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DX 推進とは結局の所、頑固者をどう動かすかである。

おすすめの読者

- 社内で DX 推進をさせていきたいが何から始めるべきか見通しが立たない人
- DX 含めた社内を改善していくための組織の動かし方を知りたい人
- DX 以前の話ではあるが...こちらの人にもかなりおすすめ
   - 絶対に使った方が便利なツールを社内に紹介するも、なかなか使ってもらえない
   - 社内で有志の勉強会などを企画するも、なかなか人を集められなかったり成長していかない


DX とは結局、誰のための何だったのだろう

みなさん、こんにちは。
株式会社キカガク代表取締役会長の吉崎です。

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今日は IT 業界において、2020年にもっとも流行った用語の一つである Digital Transformation (DX) に関連した内容です。
DX を推進していくぞ!」と意気込むも、結局これって IT じゃない?とか感じることはありませんでしたか。

DX という用語はなんとなくわかりますが、みなさんはその正体をはっきりと言語化できるでしょうか。
人によっては Digitization, また人によっては Digitalization, 本当の意味の Digital Transformation を実行レベルにまで移せている企業は多くなかったように感じています。

そもそも DX なんて、多くの人にとって本当はどうでも良いのではないか。
DX とは、『頑固者』を動かしやすくするための口実であり、膿を洗い流すことで組織の動きを良くしたい。
結局の所、これが本音であり、その建前として利用されたのが DX ではないかと実感しています。

キカガクでも DX 推進の支援をすべく色々なコースを設計し、DX 推進に必要な How の話を日頃から何度も議論しています。
しかし、今日この場では、あらためて DX 推進の Why を考え直してみました。
どう DX を推進していくかの前に、なぜ DX を推進したいかを考え、その答えが社内の『頑固者』を動かすことに帰着するのではないでしょうか。

つまり、我々は DX の推進を謳っていく以上は、この頑固者を動かすための方法を身に着けておく必要があります。
もう少し噛み砕くと、DX は推進できたけれど、裏の目的としてあった頑固者を動かせていなければ、表面上の課題解決に過ぎないということに注意しなければなりません。

結局 DX という建前を通して何をしたいのか、オブラートに包まずにいうと社内の頑固者を動かしたい。
これこそが DX 推進の真の目的だと予想しており、この方法を今回は考えていきます。

慣れ親しんだ社内ツールを移行するときに見えた DX 推進のコツ

この DX に関する記事を書こうと思ったきっかけは、キカガク社内での慣れ親しんだツールから新しいツールへの移行を推進していたことでした。


DX 推進というほど大きな枠組みではありませんが、社内の慣れ親しんだツールを別のツールに移行するというのは、すこし抵抗感があります。

反対派とまではいかずも、動かない人を動かしていく努力が必要であり、これは DX 推進で悩んでいる人とおそらく同じ課題です。

キカガクの中でも頻度の高かった情報共有のノートアプリの Docbase を Notion へ、そして、チャットアプリを Slack から Slack + Discord の併用体制へ移行した際に意識していた点を含めた実体験を紹介します。


まず頑固者とは誰のことを指すのだろう

それでは、DX 推進の裏目的であると予想している頑固者をどうやって動かしていくのか。
これを身に着けておければ、DX というバズワードが終わった後にも、その次のビッグウェーブに対応することができるわけです。

まず知っておくべき点は、とても有名な以下のイノベーター理論の図ですね。
あるプロダクトやツールに関する採用者数と時間の関係です。

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出典:イノベーター理論とは?5つのタイプと具体例を解説!

社内向けのツールという視点では、アーリーマジョリティまで普及すればおそらく成功。
レイトマジョリティまで普及しきれば社内的には定着していると言うことができ、ラガードにさしかかる頃に次の新しい方法を考えるタイミングでもあります。

そして、最初の登場人物である頑固者とはどこを指すのか。
根拠のない主観ですが、その答えはレイトマジョリティ以降を指すと思っています。

また、2:8の法則(20%の人が80%の性能を出している)という点では、イノベーターとアーリーアダプターで20%弱を占めているため、アーリーマジョリティですら頑固者のゾーンの可能性もあります。
甘く見積もってレイトマジョリティ以降、厳しく見積もってアーリーマジョリティ以降が『頑固者』であり、組織にとっては動かすことが困難で工夫が必要ではないでしょうか。

