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JW238 欠史八代の諡
【開化天皇編】エピソード23 欠史八代の諡
第九代天皇、開化天皇(かいかてんのう)の御世。
ついに欠史八代(けっしはちだい)の解説がおこなわれることとなった。
開化天皇こと、稚日本根子彦大日日尊(わかやまとねこひこおおひひ・のみこと)(以下、ピッピ)の元に、多くの家臣が集まる。
まずは二人の大臣(おおおみ)。
すなわち、物部大綜杵(もののべ・の・おおへそき)(以下、ヘソ)。
そして、ヘソの息子、伊香色雄(いかがしこお)(以下、ガーシー)。
更に、大伴角日(おおとも・の・つぬひ)(以下、ツン)。
久米五十真手(くめ・の・いまて)(以下、マッテ)。
中臣神聞勝(なかとみ・の・かみききかつ)(以下、ミッキー)。
大倭御物(やまと・の・みもの)。
葛城伊牟久(かずらき・の・いむく)(以下、イム)。
尾張建諸隅(おわり・の・たけもろすみ)(以下、ケモロー)。
和珥彦国姥津(わに・の・ひこくにははつ)(以下、ニーハン)。
計九名の家臣たちである。
前回は、不可思議な年齢についての解説がおこなわれたのであったが・・・。
ヘソ「欠史八代が架空の存在とされてる根拠は、他にも有るでぇ!」
ピッピ「なに? まだ有るのか?」
ヘソ「せやで! 諡(おくりな)やがなっ!」
ニーハン「諡と申せば、亡くなったあとに贈られる名前であったな?」
ヘソ「せやっ! そのうちの長ったらしい方の諡が、怪しいんやっ!」
ピッピ「長ったらしい方?」
ガーシー「おとん! ちゃんと説明せんと、あかんやろっ!」
ヘソ「しゃあないなぁ。和風諡号(わふうしごう)っちゅうヤツですわ。大王(おおきみ)の場合で言うたら、稚日本根子彦大日日尊(わかやまとねこひこおおひひ・のみこと)っちゅう名前のことですなぁ。」
ツン「ちょっと待ってくんない(ください)! 死後に贈られるんやかい(だから)、創作物に決まっちょると思うんやが・・・。」
ガーシー「そういうことやないんですわ。欠史八代の和風諡号は、奈良時代の大王を参考に作られたんやないか・・・っちゅう説なんですわ。」
ミッキー「奈良時代の大王って誰?」
ヘソ「文武天皇(もんむてんのう)とか、元明天皇(げんめいてんのう)やで!」
マッテ「それって漢風諡号(かんふうしごう)の方っすよね? 和風は?」
ヘソ「長いけど、よう聞いてくれ! 文武天皇が、倭根子豊祖父天皇(やまとねことよおおじ・のすめらみこと)で、元明天皇が、日本根子天津御代豊国成姫天皇(やまとねこあまつみしろとよくになりひめ・のすめらみこと)やっ!」
ピッピ「な・・・長い・・・。」
御物「ところで、何を参考にしたんや?」
ガーシー「当今(とうぎん:今の大王)にも使われてる『ヤマトネコ』が、奈良時代の大王を参考にして用いられたんとちゃうかなぁ・・・って言われてるんですわ。」
ヘソ「その通りやで! 七代目から当今までの三代に『ヤマトネコ』が用いられてんのやっ!」
イム「他の大王には使われておらぬのでござるか?」
ガーシー「ま・・・まあ、使われてないみたいですねぇ。」
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マッテ「ちょっと待ってください! 御初代様から六代目には『ヤマトネコ』は使われてないんすよね? じゃあ、なんで、七代目から用いられてるんすか?」
ガーシー「そ・・・それは・・・。おとん? なんでや?」
ヘソ「わてに分かるわけないやろっ!」
御物「逆だったら、どうね?」
ヘソ「逆って、どういうことや?!」
御物「奈良時代の大王が、欠史八代の諡を参考にしたとも考えられるに!」
ピッピ「なるほど・・・。原点回帰のようなモノか?」
御物「そうやに! その証拠に、十三代目から二十六代目は、長ったらしい和風諡号では無くなっちょるんや!」
ピッピ「無くなっている?」
御物「厳密に言うと、短くなっちょるというか、もしかしたら本名かもしれないというか・・・。」
ケモロー「要するに、飛鳥時代や奈良時代から、再び長くなるっちゅうこときゃ?」
御物「そうやに! 大王が仰ったように、原点回帰かもしれないんやに。」
ニーハン「なにゆえ、原点回帰が必要なのじゃ?」
御物「大陸の律令制度(りつりょうせいど)を導入した、大改革の時代やったかい(から)、不満分子や反対分子をまとめようとしたんやないかと・・・。」
マッテ「大改革の時に、原点回帰して、反対分子をまとめるって、どういうことっすか?」
御物「律令制度っちゅうモンは、天皇を中心とした制度やに。人々を天皇の元に結集させるのに、神話や歴史は、格好の材料だったのかもしれないっちゃ。実際、明治維新を断行した、明治新政府も、同じように『王政復古の大号令』と宣言して、原点回帰を目指しちょるんや!」
ピッピ「大改革をおこなう上で、人々の心をまとめる必要があったというわけか?」
御物「じゃが(そうです)! そのための歴史書編纂であり、昔なつかしい諡になったんやないかと・・・。」
ヘソ「ほ・・・ほな、諡を根拠にするのは、無理が有るっちゅうことか?」
ガーシー「そういうことになりますねぇ。」
ツン「大王が実在した可能性は、まだ残っちょるんやなぁ。」
ピッピ「そ・・・そうか・・・。我(われ)としては、嬉しい限りじゃ。」
ニーハン「ところで、欠史とされているのは、物語的要素が無いからであろう? 適当でも良いから、物語を書いておけば、このように疑われることもなかったのではないか?」
ピッピ「そ・・・そう言われると・・・。な・・・なにゆえであろうか?」
マッテ「書かなかったんじゃなくて、書けなかったんじゃないっすか?」
ヘソ「書けへんかったって、どういうことやねん?」
マッテ「実在か架空か・・・はともかく、物語が無いってことが、周知の事実だったなら、無闇に書けないっすよね?」
欠史八代についての議論は、まだまだ続くのであった。
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