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Smashing! 佐久間イヌネコ病院

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佐久間鬼丸獣医師(受)と喜多村千弦動物看護士(攻)とその友人達のお話。 どうぞお楽しみ下さい!
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2022年3月の記事一覧

佐久間イヌネコ病院 luv.57 あきらめのうしろ

昔から干物が大好きで 最近うまいこと店が持てた 自分ち改装したから コストも大丈夫 仕入れも知り合いのツテで安く済んでる 地毛が茶髪で癖毛で童顔 一見どう見ても25くらい?な若見えらしいけど 四捨五入するとアラなんとかなんだ ここから少し離れたとこの動物病院の院長さんと 名前も外見も被ってるらしく よく間違われて そのうちそこの看護士さんと仲良くなった そして院長さんもウチの店来てくれた あの仲のいい二人見てたらふと 「あきらめ」た色々を思い出した 好きな人と 上手

smashing! おいしいものもおおぜいで

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 手間のかかるものを作っている時、不思議と集中力が増し、雑念が払拭される気がする。いわば無我の境地に近くなる。ひとつひとつを細やかに丁寧に、そして大きく畳んで丸めて。 「…こんくらいでいいか?鬼丸」 「すごくいい!その大きさを基準にしようか」 水曜は午前で病院は終わる。佐久間と喜多村は週末あたりに巻き起こりそうな呑み会の予感に、今から準備を始めていた。屋上で桜見るか、河川敷行って釣り大会か。どちらにしても宴

smashing! いただいていただかれて

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして伊達は後輩の設楽泰司ともそんな仲だ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日本列島より大きな低気圧が大暴れする奇っ怪なこの季節、皆様お体の調子はいかがでしょうか?あえて最近「余暇」を信条にしている税理士・雲母春己です。 週の半ばのド平日、僕を除くお二人は年度末も影響しているのか、波乱に満

smashing! まよけとしゅごが だいじゅうたい

最初に目についたのはその靴先。細かなキズも丁寧にカバーされた、滑らかに光るその革靴に、院内なのに窮屈じゃないのかな、と少しだけ違和感を覚えた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 大学附属動物病院。朝礼、顔合わせで俺はチームの皆に挨拶。今日だけのヘルプ要員だというのにここの人間は至極フレンドリーに受け入れてくれた。わからないことがあったら聞いてください、人の良さそうな青年医師が何かと世話を焼いてくれる。この彼は2m近いな。大きいね。思わず出た言葉に彼は照れ臭そうに笑っ

smashing! よりどころによるこころ

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。本日は日曜により休診。 病院からはそんなに離れてはいないのに、あまり馴染みのない通りにある、無駄にお洒落な感じの乾物屋。身の丈170ちょい、ダークブラウンのふわふわ癖毛を赤いバンダナで巻いた、粋な魚屋スタイルの店長さんは佐桑風馬。佐久間とよく似た苗字を持つ。 「院長さん、サヨリの丸干し入ってますよ!」 「うわありがとう!えと、サクワさん?」 「俺ら苗字すげえ被ってますよね」 「お薬」配達途中だった喜多村が偶

佐久間イヌネコ病院 luv.56 Mr.ヒーラー

休日に出勤しないといけないことって 大人にはあるんよね そんで俺にお声が掛かって 早速働いてきた!手術もあった! 腱のとこだったりするとね 俺が専門だからなんだって そりゃもう完璧に頑張ったよ!ほんと! 今日は俺の平屋の家のほうに あの二人もいるはずだから 車でまっすぐ帰った 途中なにかお土産買おうとしたんだけど なにも思いつかなくて ちょうど雲母ハルちゃんが 俺のためにブリしゃぶするんだって 買い物に出てて おかえりなさい、そう言って 半裸のやつが迎えに出てきたん