頑固ものを動かすヒントは物理の摩擦の話

では、この頑固者をどのようにして動かすのか。
これも前述したイノベーター理論の考え方を使うだけで簡単です。

まずはイノベーターとはどのような人か。
ここは生み出すというよりも、好奇心旺盛な人が動き出すので、周りに目を向けるだけでいろいろな分野でのイノベーターはいます。
例えば、みんなの使っていない SNS をいち早く使っていたり、小さなコーヒーショップに詳しかったりと、こういう友達や同僚って必ず周りにいますよね。
つまり、多くの人がどこかの領域のイノベーターになっていることがほとんどです。
仕事に直結することが趣味に近い人(プログラマーなど)ほど、仕事では認められやすいということですね。
ということは、社内にイノベーションを起こす機会は多く存在しているはずですが、なかなかそのイノベーションが起こらないのはなぜでしょうか。

イノベーションを進める際に、注意すべき点は、「イノベーター => アーリーアダプター」「アーリーアダプター => アーリーマジョリティ」のように正しい時間軸の順番で進めるべきであることです。
イノベーションが失敗する典型的なケースは「イノベーター => レイトマジョリティ」のように順番を飛ばして伝えてしまい、イノベーターの持つ熱量ではレイトマジョリティを動かしきれないのです。

私はこれを「動かすために必要なエネルギー = 熱量 × 人数」で表すとわかりやすいと感じています。
この動かすために必要なエネルギーが次のフェーズの人の「動くために必要なエネルギー」を超えないと動き出しません。
物理で習った動かす力が静止摩擦力を超えないと動き出さないというイメージですね。

イノベーターの人は熱量こそが圧倒的に高いですが人数が少ないため、エネルギーの総量が多くありません。
しかし、イノベーターはその熱量の高さゆえに全ての人に普及すべきだと盲目になっていることが多いです。

その少ないエネルギーを見境なくアーリーマジョリティやレイトマジョリティにぶつけてしまい、賛同が得られないことで、熱量がすり減って消滅してしまいます。

社内向けのキャズムはどこにあるのか

イノベーター理論では以下の図に示されるように、アーリーアダプターからアーリーマジョリティにかけて、キャズムと呼ばれる深い溝があり、ここを乗り越えるのが困難ということが知られています。

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出典:イノベーター理論とは?5つのタイプと具体例を解説!

これは基本的に C 向けのプロダクトを前提に議論が進んでおり、社内のツールや文化作りに関しては、イノベーターからアーリーアダプターの間にキャズムがあると感じます。
社内に多くの領域のイノベーターが潜在的に存在しているにも関わらず、なぜ小さくもイノベーションが起こらないのか。
ユーザー視点で考えるとわかりやすいのですが、以下のどちらが新しいものを紹介しやすいでしょうか。

- 新しい SNS を使ってみて、友達に使ってみるように紹介する
- 新しい SNS を使ってみて、社内の人に使ってみるように紹介する

損得なく気軽に紹介できる友達と、損得を常に気にするビジネス上の繋がりの人では、紹介に対するハードルの高さが異なるはずです。
したがって、C 向けのサービス(特に無料で開始できる)ではイノベーターからアーリーアダプターは比較的スムーズに移行できますが、社内向けツールではイノベーターからアーリーアダプターへの移行にキャズムが存在します

この点に気が付いていれば、あとはイノベーターとしてアーリーアダプターを巻き込んでいく術を考えていくだけです。

イノベーターがアーリーアダプターを動かすときに必要な3つの要素

今回も私がイノベーターとして、Notion や Discord といった新しいツールの普及にあたり、一番苦労した点がイノベーターからアーリーアダプターへの普及でした。
それでも今回うまくいったことには、イノベーターである私自身にコツがありました。

- 熱狂的なユーザーであり、熱量が高かった(人からの指示ではない)
- 権限的に優位であった
- アーリーマジョリティを巻き込めそうな波及効果の高いアーリーアダプターの人を決めて、使ってもらえるように集中的な声がけや支援を行った

まとめると「熱量」「権限」「選択と集中」、この3つが大切だったと思います。

イノベーターとしての熱量は当然のことですが、これがないと始まりません。
特に、人からの指示でイノベーターとしての高い熱量を確保することは困難であるため、自身のモチベーションに嘘偽りがない状況が重要です。

次に権限です。
もちろん、会長や社長でなければ進められないわけではありません。
ただし、「この人が言うなら試してみたい」と思わせられる信頼を事前に築いておく必要があります。
有名なドラマの「SUITS」で主人公のハーヴィーが言っていた言葉が記憶に残っています。
”最初の1年目にとにかく誰よりも働いていることをアピールしておけば、それ以降に働いていなくても、誰もが働いていることを疑わない“と言っていました。
人を動かすためには、このような事前に多くの人から当然の信頼を得ておくことが重要であり、これが私の考える権限の正体です。
日頃から良い成果を出していない人がイノベーターを急に名乗ろうとしても難しいでしょう。

