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JW617 三野の弟媛

【景行即位編】エピソード6 三野の弟媛


第十二代天皇、景行けいこう天皇てんのう御世みよ

西暦74年、皇紀こうき734年(景行天皇4)2月11日。

景行天皇こと、大足彦忍代別尊おおたらしひこおしろわけ・のみこと(以下、シロ)は、三野国みの・のくに(現在の岐阜県南部)に行幸ぎょうこうした。

地図(三野国へ)

付き従うのは、きさき伊那毘若郎女いなびのわかいらつめ(以下、イナビー)。

そして、大連おおむらじ物部もののべむらじ十千根とおちね(以下、ちね)である。

系図(イナビー)
系図(物部氏:ちね)

シロ「なにゆえ『イナビー』も付いて来ておるのじゃ? 『日本書紀にほんしょき』に、そのようなこと、書かれておらぬぞ?」 

イナビー「良いではありませぬか。ずっと、播磨稲日大郎姫はりまのいなひのおおいらつめこと『ハリン』姉上ばかり登場していたのです。今回くらい、私が出ても、ばちは当たりませぬ。」 

シロ「赤子あかごれてか?」 

イナビー「はい! 私と大王おおきみの子、彦人大兄王ひこひとおおえ・のきみにござりまする! 『ひこにゃん』と、お呼びくださりませ。」 

ひこにゃん「バブー! あう!」 

系図(ひこにゃん)

シロ「ん? 『ひこにゃん』? それは、酒の神様である、少彦名命すくなひこな・のみことの通称じゃぞ? かぶっておるではないか!」 

イナビー「かぶってなどおりませぬ。あちらは『ひこにゃん』ですが、私の子は『ひこにゃん』と、ひらがな表記ひょうきにござりますれば・・・。」 

シロ「そ・・・そうなるのか?」 

ちね「どっちでも、ええんやないですか?」 

シロ「う・・・うむ。されど『イナビー』がるとなると、少し、やりづらいのう・・・。」 

イナビー「御安心くださりませ。新たな妃を見つけるために、こちらまでまいられたのでしょう? 私が、しっかりと吟味ぎんみさせていただきます。」 

シロ「なっ!? 知っておったのか?」 

イナビー「大連おおむらじ殿どのから、聞いております。なんでも、八坂入彦やさかいりひここと『ヤサク』殿に、見目麗みめうるわしいむすめがいるとか?」 

ちね「そうです! 弟媛おとひめっちゅう美人が、おるんですわ。『日本書紀にほんしょき』では、側近そっきんが、大王おおきみしらせたことになってるんですけどね、この物語では『わて』が、報せたことになったんですわ。」 

系図(ヤサク、弟媛)

シロ「余計よけいなことをもうすな!」 

ちね「まあまあ、そうおっしゃらず・・・。そないなことうてたら『ヤサク』殿の屋敷にきましたで。」 

こうして、一行は屋敷に入った。

当然、屋敷の主である「ヤサク」は、これを歓迎したのであったが・・・。 

ヤサク「屋敷やしき泳宮くくりのみやに、ようこそ、おでくださいました。」 

ちね「泳宮くくりのみやは、岐阜県可児市かにし久々利くくりと言われてるんやで。」 

地図(泳宮史跡:泳宮公園)
泳宮公園

シロ「うむ。して、伯父上おじうえ? 弟媛おとひめは?」 

ヤサク「それが・・・竹林たけばやしかくれてしまいまして・・・。」 

シロ「なるほど・・・。一旦いったんかくすという、われらのならわしにござりまするな?」 

ヤサク「それが・・・そういうわけでもなく・・・。」 

ちね「どういうことやねん?」 

ヤサク「我が娘は、妃になるつもりは無いようでして・・・。」 

イナビー「そうなのですね? それは、残念ですが、仕方ありませんね。では、大王おおきみ、帰りましょう。」 

シロ「そ・・・そういうわけには、いかぬ。」 

イナビー「いやがっておるのですよ?」 

シロ「わ・・・われは、あきらめんっ。」 

ちね「そないなこと、言われましても・・・。」 

シロ「伯父上おじうえ? ひめが好きなモノなど、教えてくださりませぬか?」 

ヤサク「そうですなぁ・・・。このような、やり取り、『日本書紀にほんしょき』には有りませぬが、あえてもうすなら、魚・・・。とくに、こいが好きですな。」 

シロ「こいか・・・。ん? にわいけが有るのじゃな?」 

ヤサク「左様さようにござりまするが・・・。」 

シロ「よし! あの池に、鯉をはなつのじゃ。」 

イナビー「鯉でるんですか?」 

ちね「海老えびたいるみたいなことうてますけど、ホンマに、うまいことくんでっか?」 

シロ「やってみねば、かるまい。」 

その日から「シロ」は、朝に夕にと、池の鯉をでたのであった。

それを竹林からながめる、一人の女性が・・・。

言うまでもないが、言っておこう。

弟媛おとひめである。 

弟媛おとひめ何日なんにちも、竹林にいるわたしって、すごくない?」 

たずねた先には、弟媛おとひめの姉、八坂入媛やさかいりひめ(以下、やぁちゃん)の姿すがたが・・・。 

系図(やぁちゃん)

やぁちゃん「なにもうしているのです? 私も、えになっているのですよ?」 

弟媛おとひめ可愛かわいい妹が、ひどおうとしてるのよ? そんな言い方、無いと思うんだけど・・・。」 

やぁちゃん「それより、気になりませぬか?」 

弟媛おとひめ「鯉のことでしょ? 気になってるわよ。ちょっとだけでも、見たいんだけど・・・。」 

やぁちゃん「それでは、見てみますか?」 

弟媛おとひめ「そうね。ちょっとくらいなら、バレないわよね・・・。」 

池へと近付く姉妹・・・。

一体、どうなってしまうのか。

次回につづく

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