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エゾシカの肉をいただいた話3

シカ肉の調理法が特別である事も、よく解ってはいなかった。

他の肉と比べて脂質が少なく、高たんぱく低カロリーのシカ肉。ヘルシーではあるけれど、食べるために育てられた肉とは、当然、性質も違う。野生のシカは一頭一頭の筋肉の発達も違う上、多くの部位が調理法によっては堅くなり易い。加熱も十分にしなくてはいけない。

初めてシカ肉を食べるひとに「美味しい」と思ってもらいたい。最初の印象を大事にしたい。革も肉も、「格好いい」、「美味しい」、「欲しい」、そう思ってもらわなければ、継続的に買うことは出来ない。継続的に買えなければ、猟師さんのモチベーションも下がる。品質も下がってしまい、その結果、お客さまに胸を張ってお出しできるカバンが作れなくなってしまう。

美味しい肉、いい状態の革というのは、実は、猟師さんの腕や意識にかなり依存する。カバンの品質を守るため、聞き鞄は状態の悪い革を使わない。高い意識で協力してくださる猟師さんからだけ購入する希少な革。ただ命を取るだけでなく、きちんといい状態で、肉や革を利用しようとすると、猟はとても難しいものになる。経験だけでなく、解体の際の手間や、保管のコストもかかる。今回は、その大事な、大事な革と肉を分けていただいたのだ。

私の腕、カバンは自信を持ってお勧めできる。けれど、料理については不安。

カバンを置いていただいている羽根木の針仕事の専門店 ”ワサビ・エリシ” で、私はその日もお店の手伝いをしていた。頭の中の半分は、20kgのシカ肉をどうしようか考えている。

一旦、自宅に肉を送ってもらい、都内のバーベキュー会場に肉を運ぶ。協力してくれるひとを募ったとして、調理器具やテント、肉以外の食材の確保はその日だけの準備で出来る仕事ではない。解凍した肉をどうやって保冷したまま運ぶか。シカ肉をじっくり弱火で調理する間、他の食材で場をつなぎ、更に全部食べ切ってもらうには、ざっと30人を集めなくては。

ぐるぐると考えて、またもぼうっとして来た私の頭をはっきりさせたのは、今度はこんな言葉。

「来月、軽井沢にジビエのプロが来るわよ」

(4に続く、後半は料理中の様子です)

これは後でシカ肉を漬け込むソースになる予定の玉ねぎ

調理過程で出来るシカの脂

シカの脂は融点が高く、常温では固体になります(体内でも溶けない)

白い画ばかりなので、軽井沢育ちの綺麗なミントを飾った、豪華デザートの画像を

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