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JW233 伯父上の願望

【開化天皇編】エピソード18 伯父上の願望


第九代天皇、開化天皇(かいかてんのう)の御世。

紀元前130年、皇紀531年(開化天皇28)1月5日、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)が日嗣皇子(ひつぎみこ)となった。

それから数日後のこと・・・。

ミマキの弟、彦坐王(ひこいます・のきみ)(以下、イマス)は、妃の屋敷を訪れていた。

そこに、伯父、和珥彦国姥津(わに・の・ひこくにははつ)(以下、ニーハン)が来ていることを知る。

ニーハンは、イマスの息子、狭穂彦王(さほひこ・のきみ)に、いろいろと吹き込んでいるのであった。

彦坐王家系図(イマス・ニーハン・狭穂彦)

イマス「子供の前で、有らぬことを申されては困りまする。」

ニーハン「有らぬこととは、何事か・・・。拙者(せっしゃ)は、まことを申しているまで・・・。」

イマス「息子が信じてしまうではありませぬか!」

ニーハン「狭穂彦は、良い子じゃ。ちゃんと、拙者の言うことを聞いてくれる。」

イマス「ですから、伯父上・・・。話を聞いて、信じてしまう恐れが有るのです!」

ニーハン「良いではないか・・・。別に謀反(むほん)の企てをしているわけではないのじゃ。」

イマス「噂となったなら、如何(いかが)致しまする。」

困惑するイマスの元に、妃の沙本之大闇見戸売(さほのおおくらみとめ)(以下、クララ)が、子供たちを連れてやって来た。

彦坐王家系図(クララ)

クララ「取り込み中のところ、申し訳ありません。狭穂彦以外の子供たちを披露(ひろう)したいのであらしゃいます。」

イマス「お・・・おお、そうであったな。まだ、お披露目できておらなんだな。」

クララ「では、披露致します。袁邪本王(おざほ・のきみ)にあらしゃいます。『ザホー』と、お呼びください。」

ザホー「みなさん、お初にお目にかかります。『ザホー』って知ってますか? 実はね、私のことなんです。」

クララ「そして、娘の狭穂姫(さほひめ)にあらしゃいます。『さっちん』と、お呼びください。」

さっちん「私が『さっちん』にございます。大きくなったら、大后(おおきさき)になりたいと思っておりまする。」

イマス「そ・・・そうか・・・。」

彦坐王家系図(ザホーとさっちん)

ニーハン「では、話の続きじゃな・・・。狭穂彦よ。汝(いまし)こそ・・・。」

イマス「もう、おやめくださりませ! 伯父上! ささっ、帰りましょう。」

ニーハン「どこに帰るのじゃ?」

イマス「和珥(わに)の御屋敷にござりまする。」

ニーハン「嫌じゃっ! 拙者(せっしゃ)は帰らぬぞ!」

イマス「我(われ)も同行致しまするゆえ・・・。」

クララ「イマス様? よろしいのですか? さきほど、参られたばかりですのに・・・。」

イマス「このまま、伯父上を置いておくわけにも、ゆくまい・・・。ささっ、伯父上、帰りましょう。」

こうして、イマスは、ニーハンと共に帰路についたのであるが・・・。

ニーハン「このまま、和珥の屋敷に帰るのも癪(しゃく)じゃのう。よし! 汝(いまし)のもう一人の妃、息長水依比売(おきながみずよりひめ)こと『みずよちゃん』の屋敷に行こうではないかっ!」

イマス「な・・・なにゆえ、そうなりまするか!?」

とか何とか言いつつも、みずよちゃんの屋敷を訪れたのであった。

イマス「す・・・すまん。伯父上も一緒じゃ。」

みずよ「あの名物伯父上ですね。いいんじゃないかしら。私は、結構、気に入ってますのよ。」

イマス「そ・・・そうなのか?」

ニーハン「おお! 可愛い甥っ子たち! さあ、伯父上の話を聞いておくれ!」

そこに、イマスと「みずよ」との間に生まれた子供たちが駆け寄る。

丹波道主王(たにわのみちぬし・のきみ)(以下、ミッチー)と神大根王(かむのおおね・のきみ)(以下、ノーネ)である。

彦坐王家系図(みずよ・ミッチー・ノーネ)

ミッチー「大伯父上! 今日も妄想祭りにござりまするか?」

ノーネ「妄想! 幻想! それ、願望!」

ニーハン「そうじゃ。拙者の願望じゃ。夢じゃ!」

ミッチー「されど、それがしは、名前の通り、丹波(たにわ)で、一旗挙げるつもりにござりますれば、伯父上の夢には、付き合えませぬぞ!」

ニーハン「そうか・・・。おじさんは、寂しいぞ・・・。」

ノーネ「心配御無用! 我(われ)がいる! 父がいる! 夢は大きく! 話は短く!」

ニーハン「おお! ノーネ! 拙者の夢に付き合ってくれるか?」

ノーネ「夢は見るモノ! 叶わぬが夢! 構わぬがゆえ!」

イマス「こ・・・こちらは、大丈夫そうじゃのう・・・。」

みずよ「夕餉(ゆうげ)を食べていかれるのでしょ? 伯父上殿もいてくだされば、楽しい夕餉となりますし・・・。」

イマス「お・・・おう・・・。」

こうして、イマスとニーハンは夕餉を馳走(ちそう)となり、それから和珥の屋敷に向かったのであった。

その帰路のこと・・・。

ニーハン「イマスよ・・・。拙者とて、無理な話をしていることは分かっておるのじゃ。」

イマス「それでも、子供たちが信じてしまえば、国の大事となりもうす。」

ニーハン「あの子らも、大きくなれば、大伯父の言っていたことは、夢、幻であったと分かってくれよう・・・。」

イマス「我(われ)は、そう思いませぬ。子供とは、無垢(むく)なモノ。絵空事も、まこととなり得ることが有りもうす。」

ニーハン「そう言うてくれるな・・・。」

二人が和珥の屋敷に辿り着いたのは、夜も遅くなった頃合いであった。

イマスの母で、ニーハンの妹、姥津媛(ははつひめ)(以下、はつ)が出迎えたのは言うまでもないのであるが・・・。

はつ「はい。イマスの母、『はつ』にございます。されど、出迎えたのは、わたくしだけではありませぬよ。」

その傍らで、イマスとニーハンを出迎える者が・・・。 

次回につづく

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