佐久間イヌネコ病院 luv.55 映え

今更だけどインのスタグラムが 仲間内で流行りつつあるんだ 最初はお察しの通りの男の娘 すぐるんだ 結構前からやってて フォロワーさん5ケタだって なにティクビでものっけた?て聞いたら 金的されたイターイ 俺は自撮りがいまいちかっこよくないので 全部鬼丸に撮ってもらったやつを使っている 鬼丸が撮るとなんだか 数倍かっこいいからだ! 彼氏目線てやつだな! /喜多村千弦 ーーーーーーーーーーーーーー 佐久間イヌネコ病院 どういうのがいいのか ほんとわかんなかったし 俺そ

smashing! これがおれのおたのしみ

下拵えに手間をかけなくても、美味しくなってるのがいい。 遅番だったんで家に帰るとそれなりの時間。三人とも忙しい週はこっちの家、ペントハウスのほうと決まっている。玄関開けて、リビングに入ると少しだけ甘い香り。果物かな。匂い嗅ぐと食べたくなるやつ。そのままキッチン入って冷蔵庫を開けると、オレ用に取り分けてくれてる小っさいクリスタルボウル。これは八朔?あとイチゴとか入ってる。キッチンの背の高い椅子に座り、そのまま直にボウルから指でつまんで。ああこれはこの時期に美味しいのか。あの二

smashing! あまいしずくときみと

イチゴは酸っぱめのがいい。温まった酸味が、甘さの中に優しく消えていくから。二人で過ごす時に食べるのはフルーツ。今の時期は甘くて大きな柑橘もいい。 君が選んでくれた色とりどりの旬。丁寧にカットされて繊細なクリスタルプレートに並べられたそれらを、ひとつ、そしてまたひとつ。君の長くて白い指先が粒を選る。甘くて酸っぱくて香りが良くて。味わう間にも、君と触れ合う頬や唇も柔らかくそして甘く、そこに加わる酸っぱさがなんともいえずしっくりと合う。 眼鏡のシールドを外した君の目元が笑む。ソ

smashing! たのしいなみにのっかって

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして最近、二人と一緒に住み始めたのは伊達の後輩で恋人の設楽泰司。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 今日は日曜で三人ともお休み。ゆうべ遅くまで部屋でゲームしてた(らしい)設楽の姿が見えない。朝早くからどっか出かけたみたいね。朝飯食ってから雲母ハルちゃんと俺は庭の菜園を手入れして、そのまま車で

佐久間イヌネコ病院 luv.54 ストイック

「え!リウ先生って毎朝走ってんの?」 「河原行って戻ってだから、10kmくらいだな」 「そんなに!」 佐久間イヌネコ病院から少し離れた銭湯、ウミノ湯の主人は羽海野真弓。彼の「彼」は、最近南アフリカの海洋研究所から帰国した、元教授の九十九龍一。三十代半ばの羽海野マミたまより少し年上、なのにこの近隣に住む誰よりも健康的な毎日を送っている。朝食後軽いストレッチから、河原堤防まで往復およそ10kmのコースを毎日ジョギング。その後銭湯の仕事を手伝っているのだ。 「真弓ただいまー

佐久間イヌネコ病院 luv.53 あるいみ?

このところ暖かくなって、ていうか暑くて、ウチの千弦が裸族に返り咲いた。冬の間は寒いし風邪でも引いたら大変だからって着衣を義務付けてはいたんだけど。 風呂上がり、病院終わったあと、他人の目を気にしなくても済む時間はほぼ裸族。もともとあいつは気にしてないけど。だからこういう時はちょっと油断してたりする。主に俺が。 今日は夕飯を簡単に済ませて、ゆっくりめに風呂に入った。花粉の時期は風呂がすごく気持ちいから、つい長風呂になるんだけどね。先に千弦が上がって、色々酒の支度してくれ

smashing! ねがいはすでにかなえられ

「今日は三人で意外なことをしよう!」な日。駅で待ち合わせた伊達が設楽と雲母を引率、電車→飛行機→タクシーで到着したのは某アドべンチャーなワールドだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー side/雲母春己 パンダ観に行くよ!伊達さんはいつでもどこでも本当に楽しそう。あの方にとって、何かを「待つ」というのも一種のアトラクション。今回もすきま時間を愉快に過ごしておられました。到着後僕たちは早速、お目当てのパンダのラブなゾーンへ。 思ってた数倍大きくてふかふかキュ

smashing! かおるそのこうばしさを

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 どうも来院される飼い主さんが少ないなと思ったら、外は雨が降っていた。細かく霧のように散る雨でも、地味にビショビショなるもんね。夕診後各所の掃除をし、喜多村は佐久間と共に2階住居部分に上がった。 「今日雨だけど千弦、俺ちょっと外に出たい」 「うん。雨だと鼻が楽なんだよな?じゃ外行こう!ご飯行こう!」 犬のリイコにゆでささみで留守番を任せ、久しぶりに二人揃っての外出。雨の日は花粉が舞わないから呼吸が楽だ。佐久