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Smashing! 佐久間イヌネコ病院

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佐久間鬼丸獣医師(受)と喜多村千弦動物看護士(攻)とその友人達のお話。 どうぞお楽しみ下さい!
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2022年5月の記事一覧

smashing! まどわすがつうじないひと

帰りが遅くなる時、伊達さんは可能な限り起きて待っていてくださってる。着替えを手伝ってくれて、用意してあったご飯を温めてくれて。ゆったりとのんびりとした話し方に、心が解されるような気がします。その後は一緒にお風呂に入って、ちょっと真面目なお話もしたり。そして高い確率でそういった一通りのことも成し、お風呂上がりには髪も乾かしてくれて。 今日は寝室で軽くお酒をいただきながらゆっくり過ごすことに。テレビなどの映像を楽しむ以外は、基本光源は淡い間接照明だけ。淡いオレンジの光が、大好き

smashing! おれのおれとおまえ

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 背が高く姿勢の良い喜多村はゲーム好きでもあり、かなりのやり込み型。そのせいかどうしても腰に負担がかかるらしく、ゲームをしている間は軽い腰痛持ちになる。 「アアア…おにまるせんせいいたいです」 「気のせい気のせい。すぐラクなるからね」 リビングの真ん中、絨毯敷きの上にヨガマットやバスタオルを数枚。そこでうつ伏せになった喜多村が施術されるのは、佐久間の実家、僧侶たちの間で亜流で行われているタイのワットポースタ

smashing! それをまるっとつつみこみ

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして伊達は後輩の設楽泰司とも恋人同士だ。 「それにしても伊達さんてクジ運いいですね」 「へぁ、なんかね、ハルちゃんにどうかなあって思ったら当たったんよ」 雲母のペントハウス。リビングに置かれたのはオットマン風のフットマッサージャー。未使用時はフタを閉めてしまえばソファーの群れに紛れて邪魔にならな

smashing! あやつられるこころとは

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして最近、彼の後輩で彼氏・設楽泰司も二人と一緒に住み始めた。 その人がその人でない、そんな瞬間ってのがあって。これは伊達さんだとか理学療法士で獣医師だとか、日頃認識してる「外側」が全部なくなって、なんか個体としての生物のような。 大抵は飯食った後とか賢者な時間とか、伊達さんはオレにとってそんな風

smashing! たりないをあたためて

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 水曜は午前のみなので、片付けや残務を終えた昼過ぎからは半日休み。喜多村は実家がらみの用事で出掛けて行ったので、佐久間は久々のソロを満喫。どうせなら、いつも喜多村のしている昼風呂、佐久間も入ってみることに。どうやら今日、夏日だったからと言って掛けていた冷房で、少し体が冷えてしまったらしい。愛用のエプソムソルト・グレープフルーツの香りを入れ、浅めに張った湯に浸かる。 風呂場の窓を開けると、目に痛いくらいの強い日

smashing! たんじゅんでもおくぶかく

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 今日も仕事終わって着替えてすぐのあたり。喜多村は佐久間の、その、なんだ、匂いが大好きらしく、直接やると嫌がられると言って、キッチンとか隣にいる時にそっと秒で嗅いでいる。佐久間の方もそういうのは満更ではないが出来れば風呂上がり等に嗅がれたい。てか普通皆そうだよね。汗臭いよりいい匂いのときがいいですよね。 「鬼丸だったらどんな匂いでもイケる」 てか何がだ。どんな、という定義が訳わからんのやけど。佐久間は自分の

smashing! つなぐえんとそのいろを

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして伊達は後輩の設楽泰司とも恋人同士。 花を選ぶなんてことは初めてだったから、帰り道に寄った商店街、花屋の場所もわからなかった。数日前は伊達さんが雲母さんに指輪を贈ったという日。何日も前から用意していたものを一緒に渡すのに、花とプラス何か旨いものでも買って帰ろうかと考えを巡らせながら、目の前で美し

