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組織進化論とレゴシリアスプレイメソッドとの接点(1)組織の目的指向性をめぐって

 ハワード・オルドリッチの『組織進化論』を久しぶりに手に取った。

 本書はすでに組織理論の本としては古典である(英語版は1999年に出版。日本語は2007年に出版)。本書の特徴としては、それまで官僚組織や大企業に焦点を主に当ててきた組織理論を、より小さな組織、すぐに消えてしまうような組織にまで拡張しようとしたことである。

 そのような視点を入れたとき、小さな組織がどのような理由で生まれるのか、その後大きくなっていくのか、長く生き残れたり、消滅してしまうのか、また大きな組織がどのような理由でさらに大きくなったり、小さくなったり、変質したり、消滅するのか、について説明できる枠組みが必要となる。安定だけでなく変化に、構造だけでなくプロセスに焦点を当てることになる。
 そのような視点をもって組織を分析していくことを、本書では「進化論的アプローチ」と呼んでいる。

 本書は、日本語版で本文が350ページを超え(参考文献リストは64ページもある)、内容も重厚なものである。簡単に全てをまとめることはできないため、重要なトピックを少しずつ切り出して、考えてみたいと思う。

 今回は、議論の前提となる「組織の目的志向性」についてである。

 著者によれば、組織と家族や他の集合体から区別する大きな特徴は目的志向性であるという。「組織的な」行動・「組織的な」プレイというとき、何かに向けて人々が行動するようなイメージが浮かぶと思う。その行動やプレイの向かう先が目的ということである。

 興味深いのは、そこに関わる人々がその「目的」に無関心であったり、自分が疎外されている感覚があっても行動が向けられるということである。

 その裏にあるのは目的を達成できるために整備された「ルーティーン(業務の定型)」であったり、給与などの「インセンティブ(誘因)」であったりする。
 それに加え、「ルーティーン」や「インセンティブ」が十分に働いているかをチェックし、機能させるように手を入れる役割が必要である。そこで登場するのが「マネジャー(管理者)」である。
 
 マネジャーにも「ルーティーン」や「インセンティブ」が必要になる場合があり、結果として安定的に目的志向的でありつづけるには、「ルーティーン」「インセンティブ」「マネジャー」のいずれを導入するにもコストがかかることになる。

 要するに、組織が生まれ活動が進んでいくと「目的」に人々の気持ちを向けさせることに常に悩まされることになる。

 レゴシリアスプレイメソッドが組織の活動に必要になる一つの基本形は、この「目的」に人々の気持ちを向けさせるという課題についてである。

 目的に関心をもち、目的に向けて自分を律し判断して動いてもらう、できれば目的の達成や追求がその人のインセンティブの一つになるためには、どのようにすればいいかを考えるのである。

 それを考えるには、組織の目的の価値、協力する人の気持ちや過去の経験、その積み重ねであるアイデンティティなど、なかなか言葉にしにくく考えにくいことを、レゴブロックで作品をつくることによって考えやすくし、お互いに語り合えるようにする場の創出が必要となる。

 組織が目的志向性を持つ限り、レゴシリアスプレイメソッドはその支えとして必要にされる場面がなくなることはないだろう。

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