JW224 親子か否か
【開化天皇編】エピソード9 親子か否か
第九代天皇、開化天皇(かいかてんのう)の御世。
紀元前152年、皇紀509年(開化天皇6)1月14日、衝撃の立后(りっこう)がおこなわれた。
開化天皇こと、稚日本根子彦大日日尊(わかやまとねこひこおおひひ・のみこと)(以下、ピッピ)は、強い信念で貫き通したのであろうか。
それとも、古代の風習で、皆に受け入れられたのであろうか。
『記紀(きき)』は、詳(つまび)らかにしていない。
しかし、この物語では、大后(おおきさき)になれなかった一族たちで、いろいろと語り合うのであった。
出席者は、下記の通り。
和珥彦国姥津(わに・の・ひこくにははつ)(以下、ニーハン)。
彦五十狭芹彦(ひこいさせりひこ)(以下、芹彦(せりひこ))と百田弓矢姫(ももたのゆみやひめ)(以下、ユミ)夫妻。
尾張建諸隅(おわり・の・たけもろすみ)(以下、ケモロー)と諸見己姫(もろみこひめ)(以下、ロミ子)夫妻。
葛城垂見(かずらき・の・たるみ)である。
ニーハン「父上のクランクアップは、華やかなりしモノになると思っておったのじゃが・・・。」
芹彦「御尊父の和邇日子押人(わにのひこおしひと)こと『ひこお』殿は、前回で引退だったのじゃな? 残念を通り越して、悔しいのではないか?!」
ニーハン「悔しいどころではありませぬっ! 和珥氏(わに・し)は、作者の妄想によれば、本来は、大王(おおきみ)であったかもしれぬ家系にござりまするぞっ!」
ユミ「そんなことより、娘が可哀そうで・・・。ずっと、大王のことを想ってたのよ!? 作者の妄想だけど・・・。」
ケモロー「ほんでもよぉ。古代の風習と考えたら、有り得るんでないきゃ?」
芹彦「風習じゃと!? 初耳じゃぞ!」
ケモロー「でもよぉ。御初代様の皇子(みこ)、手研耳命(たぎしみみ・のみこと)は、先代の大后を嫁にしとるでねぇの。」
垂見「確かに・・・。エピソード73で、解説されているのでござるよ。」
ロミ子「古代では、夫を亡くした妻を夫の兄弟や、義理の息子が妻とすることがあったって、書いてありまするね。」
芹彦「その理屈でいけば、大王とイカメ殿は、義理の親子ゆえ、何の障(さわ)りもないというわけか・・・。」
ユミ「も・・・もしかして・・・。」
芹彦「ん? ユミ? 如何(いかが)致した?!」
ユミ「大王が、先代の息子じゃなかったとか?」
芹彦「なんとぉぉ!! その手があったかぁぁ!!」
垂見「な・・・無いと思うのでござるよ。」
ニーハン「いや、ユミ殿の申した通りかもしれぬ。」
ロミ子「どういうことにござりまするか?」
ケモロー「なるほどなぁ。欠史八代(けっしはちだい)っちゅうこときゃ?」
芹彦「欠史八代? 何じゃ、それは?」
ケモロー「これは『記紀』の話になるんだけどよぉ。二代目様から、当今(とうぎん:今の大王のこと)までの事績(じせき)が詳しく書かれとらんのだわ。」
芹彦「詳しく書かれておらぬ? それは有り得ぬっ! 父上の鬼退治など、様々なことが遭ったではないか!?」
ニーハン「それは伝承にござる。神社の創建についても、神社の由緒書(ゆいしょがき)によるモノにて『記紀』には、何も書かれておらぬのでござる。」
芹彦「なんとぉぉ!! そのようなっ!!」
ロミ子「では、二代目様から、今の大王までは、何も書かれておらぬということにござりまするか?」
垂見「いや、宮(みや)の場所、立太子(りったいし)の記事、陵(みささぎ)の場所、誰を大后にしたか・・・については書かれているのでござるよ。」
ロミ子「立太子の記事が有るのであれば、実の親子であることは明々白々ではござりませぬか?」
ニーハン「立太子をしたからといって、実の息子とは限りませぬぞ。」
ケモロー「ニーハンの言う通りだがや。弟だったかもしれんし、甥っ子だったかもしれんでよ。」
垂見「されど、大后が産んだと書かれているのでござるよ。七代目様からは、どの妃が産んだかまで、はっきりと書かれているのでござるよ。」
ニーハン「そうは申されましても、今となっては、まことか否か、分かりもうさず。」
ユミ「えっ? なんで、そうなるの?」
ニーハン「二千年後の学者によると、詳しい事績が残らず、系譜(けいふ)だけが残ったと考えられているのでござる。」
ユミ「系譜?」
垂見「なるほど・・・。大王となった順番は、分かっていたが、どういう関係なのか、それについては、明らかではなかったということにござるな?」
ケモロー「義父上、その通りだがや。そういうことで、親子という形にされたと思うんだがや。」
ロミ子「親子である以上、先代の妃の子でなければ、おかしい・・・ということにござりまするか?」
ケモロー「そんな感じだがや。」
垂見「もし、先代と当今に親子関係が無かったのだとしたら、此度(こたび)のことは、何の障りもなく、皆が頷(うなず)けるということにござるな?」
ニーハン「系譜だけが語り継がれたという、学者の説を裏付けるモノになるかもしれませぬな。」
芹彦「そ・・・壮大な話になってきたのう・・・。では、ピッピは、それがしの甥っ子ではなかったかもしれぬということになるではないかっ!」
ロミ子「そういうことも有り得まするね。」
ユミ「こ・・・これが、欠史八代・・・。」
ケモロー「欠史八代については、次回以降の紹介になるでよ。今回は、これくらいにしとくで。」
芹彦「なにゆえじゃ?!」
ニーハン「作者の陰謀にござる。」
芹彦「なんとぉぉ!! その手があったかぁぁ!!」
こうして、ピッピの妃の家族たちは、それぞれ納得したのであった。
つづく
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