smashing! あたたかさにほどけて

誰もいないと思っていたら、伊達さんがソファーに座ってなにやら。おかえりい。のんびりと答える声が優しい。何をしていらっしゃるのかと思ったら、膝に抱えたボウルには緑の豆。枝豆ですか?覗き込む僕の目の前で、手のひらにのっけた翡翠を転がす。グリーンピースね。佐久間んとこでもらったんよ。 ボウルの中、丁寧に取り出された緑はぴかぴかしていて、一体どんなお料理になるのかとても楽しみ。不意に、伊達さんの手が伸びて僕の頬に触れる。ハルちゃんなんか元気ないねえ。どきりとした。今の今まで僕も忘れ

smashing! きみのまえではどうしても

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗。彼は佐久間の病院の経理担当である税理士・雲母春己の恋人。 浴室中に漂うのはハチミツの甘い香り。今日はバスタブの中がキラッキラゴールドに輝いてて。ハルちゃんは少しほろ酔い気味。向かい合わせに座った俺の洗い髪をその長い指先が緩やかに梳く。ハルちゃんは目が悪いので、この距離でも俺のことがうすらぼんやりしか見えないらしい。恥ずかしい、とかそういう感情はそ

smashing! こころのなみにあらわれて

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 小さい頃何を集めてたかって話になって、呑みの途中で各々の部屋へ。いくらなんでもそんな昔のはここにはないけど、爪痕的なものが何かしらありそうってことで、いくつかの箱やらアルバムやらを持ち出してきた。 「あーベイなブレードとかあったねえ」 「流行るの、大体がゲームだったしなあ」 喜多村はサッカー選手やメジャーリーガーの何らかのカード。なぜか部屋中にばら撒かれた写真が。なんで本人は写ってないんだ?そう聞くと、だ

smashing! そこにギャップがあるから

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして伊達は後輩の設楽泰司ともそういう仲。 側にいてくれと頼んではいないけど、設楽はいつも色々と俺の世話を焼いてる。ぱっと見誰も気づかないように。目立たないように。気配を消すのがうまくて、慣れた人間でもどこにいるのかわからない時もある。 「んじゃあねえ、トンちゃんも早く交代してなー」 「大丈夫です

smashing! おもうこころがだだもれ

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 忘れそうになってた振り込みや何やら、けっこう雑務が溜まってきたので一旦全部済ませてこようと、丁度伊達さんの来てくれてる日なのもあり、俺は伊達さんと千弦に病院を任せ、今日は自転車で回ることにする。平日の午前、通りは人通りも少なく銀行や役所もすいてて運が良かった. あっという間に一通りの用事が終わってくれた。せっかくだから夕方から出なくてもいいように、買い物やら昼飯やら調達していこうかな。所帯臭いなんて言われそ

smashing! あいしてるじゃおいつかず

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。非常勤である、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして最近、伊達の後輩獣医師・設楽泰司も絶賛同居中(付き合ってる)。 僕の誕生日は年二回。立春の日とあと数日前の5月12日。中三の時の家族旅行中の事故で全て失って、ただ一人この世に戻ってこられた日。 その当日は僕はどうにも終わらない仕事を抱えていて、前日に伺った親代わりの白河先生のところで雑務を手伝っていただ

smashing! のぞみときたいのさぶん

「伊達さん、ちくわ平気ですか?」 「…ごめ設楽、なんて?」 「ちくわ。細かくして入れるんですけど」 「えっと、じゃ、お願い」 「御意」 オムライスにちくわ。うんうん、想像できないことってっ結局、別次元への入り口よね最高のハーモニーが待ってるんよね。伊達は鼻歌を歌いながら、台所に向かう設楽の後をついていく。 「ちくわ、そんな細っかくすんだ?」 「ちくわ感を消すっていう技術なんです」 「ああ、そういう…」 玉ねぎ、ピーマンみじん切りも入れて手早く仕上げられたチキンライス(ち