聞間 理(ききま おさむ)

九州産業大学商学部教授 ”個を活かす組織”をテーマとする中でレゴ®︎シリアスプレイ®︎(L…

聞間 理(ききま おさむ)

九州産業大学商学部教授 ”個を活かす組織”をテーマとする中でレゴ®︎シリアスプレイ®︎(LSP)メソッドに出会う。その後、LSPメソッドを、経営学を中心とする学術知識と結びつけながら深める日々を送る。企業課題解決や教育への応用の他、さまざまなシーンへの応用も探求している。

マガジン

  • レゴ®︎シリアスプレイ®︎についてあれこれ

    レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドに関して「理解する」「応用する」以外で考えたことあれこれ詰め合わせ的に。

  • 3D セルフインタビュー(ブロックで自己定点観測)

    ブロックで月1回ほど自分の状況モデルを作り考察を重ねていくシリーズです。

  • 成人発達理論とレゴシリアスプレイ

    成人発達理論に関する著書を読みながら、レゴシリアスプレイメソッドとの関係を考察した記事を集めたマガジンです

  • 『学習する組織』をLSPメソッドの文脈で読む

    このNoteのシリーズでは、すでに古典としての風格も帯びてきたPeter M. Senge(日本語著者名表記はセンゲであるが英語発音ではセンギの方が近いらしい)の『学習する組織』を読んで考えたことをメモしていきます。単に読むだけではなく、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関わりを意識しながら読んでいきます。

記事一覧

組織進化論とレゴシリアスプレイメソッドとの接点(2)組織のメンバーシップ感覚をめぐって

 ハワード・オルドリッチの『組織進化論』を少しずつ読みながら、考えたことを書き下ろしていく。今回の話もまだ第1章の序論部分についてである。  前回は組織を特徴づ…

組織進化論とレゴシリアスプレイメソッドとの接点(1)組織の目的指向性をめぐって

 ハワード・オルドリッチの『組織進化論』を久しぶりに手に取った。  本書はすでに組織理論の本としては古典である(英語版は1999年に出版。日本語は2007年に出版)。本…

レゴシリアスプレイメソッドにおいて参加者・場所・時間が異なれば、それに合わせて問いを調整する。一番難しいのは自分の中の異なりである。ファシリテーターとして経験を積むと場の見え方が変わる。特に怖いのは慣れと思い込み予測である。それを避けるには自分にとっての挑戦要素を入れることだ。

レゴシリアスプレイメソッドを使って、メタファーを通じて組織をより深く考えることについて

 Gareth Morganによる組織論の古典的名著としてImagaes of Organizationという本がある。  タイトルの通り、組織にはいろいろなイメージがつきまとう。そのイメージをも…

大きな課題は、解決できたときにその分だけ大きな対価や報酬を生む。課題の大きさを知るには、課題に触れたときに生じる人々の感情の表れや大きさを把握できなければならない。レゴシリアスプレイを使えば、何が課題でどのように感じるのかを参加者にモデルを作らせ語らせることでよりよく把握できる。

ランドスケープはモデル同士の関係性を検討するレゴシリアスプレイのテクニックである。一つのモデルには複数の要素や特徴が含まれる。仮にそれが平均3つとしてモデルから1つ選び5人分の要素を組み合わせストーリーを作ろうとすると240通り以上になる。様々な角度から検討しだすと話は尽きない。

何かと何かの関係性やその間に働く力学は目に見えない。レゴシリアスプレイメソッドでは、その関係性を、力学をチューブ状のパーツや、紐状のパーツを使って表現することが多い。関係性のあり方も多様なので、時間が許せば、通常のブロックを使ってその関係性を一つ一つ作ってもらう方法もよさそうだ。

レゴシリアスプレイには7つの応用テクニックがある。2日間でそのうち4つの復習会をした。ファシリテーターになって10年以上経つが今回も自分にとって新しい発見があった。それは前回から今回まで経験を重ねて新たな理解に至ったからだと感じる。忘れたから復習ではなく知ったから復習なのである。

レゴシリアスプレイメソッドで、モデル同士の関係性を探るワークをする場合、見た目以上に深い議論になり、様々な可能性が溢れ出てきて結論が収束しない場合がある。その時には関係性の表現を無理に一つに絞るよりも議論の過程を振り返らせて、そこからの気づきや学びに目を向けさせる方が良いだろう。

