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smashing! まどわすがつうじないひと

帰りが遅くなる時、伊達さんは可能な限り起きて待っていてくださってる。着替えを手伝ってくれて、用意してあったご飯を温めてくれて。ゆったりとのんびりとした話し方に、心が解されるような気がします。その後は一緒にお風呂に入って、ちょっと真面目なお話もしたり。そして高い確率でそういった一通りのことも成し、お風呂上がりには髪も乾かしてくれて。

今日は寝室で軽くお酒をいただきながらゆっくり過ごすことに。テレビなどの映像を楽しむ以外は、基本光源は淡い間接照明だけ。淡いオレンジの光が、大好きな甘いチューハイを味わう伊達さんをふわりと照らしています。この光だと肌やなんかすっごい綺麗に化けますから。設置してくれた設楽くんが力説してましたが、設楽くんにしろこの伊達さんにしろ、エフェクト加工なしでのハイクォリティてところが素晴らしいんですよ如何ともしがたく(ノンブレス)

「この部屋だとハルちがもっと綺麗に見えるんよねえ」

沢山のクッションや枕に凭れ、僕の主君はとてもご機嫌で、嬉しそうにチューハイの缶を抱えている。え?いつのまに2本いっぺんに。ほんの5、6パーセントのなら問題はありませんが、9だとすぐに落ちてしまわれるので注意しなければ。明日は全員が朝ゆっくりできそうなので、ひょっとしたらそういった一通りのことも成すやもしれませんから。もちろんお楽しみ、という意味で。

ドアの外から微かに低く響くのは、設楽くんの鼾。あいつ夜勤明けでねえ帰ってきてすぐ落ちたんよ。伊達さんはそれでもそんな設楽くんを着替えさせたり食事を摂らせたり、言わないだけで大活躍しておられただろうことも、ちゃんと知っています。

手を伸ばした先に触れた僕の指先、指輪をなぞるように撫でて、それからゆっくりと僕の腕を引く。グラスをそっとサイドテーブルに置き、伊達さんに請われるがまま抱き寄せられて。バスローブってみなおそろいに思えるよねえ。悪戯っぽい伊達さんの呟きに小さく笑う。ローブの胸元からは僕と同じバスソルト、甘さのないレモングラスの香り。

甘い、苦い、しょっぱい。全部あなたと味わって共有したい、そう思っていっぺんに様々な食感を香りを差し出しては、それらに惑わされることなく全てをひとつひとつを確かめ「唯一」を当ててみせるあなた。

「ハルちゃんはこれが好きなんよねえ」

ああ、今日も見事に、正解を導き出しておられる。


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