅(3)比叡山への道のり〜宮本武蔵より強かった、松若丸の覚悟

       比叡山(ひえいざん)へ登りましょう。  京都府と滋賀県の境にそびえる標高847メートルの山です。  1200年以上も前に、伝教大師最澄(でんぎょうだいしさいちょう)が仏道修行(ぶつどうしゅぎょう)のために山を開き、延暦寺(えんりゃくじ)を建立(こんりゅう)したのです。  延暦寺が発行する「比叡山めぐり」パンフレットには、次のように書かれています。 「多くの名僧がここで修行して宗祖となり、比叡山は『仏教の総合大学』『日本仏教の母山』と呼ばれるようになりました」  今でこそ、

      • 他人に親切をすれば、いつか自分も助けてもらえる 〜池に落ちたアリ(『イソップ物語』)

        「情けは人のためならず」ということわざがあります。  人に親切をすると、めぐりめぐって自分に返ってくるといわれます。 『イソップ物語』には、アリとハトとの心温まるこんなエピソードがありました。  意訳してみましょう。 池に落ちたアリ(『イソップ物語』) 池のほとりにいたアリが、誤って水の中に落ちてしまいました。このままでは、おぼれてしまいます。  たまたま近くの木の枝にハトがとまっていました。  苦しんでいるアリを見つけたハトは、かわいそうに思って、木の葉を一枚、ちぎっ

        • 歎異抄の旅(2)小野小町、平重衡の旧跡、そして法界寺へ

          「なぜ、小野小町(おののこまち)が出てくるの?」 「『歎異抄(たんにしょう)』と関係ないじゃないか」と、思われるかもしれません。  それは、松若丸(まつわかまる・親鸞聖人の幼名)が9歳で出家した動機を知る手がかりになるからです。  青蓮院(しょうれんいん・京都市東山区)の庭園には、 「明日ありと 思う心の あだ桜    夜半(よわ)に嵐の 吹かぬものかは」 と刻まれた歌碑があります。わずか9歳の松若丸が詠んだ歌です。 「明日まで自分の命がある保証はない」 と無常を見つめ、仏

        小野小町さん、あなたは、どんな人だったの?(『徒然草』第173段)

        • 歎異抄の旅(3)比叡山への道のり〜宮本武蔵より強かった、松若丸の覚悟

        • 他人に親切をすれば、いつか自分も助けてもらえる 〜池に落ちたアリ(『イソップ物語』)

        • 歎異抄の旅(2)小野小町、平重衡の旧跡、そして法界寺へ

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        • 歎異抄の旅
          3本

        記事

          何を信じるかは、自由ですが…… 〜大根の恩返し(『徒然草』第68段)

           いつの時代でも、「健康的な毎日を過ごしたい」という思いは変わらないようです。 「これは、健康にいいですよ」と聞くと、そればかり食べたり、飲んだりしてしまいがちですが、本当はバランスよく食べたほうがいいのではないでしょうか。 『徒然草』には、毎朝、二本ずつ、大根を焼いて食べていた男の話があります。  どんな話でしょうか。意訳してみましょう。 (意訳)  こんな話が伝わっています。  九州に、何とかという役人がいました。  その男は、「大根こそ、すべての病気に効く薬だ

          何を信じるかは、自由ですが…… 〜大根の恩返し(『徒然草』第68段)

          歎異抄の旅(1)〜無人島に、1冊もっていくなら歎異抄

          『歎異抄(たんにしょう)』は、生きる力、心の癒やしを与えてくれる古典として、日本人に親しまれてきました。 「無人島に、1冊もっていくなら歎異抄」といわれ、その人気は、ますます高まっています。  では『歎異抄』の何が、人々の心を引きつけているのでしょうか。 『歎異抄』は、親鸞聖人(しんらんしょうにん)の弟子が書いたものです。「ある時、お師匠様は、このようにおっしゃいました」と、師弟の対話が記されています。つまり、『歎異抄』を理解するには、親鸞聖人の教えと生涯を知ることが大切

          歎異抄の旅(1)〜無人島に、1冊もっていくなら歎異抄

          後悔しないためのヒント 〜井戸へ飛び込んだヤギ(『イソップ物語』)

           人生は「やる」か、「やらない」か、選択の連続です。 「やらないで後悔するよりも、やって後悔するほうがいい」という声をよく聞きます。  なんだか潔くてカッコいいですが、できるなら「後悔はしたくない」ですよね。  後悔しないために、気をつけたい心がけを教えた、こんな『イソップ物語』の一話があります。意訳してみましょう。 井戸へ飛び込んだヤギ(『イソップ物語』) 夏です。  太陽が、まぶしく輝いています。  野原を歩いているヤギは、のどが渇いてきました。 「どこかに、水が

          後悔しないためのヒント 〜井戸へ飛び込んだヤギ(『イソップ物語』)

          皆、好き勝手なことを言っていますね〜鬼女のうわさ(『徒然草』第50段)

          世の中には、いろいろな情報が飛び交っています。 「みんなが言っているから本当だろう」「あの人が言うなら間違いない」と、根拠のない、無責任な情報を信じて惑わされると、思いがけずに時間を取られたり、むだな物を買ってしまったりして、後悔することもしばしば。 『徒然草』にも、うわさを信じた人たちの面白いエピソードがありますので、ご紹介しましょう。 (意訳) 「人間の女が、鬼になったそうだ!」 「鬼が捕らえられて、伊勢国から都へ連れてこられるらしい」  応長の頃のことです(131

          皆、好き勝手なことを言っていますね〜鬼女のうわさ(『徒然草』第50段)

          古典は宝の山です

           古典は、宝物です。  生きる知恵が詰まっています。  『方丈記』『歎異抄』『徒然草』などの古典は、何百年もの間、日本人を励まし、元気づけてきました。  そんな超ロングセラー書籍が「古典」なのに、「難しいから」と言って、手に取らない人がいるとしたら、非常に、もったいないことです。  そこで、昔の言葉遣いや文法にこだわらず、『徒然草』の著者が目の前で、お茶を飲みながら語ってくれているように意訳したのが、平成二十九年に発刊した『こころ彩る徒然草』でした。  読者の皆さまから、「へ

          古典は宝の山です

          はじめまして。木村耕一です。

          こんにちは。木村耕一です。 執筆、編集に携わって40年。 いつか読みたかった、古典の名著との出会いが、毎日の生活に彩りを与えてくれます。 夢を叶えたい、人間関係に悩んでいる、トラブルをどう乗り切るか、何をしたら満足できるのか、などの悩みは、今も昔も変わらないようです。 先達はその時どうしたのか。 古典や歴史上の人物のエピソードをとおして、生きるヒントをお届けしていきたいと思います。 日本各地のゆかりの地を旅して撮影した写真も掲載していきます。

          はじめまして。木村耕一です。