3Dセルフインタビュー 3D-Self Interview with LSP. 16th August 2024

 レゴブロックを使って自分の状況を表現して内省する取り組みをしています。今回は2024年8月16日に作った自分の状況についての定点観測です。 I am working on using LEG…

組織や環境の複雑性への対応力を高める一つの方法は、システムモデルを組み分析することである。作ったモデルに基礎的なネットワーク分析を使うと、重要なエージェントの見極めやビジネス機会の抽出などが可能になる。良いワークとなるには参加者の想像力が大事だがそれをレゴシリアスプレイが支える。

思考の解像度を上げていくためには、より多くの情報を考慮に入れ、情報同士の関係性を整理して、より具体的にしていくことが必要である。整理の段階いわゆる「ふわっとした」状態をモデルに整理すること、整理したものを多角的に観察し、追加の情報を引き出すためにレゴシリアスプレイは役にたつ。

SDGsのように目指す目標が明確である場合には、その目標を阻害している要因、それを乗り越えて先に進めるアイデア、そのアイデアの実装を議論するという流れが良い。この流れは小さなアイデアを大きな成果へと転換する「第3のイノベーション」のプロセスでありレゴシリアスプレイで実施可能だ。

レゴシリアスプレイの新しいプログラムの試行会を通じて、対象組織の活動プロセスの特性を把握した上でワークショップのプログラムを組むのとそうでないのでは精度が大きく変わることを実感した。気づいてみれば当たり前だが、やってみて分かることだが、やらなければわからなかったとも言える。

ワークショップで問いや指示を出すときの言葉について。馴染みの言葉を使えば人の経験によって意味が異なっているリスクがある。また、新しい言葉をつかえば意図が伝わらないリスクがある。いつ何時でも言葉に気をつけなければいけない。レゴシリアスプレイのファシリテーションでもそれは変わらない。

レゴシリアスプレイメソッドで何かについて考え語るとき、それに対して「叱る」や「褒める」ではなく、まず「共感」や「承認」がくる。プログラムの組み方次第では、評価をする場面もあるが、参加者に対してではなく作品に対してである。参加者と作品が物理的に分かれていることが心理的安全性を保つ。

組織進化論とレゴシリアスプレイメソッドとの接点(2)組織のメンバーシップ感覚をめぐって

組織進化論とレゴシリアスプレイメソッドとの接点(2)組織のメンバーシップ感覚をめぐって

 ハワード・オルドリッチの『組織進化論』を少しずつ読みながら、考えたことを書き下ろしていく。今回の話もまだ第1章の序論部分についてである。

 前回は組織を特徴づける「目的志向性」について考えた。

 今回は序論で触れられている、組織のもう一つの側面について考えたい。

それは、組織のメンバーシップである。

 ここでいうメンバーシップというのは、組織に属する人が誰であり、誰がそうでないかを区別す

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組織進化論とレゴシリアスプレイメソッドとの接点(1)組織の目的指向性をめぐって

組織進化論とレゴシリアスプレイメソッドとの接点(1)組織の目的指向性をめぐって

 ハワード・オルドリッチの『組織進化論』を久しぶりに手に取った。

 本書はすでに組織理論の本としては古典である(英語版は1999年に出版。日本語は2007年に出版)。本書の特徴としては、それまで官僚組織や大企業に焦点を主に当ててきた組織理論を、より小さな組織、すぐに消えてしまうような組織にまで拡張しようとしたことである。

 そのような視点を入れたとき、小さな組織がどのような理由で生まれるのか、

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レゴシリアスプレイメソッドにおいて参加者・場所・時間が異なれば、それに合わせて問いを調整する。一番難しいのは自分の中の異なりである。ファシリテーターとして経験を積むと場の見え方が変わる。特に怖いのは慣れと思い込み予測である。それを避けるには自分にとっての挑戦要素を入れることだ。

レゴシリアスプレイメソッドを使って、メタファーを通じて組織をより深く考えることについて

レゴシリアスプレイメソッドを使って、メタファーを通じて組織をより深く考えることについて

 Gareth Morganによる組織論の古典的名著としてImagaes of Organizationという本がある。

 タイトルの通り、組織にはいろいろなイメージがつきまとう。そのイメージをもって組織の一部にスポットライトを強く当てる。そのような機能をもつイメージの使い方はメタファー(隠喩)と呼ばれる。