そして、最後が選択と集中です。
イノベーターの熱量で動かすことができるのはアーリーアダプターが限界であるため、社内でその立ち位置に該当する人を選択し、その人たちだけに集中して布教活動を行います。
イノベーターの持つエネルギーは BBQ の炭に火を付ける着火剤程度だと認識して、火がつきやすい人にだけ熱を渡していきます。
1度伝えただけでは受け取り手側は動かないので、アーリーアダプターとして目をつけた人には会うたびに何度も話し、時間があればハンズオンで使い方を紹介していきました。
食わず嫌いのキャズムを超える壁はハンズオンで実用レベルまでサポートすることであり、ここには高い熱量と時間を惜しみなく注ぎます。

アーリーアダプターへのキャズムを越えれば一気に加速する

肝心のキャズムがあると言われるアーリーマジョリティは、アーリーアダプターの人が普及してくれたおかげで簡単に移行できました。

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キカガクでは手順を綺麗にまとめる文化(というよりも事業)があるため、アーリーアダプターのみなさんが、ハンズオンで教えた内容をさらにブラッシュアップした使い方のドキュメントもでき、導入が一気に加速したのではないかと思います。
アーリーアダプターからアーリーマジョリティへの移行はすぐに進みました。

今回の目標である『頑固者』を動かす最後の一手

アーリーマジョリティまで普及してくると社内の半分近い人が新しいツールへと移行が完了してきます。
食わず嫌いで新しいものへ移行するのが億劫な人でも、この辺りで自分が遅れているのではないかと気になり始めます。
もちろん流れには乗り遅れたくないけれど、最後の後押しがないと始めることができません。

そして、この人たちを動かす最後の一手は『成功した』という宣言を出すことです。
実は最初にアーリーアダプターまで普及することができれば「成功」と書いていました。

人を説得する時にはポジティブとネガティブの2つの方法を私は使い分けています。

ポジティブな方は「このサービスのここが使いやすい!」とサービスの機能面を強調して説得する方で、これで動いてくれる人はアーリーアダプターです。
アーリーマジョリティの説得もポジティブ寄りで「導入実績が100社以上」「上司の◯◯さんも使っている」といった直接的なサービスの内容ではありませんが、信頼によって間接的に使わせたくする方法です。

ネガティブな方は「このサービスを競合もすでに導入していますよ」「逆に導入していないのは時代遅れ」といった動かなければやばいという感情を利用して動いてもらいます。
これがレイトマジョリティ以降の食わず嫌いな人に有効な説得手段です。
本当はポジティブに説得したいところですが、動かすために必要なエネルギーが高い人はこちらでしか動かないため仕方がありません。

そして、レイトマジョリティの人たちを動かすための最後の一手が「みんな使っていてるので、あなたも使っていないと遅れているよ」というネガティブな説得のための「成功宣言」です。
アーリーアダプターやアーリーマジョリティの人の意見を集めて、社内報として発信することで、社内の多くの意見がすでに動いている事実を知っていただき、レイトマジョリティの重い腰を押してあげます。


実はこの記事も、成功宣言を出すことで、まだ社内で Notion や Discord を使っていない人に向けたレイトマジョリティへの普及活動の一環でもありました。

まとめ

DX 推進とまでは言わずとも、新しいツールへの移行であっても、新しいものを導入するには組織の動かし方を正しく理解し、適切な順番で進めていかないとエネルギーが足りなくなることを紹介しました。
あなたがイノベーターとして人を超えて組織を説得していく時には、関わる人を以下の4つに分類し、エネルギー切れを起こさないように普及していくと良いでしょう。

▼イノベーター
   - 領域の視野を広げればどこにでもいる
   - アーリーマジョリティへ普及するには、熱量・権限・選択と集中の3つが重要
▼アーリーアダプター
   - アーリーマジョリティに波及する効果がある人(経営陣やマネージャーなど)
   - 動かすためのエネルギーが比較的低い人
▼アーリーマジョリティ
  - アーリーマジョリティが責任者のチームに付帯する人
▼レイトマジョリティ(+ラガード)
  - 動かすためのエネルギーが比較的高い人
  - 成功している事例を見て大きな流れで動く人

DX 推進よりも狭い話ではありましたが、DX 推進の潜在的な目的が『頑固者を動かすこと』であれば、今回の話との共通項は多いはずです。
ひとりの力では小さな石しか動かすことができませんが、組織の力を借りれば大きな岩をも動かすことが容易いです。
最近ではフリーランスとして自由に働いていくことも注目を集める中で、企業に属して働く醍醐味は同じ目的を持った人たちと組織として戦っていけることです。


だからこそ、組織を動かすことに疲れてしまわず、戦略的に組織を動かしていき、より良い世の中に繋げていってもらえると嬉しいです。

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