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JW260 神託は下りたけど

【疫病混乱編】エピソード12 神託は下りたけど


第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。

紀元前91年、皇紀570年(崇神天皇7)2月15日。

神浅茅原(かんあさぢはら)において、神々との対話がおこなわれようとしている。

出席者は下記の通り。

崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)。

倭迹迹日百襲姫(やまとととひももそひめ)(以下、モモ)。

皇室系図(モモ)

そして「記紀(きき)」には登場しないが、神祇(じんぎ)を司(つかさど)る、中臣氏などの氏族たち。

その代表である、中臣神聞勝(なかとみ・の・かみききかつ)(以下、ミッキー)。

系図(中臣氏)

緊張が漲(みなぎ)る中、モモに神が乗り移るのであった。

ミマキ「こ・・此度の疫(やく)、なにゆえにござりまするか? お教えいただきとうござる。」

モモ(に乗り移った神)「きぇぇぇぇ!!!」

ミマキ「お・・・伯母上?」

モモ(に乗り移った神)「大王(おおきみ)よ。なにゆえ国が治まらぬを心配するのか・・・。」

ミマキ「なにゆえと申されましても・・・。気に病まぬ者がおりましょうや?」

モモ(に乗り移った神)「心配するな。我(われ)を敬(うやま)い祀(まつ)らば、必ずや平穏が訪れるであろう!」

ミマキ「う・・・敬いの心が足りなかったのですな。かしこまりもうした。日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)こと『おっくん』の命(めい)とあらば、そのように致しまする。」

モモ(に乗り移った神)「否(いな)! 『おっくん』にあらず。」

ミマキ「ん? 今、何と?」

モモ(に乗り移った神)「聞いてなかったのか!? 『おっくん』にあらずと申したのじゃ!」

ミマキ「は? 『おっくん』ではない? で・・・では、どちらの神様にござりまするか?」

モモ(に乗り移った神)「我(われ)は大物主(おおものぬし)なり!」

ミマキ・ミッキー・出席者のみなさん「ええぇぇぇぇ!!!」×多数

モモ(に乗り移った大物主)「そういうことじゃ。我(われ)を敬うべし!」

ミマキ「か・・・かしこまりもうした。」

モモ「・・・・・・ガクッ。」

ミッキー「ま・・・まさか、大物主神だったとは、驚きだね。ハハッ。」

モモ「こ・・・こんなん出ましたけどぉぉ。」

ミマキ「すごいのが出ましたぞ。驚くほかありませぬ。」

モモ「そうね。あんなにイケメンだったなんて、素直に驚きよね。」

ミマキ「は?」

モモ「と・・・とにかく、あんたは、しっかりと敬い祀っちゃいなさい!」

ミマキ「かしこまりもうした。よし! ミッキー! すぐさま、物部建新川(もののべ・の・たけにいかわ)こと『ケニー』に、このことを伝えよ!」

系図(物部氏)

ミッキー「どういうこと?」

ミマキ「磯城氏(しきし)が断絶した折、『ケニー』が三輪山(みわやま)の祭祀(さいし)を引き継いでおるが、此度(こたび)の神託(しんたく)は『ケニー』だけでなく、わしも祀れとの仰(おお)せであろう。それゆえ『ケニー』にも知らせるのじゃ。」

ミッキー「分かったよ! ハハッ。」

こうして、ミマキは、三輪山に鎮座(ちんざ)する大物主神を丁重に祀ったのであるが、半年経っても、疫病は全く収まる気配を見せないのであった。

そんな8月のある日・・・。

ミマキ「な・・・なにゆえじゃ? なにゆえ、疫が収まらぬのじゃ。」

そこに、ミマキの弟、彦坐王(ひこいます・のきみ)(以下、イマス)がやって来た。

皇室系図(イマス)

イマス「大王・・・。あれから半年になりまするが・・・。」

ミマキ「汝(なれ)に言われずとも、分かっておる。されど、全く効き目がないのじゃ。」

イマス「神託を聞き間違えたのでは?」

ミマキ「そ・・・そのようなこと、有ろうはずがない・・・。」

イマス「では、こうなれば、寝る作戦しかありませぬな。」

ミマキ「リーサルウエポン(最終兵器)みたいに申すな!」

イマス「りいそおうぇぽ?」

とにもかくにも、ミマキは身を清め、寝ることにした。

まず、寝る前に祈りを捧げる。

ミマキ「大物主神を敬う気持ちが足りないのでしょうか? 貴公(きこう)が、わしの想いを受け止めてくださらぬのは、まことに悲しき限り。願わくば、何が足らぬのか、夢の中でお教えくださり、御恩情をお示しくだされ。」

そして、夢の中・・・。

大物主「大王よ。もう心配せずとも良い。国が治まらぬは、我(われ)の心によるモノゆえ。」

ミマキ「大物主様の御心?」

大物主「左様。我(わ)が子、大田田根子(おおたたねこ)に、我(われ)を祀らせれば、国は、たちどころに平穏となるはずじゃ。異国(とつくに)も、自然と服属するであろう!」

ここで、ミマキは目が覚めた。

傍らには、心配そうに眺める、大后(おおきさき)の御間城姫(みまきひめ)(以下、みぃ)がいる。

皇室系図(みぃ)

みぃ「大王・・・。如何(いかが)にございました?」

ミマキ「んんん・・・。大田田根子とか申しておったな・・・。」

みぃ「大田田根子?」

ミマキ「大物主様の子じゃ。わしや、ケニーではダメらしい。大田田根子でなければならぬと・・・。」

みぃ「では、その田根子と申す御方に祀っていただければ、疫は収まるのですね?」

ミマキ「そういうことじゃな。」

みぃ「良かったぁぁぁ。ほんに、よろしゅうございましたね。では、大田田根子殿を呼び寄せましょう! して、その方は、どちらに?」

ミマキ「分からぬ。」

みぃ「えっ?」

ミマキ「聞いたこともない御仁(ごじん)なのじゃ。」

みぃ「は?」

大田田根子は、一体、どこに?

次回につづく

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