「叶える彼女の3夢」
彼女はいつも夢を見て寝ぼけてばかりだし新年の決意なんてしないけど、
今は次の3つの夢を叶えるんだと、密かに情熱を抱いている。
深呼吸をする。
重力を解放する。
私に立つ。
この絵は彼女が2020年頃、家に閉じこもって何をしたらいいのか分からなかった時に描いたものだった。ひたすら眠りの中で悪夢と戦って、いらない感情を手放して、蛹が小さな部屋で羽化する時を待っていたような頃。
何かを手放し離れたと思っても、結局は再び対峙することになる、と彼女は思った。もう一度頭を下げなきゃいけなくなるような涙も、捨てたはずの記録も、再びノートに纏めなおさないと人生は次へと進ませてくれなかったからだ。
悲しい記憶だったという認識は、「よくここまで生きてきたな」の感嘆に変わるまで、何度も実験の日々を繰り返した。進化してもなお、重い重力で揺蕩う自分と、沸点を超えて飛び立つ水分子の自分が同時に存在しているようだ。
旅へ出ても、引っ越しても、捨てられないものが人生ならば、そろそろ蒸留して得られる智慧を味わおう。これまでは、安全な時空間が必要だっただけだ。
彼女は思う。
「深呼吸をするんだ、そこに知識が含まれているから」
「重力を解放するんだ、悲しみはもう君のものじゃない」
「私に立つんだ、脚の叡智を讃えて真っ直ぐと今ここに」
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