 この本で紹介されている主なメタファーとしては、以下のようなものがある。「組織とは〇〇

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大きな課題は、解決できたときにその分だけ大きな対価や報酬を生む。課題の大きさを知るには、課題に触れたときに生じる人々の感情の表れや大きさを把握できなければならない。レゴシリアスプレイを使えば、何が課題でどのように感じるのかを参加者にモデルを作らせ語らせることでよりよく把握できる。

ランドスケープはモデル同士の関係性を検討するレゴシリアスプレイのテクニックである。一つのモデルには複数の要素や特徴が含まれる。仮にそれが平均3つとしてモデルから1つ選び5人分の要素を組み合わせストーリーを作ろうとすると240通り以上になる。様々な角度から検討しだすと話は尽きない。

何かと何かの関係性やその間に働く力学は目に見えない。レゴシリアスプレイメソッドでは、その関係性を、力学をチューブ状のパーツや、紐状のパーツを使って表現することが多い。関係性のあり方も多様なので、時間が許せば、通常のブロックを使ってその関係性を一つ一つ作ってもらう方法もよさそうだ。

レゴシリアスプレイには7つの応用テクニックがある。2日間でそのうち4つの復習会をした。ファシリテーターになって10年以上経つが今回も自分にとって新しい発見があった。それは前回から今回まで経験を重ねて新たな理解に至ったからだと感じる。忘れたから復習ではなく知ったから復習なのである。

レゴシリアスプレイメソッドで、モデル同士の関係性を探るワークをする場合、見た目以上に深い議論になり、様々な可能性が溢れ出てきて結論が収束しない場合がある。その時には関係性の表現を無理に一つに絞るよりも議論の過程を振り返らせて、そこからの気づきや学びに目を向けさせる方が良いだろう。

3Dセルフインタビュー 3D-Self Interview with LSP. 16th August 2024

3Dセルフインタビュー 3D-Self Interview with LSP. 16th August 2024

 レゴブロックを使って自分の状況を表現して内省する取り組みをしています。今回は2024年8月16日に作った自分の状況についての定点観測です。

I am working on using LEGO bricks to express and reflect on our own situation once a month. This time it is a fixed point observ

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組織や環境の複雑性への対応力を高める一つの方法は、システムモデルを組み分析することである。作ったモデルに基礎的なネットワーク分析を使うと、重要なエージェントの見極めやビジネス機会の抽出などが可能になる。良いワークとなるには参加者の想像力が大事だがそれをレゴシリアスプレイが支える。

思考の解像度を上げていくためには、より多くの情報を考慮に入れ、情報同士の関係性を整理して、より具体的にしていくことが必要である。整理の段階いわゆる「ふわっとした」状態をモデルに整理すること、整理したものを多角的に観察し、追加の情報を引き出すためにレゴシリアスプレイは役にたつ。

SDGsのように目指す目標が明確である場合には、その目標を阻害している要因、それを乗り越えて先に進めるアイデア、そのアイデアの実装を議論するという流れが良い。この流れは小さなアイデアを大きな成果へと転換する「第3のイノベーション」のプロセスでありレゴシリアスプレイで実施可能だ。

レゴシリアスプレイの新しいプログラムの試行会を通じて、対象組織の活動プロセスの特性を把握した上でワークショップのプログラムを組むのとそうでないのでは精度が大きく変わることを実感した。気づいてみれば当たり前だが、やってみて分かることだが、やらなければわからなかったとも言える。

ワークショップで問いや指示を出すときの言葉について。馴染みの言葉を使えば人の経験によって意味が異なっているリスクがある。また、新しい言葉をつかえば意図が伝わらないリスクがある。いつ何時でも言葉に気をつけなければいけない。レゴシリアスプレイのファシリテーションでもそれは変わらない。

レゴシリアスプレイメソッドで何かについて考え語るとき、それに対して「叱る」や「褒める」ではなく、まず「共感」や「承認」がくる。プログラムの組み方次第では、評価をする場面もあるが、参加者に対してではなく作品に対してである。参加者と作品が物理的に分かれていることが心理的安全性を保つ。