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smashing! たんじゅんでもおくぶかく

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。

今日も仕事終わって着替えてすぐのあたり。喜多村は佐久間の、その、なんだ、匂いが大好きらしく、直接やると嫌がられると言って、キッチンとか隣にいる時にそっと秒で嗅いでいる。佐久間の方もそういうのは満更ではないが出来れば風呂上がり等に嗅がれたい。てか普通皆そうだよね。汗臭いよりいい匂いのときがいいですよね。

「鬼丸だったらどんな匂いでもイケる」

てか何がだ。どんな、という定義が訳わからんのやけど。佐久間は自分のあちこちをスンスンと嗅いでみても、自分の匂いすら不明。こっそり喜多村の後ろ頭などを嗅いでもちょっと汗の匂いがする程度で、いまいち理解もできない。

「千弦さ、それはフェチってやつだよな」
「いや、俺は鬼丸の匂い限定だ」

そういや以前も「一日中外で草刈りとか掃除して汗ビショの鬼丸が嗅ぎたい」つって、そのご希望に答えたこともあった。そりゃいろんな目に遭わされたのだけど、きっとフェロモンぽい関係じゃないだろうか。佐久間はため息をつき、今日の夕飯の仕込みを始める。冷蔵庫スカスカでも出来そうな、今日は牛丼だ。いい牛肉あってよかったなあ。喜多村が嬉しそうに頷く。

「ぱっと食ってぱっと風呂入って寝よか」
「あ、鬼丸はギリ寝る前に風呂に入ってくれ」
「?なんで?」

じっくり味わってからじゃないともったいないから。ほらこういう時に無駄なそのイケメン度。目と眉近いの今じゃなくてよくね?それだけ言って喜多村は佐久間から離れ、冷蔵庫を覗いてサラダ的なものを吟味し始める。不意打ちからの肩すかし。佐久間は少しだけ残念に思ってしまっている自分に気づき、ぶんぶんと首を振る。


冷静が情熱が、そんな単語が入り組むよりももっと、単純でそれでも理解不能な衝動も、こうして時にはあったりするんだ。

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