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smashing! ねがいはすでにかなえられ
「今日は三人で意外なことをしよう!」な日。駅で待ち合わせた伊達が設楽と雲母を引率、電車→飛行機→タクシーで到着したのは某アドべンチャーなワールドだった。
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side/雲母春己
パンダ観に行くよ!伊達さんはいつでもどこでも本当に楽しそう。あの方にとって、何かを「待つ」というのも一種のアトラクション。今回もすきま時間を愉快に過ごしておられました。到着後僕たちは早速、お目当てのパンダのラブなゾーンへ。
思ってた数倍大きくてふかふかキュートで垂れ目ポイントでそれはもうこうブラックとホワイトのコントラストが織りなす大熊猫ので(ノンブレス)
昔、白河先生が動物園に連れていってくれた時、運悪くパンダが非公開の時期で。それきり見ることが叶わなかったんです。僕がパンダを見たことがないって言ったことを、伊達さんは覚えていてくださったんでしょう。おそらくお酒の席のことでしたから、僕の方はすっかり忘れてしまっていた、しかもこんな些細な「願い」なんて。
うわー大きいねえ可愛いねえ!三人お揃いのパンダの耳付きキャップがとてもお似合いな伊達さんが、僕にはいつもよりも更に優しく思えたんです。
叶えてくださって、ありがとう。
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side/設楽泰司
イルカやシャチのショー観に行って水をかけられたことがない。オレは小さい頃から皆より頭ひとつ大きくて仏頂面、確かに可愛げもないせいか、そういったショーの時なんかも、進んで前のほうに出ようとも思わなかった。
ショーの会場、オレは後方の端の席に座ろうとした。ここのほうがよく見えるし。すると伊達さんはいきなりオレの携帯やなんかを取りあげ、雲母さんに預けた。そして人のまばらな前列からイルカに向かって手を振った。今あの子と目合ったから来るよ!伊達さんの謎の叫び。
設楽!こっちおいで!ハルちゃんは逆にちょっと下がった方がい!なんですかその的確な指示。言い終わらないうちに遥かな高みから降る大量の水飛沫。それでも少しだけ食らった伊達さんが、大笑いしながら自分に抱きついている。唖然と立ち尽くしながら思った。これ海水なんだな。改めて気づいた。
頭のいいイルカが気遣ってくれたのか、観客席の後方に向かって跳ねさせた水。おそらくは伊達さんを狙ってだろう。おかげで自分もびしょ濡れになった。いや、今になって「なれた」。
やりましたね!タオル片手にやってきた雲母さんが、笑いながら伊達さんを拭ってる。そしてオレに差し出したタオルを、少し考えてそっと、目元を隠すように頭から掛けた。海の水は染みますからね。雲母さんの小さな声で、オレは海水ではない塩っぱさに気づく。
誰にも言ったこともない、自分でも覚えてないような遠い過去、小さな自分の「願い」。そんなのがいきなり叶ったりする。今この瞬間にも。
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「俺はねえこのパンダの枕とね…」
「伊達さん、枕なんて朝どっか行っちゃってるじゃないですか」
「このグラスはどうですか?これにワイン入れたら可愛いですよきっと♡」
濡れたシャツなんかを着替え、パンダ、イルカ、癒し系動物とのどつき合い等を経て、帰りは売店でグッズを吟味。ぬいぐるみ系とか小物いっぱい買ってこうウチと佐久間んとことあと…厳選された大量のグッズ入りカートを設楽が押す。ほんとパンダの可愛さは凶悪に近いですね。設楽がそう言うと伊達はウケて、すげえわかるわ圧倒的よね。伊達がくれたパンダキャップで練り歩く姿を、雲母は携帯でもデジカメでも更に大量に写真を撮っていた。
「これなんか伊達さんに似合いそうです」
「あ、白エビの塩辛ですよ、伊達さん好きなやつじゃないですか」
絶え間なく掛けられる声を、伊達は二人の側で心地よさげに聞いている。手を伸ばせば当たり前のように、見上げれば笑みに瞬く瞳がある。自分がここにいることを厭わず受け入れてくれる二人は、伊達にとってまさに願ってやまなかったもの。
同調し受け入れられる。伊達の心の深い所に存在する、誰にも伝えることのない「願い」もこうして、図らずも叶えられているのだった。
「さ、そろそろ旅館行こか!今日のとこは凄いんよ!」
凄い、の基準がいつも読めないんですよね、設楽の呟きに思わず吹き出す雲母。伊達は背の高い二人に挟まれ腕を絡ませながら、美しい仮想サファリの夕暮れを後に、小走りでタクシー乗り場へと急いだ。
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ざんねんカレシ!その⑦ 伊達雅宗
これはその後日談になります!
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