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JW226 王という文字

【開化天皇編】エピソード11 王という文字


第九代天皇、開化天皇(かいかてんのう)の御世。

紀元前148年、皇紀513年(開化天皇10)。

開化天皇こと、稚日本根子彦大日日尊(わかやまとねこひこおおひひ・のみこと)(以下、ピッピ)に、めでたいことが起こっていた。

ピッピの大后(おおきさき)、伊香色謎(いかがしこめ)(以下、イカメ)が、皇子(みこ)を出産したのである。

ピッピ「その通りじゃ。では、披露(ひろう)致そうぞ。」

イカメ「では、紹介しますぅ。御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)どすえ。『ミマキ』と呼んでおくれやす。」

皇室系図(ミマキ)

ピッピ「うむ。我(われ)の二番目の息子にして、日嗣皇子(ひつぎのみこ)となるべき皇子じゃ!」

イカメ「二番目? どういうことどすか? ほな、一番目は?」

ピッピ「う・・・うむ。一番目は・・・。」

するとそこに、丹波竹野媛(たにわのたかのひめ)(以下、たかの)が、幼子を連れてやって来た。

彼女の両親、尾張建諸隅(おわり・の・たけもろすみ)(以下、ケモロー)と諸見己姫(もろみこひめ)(以下、ロミ子)夫妻も同伴している。

たかの「私が一番目の皇子を産んだんだがね。では、紹介します。彦湯産隅(ひこゆむすみ)だがね。『ムッシュ』と呼んでちょう(ください)!」

皇室系図(ムッシュ)

ムッシュ「我(われ)が『ムッシュ』だ! お初にお目にかかる!」

ケモロー「ついに、孫の顔を拝むことが出来たがや!」

ロミ子「されど、この子は、名のみの登場にござりまするよね。」

ムッシュ「えっ? そうなのですか?」

ケモロー「心配せんでも、ええ。汝(いまし)の息子やら、孫娘が登場する予定になっとるでよ。」

ムッシュ「そ・・・そうなのですか?」

たかの「そんなこと気にすることはないがね。私の子として、生まれて来てくれただけで、本当に感謝だがね。」

ムッシュ「は・・・母上・・・(´;ω;`)ウッ…。」

ピッピ「ムッシュ・・・。父も嬉しく思っておるぞ。」

ムッシュ「ち・・・父上・・・(´;ω;`)ウッ…。」

イカメ「たかの殿の申される通りどすなぁ。生まれて来てくれただけで、ありがたいことどす。」

そんな時、別の妃がやって来た。

姥津媛(ははつひめ)(以下、はつ)である。

兄の和珥彦国姥津(わに・の・ひこくにははつ)(以下、ニーハン)も同伴している。

ピッピ「い・・・如何(いかが)致した?」

はつ「わたくしにも、子供が生まれる予定なのです。」

ピッピ「なんじゃと!?」

ニーハン「本来ならば、和珥氏(わに・し)の血を受けた、この子が、大王になるべきと存ずるが、これもまた、定めなのでござるなぁ。」

ピッピ「ニーハン! もう諦めよ! それより、次に産まれて来る子の名は、何と申すのじゃ?」

はつ「では、紹介致しまする。彦坐王(ひこいます・のきみ)にございます。『イマス』とお呼びくださいませっ!」

皇室系図(イマス)

イカメ「まだ、産まれてへんのに、もう名前が付いてはるんどすなぁ。」

ムッシュ「しかし、不思議な名前ですね?」

ロミ子「何が不思議なのでござりまするか?」

ムッシュ「我(われ)にも、此度(こたび)産まれた弟にも『王』という字は付いておりませんよ。」

ケモロー「そう言われてみると・・・。どうなっとるんだ?」

ピッピ「う・・・うむ。実は、よく分からぬ。ムッシュや、ミマキには、『命』や『尊』が付いておるのじゃが、なぜか、イマスに限っては『王』なのじゃ。」

イカメ「ちなみに、『命』も『尊』も『みこと』と呼びますぅ。」

はつ「補足説明、かたじけのうございます。」

ニーハン「それについて、申し上げたき儀がござりまする。」

ピッピ「なんじゃ? 申してみよ。」

ニーハン「これは作者の考えにござりまするが、『王』という字は、地方を治めた皇族という意ではないかと・・・。」

ピッピ「地方を治めた皇族? どういうことじゃ?」

ニーハン「拙者(せっしゃ)のように、皇族から離れ、完全なる豪族となったのではなく、あくまで皇族という立場で、地方を治めていた者ではないかと・・・。」

ケモロー「どういうことだがや? ムッシュは、地方を治めてなかったということきゃ?」

ニーハン「地方は、地方でも、大王家の直轄地を治めていたのではないかと・・・。」

ピッピ「それはつまり、子供たちの時代から、大王家の領地が増えたということか?!」

ニーハン「確証は有りませぬ。されど、これまでの皇族たちは、ことごとく『命(みこと)』と呼ばれていたのに対し、次代から『王』と付く皇族が、次々と現れてくるのでござる。」

はつ「イマスだけではなく、他の皇族にも『王』と付く人物が現れてくるのですか?」

ニーハン「左様じゃ。この動きを見て、作者は、直轄地が広がっていったのではないかと考えておるようじゃな。」

ムッシュ「す・・・すみません。それ以外にも、不思議なことが有るのですが?」

ピッピ「なんじゃ? どこが不思議なのじゃ?」

ムッシュ「二千年後の書物のほとんどが、『王』という字に対して『みこ』とフリガナを打っているのですが、この物語では『きみ』となっております。それで、不思議だなと・・・。」

ピッピ「たしかに・・・言われてみると・・・。」

はつ「それについては、わたくしから説明致しまする。これは、作者のオリジナル設定にござりまする。『大王』と書いて『おおきみ』なのだから、『王』は『きみ』だろうという考えなのです。」

ムッシュ「い・・・言われてみると、そうですね。」

ピッピ「言の葉も、いろいろと移り変わっていったのであろうな。」

イカメ「そうどすなぁ。」

こうして、ピッピの子供たち紹介は終わったのであるが・・・。 

次回につづく

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