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NZ life|北海道にホームシック

ニュージーランド生活34日目。
天気晴れ。気温13度。13度?夏だよね?もう私は何も信じない。

今日は午後からのお仕事がメイン。朝はゆっくり過ごす。

鶏さんが卵を1つも産んでいなかった。そういうこともあるよね、なんて同じ排卵動物であるメスとして共感する。卵を食べるってつまりそういうことなんだと思うと、時々、手が止まる。




今日は母の誕生日。朝起きてすぐ「おめでとう」とメッセージを送りたかったけれど、日本はまだ夜中なので我慢した。

母は毎年、誕生日旅行に出かける。


母が初めて北海道に行ったのは確か2年前。テレビに流れる旅番組を見て「北海道、行ってみたいな」と呟いていた。真冬の北海道なんて、私たち素人には無謀じゃない?とは思ったものの、一面に広がる銀世界の映像を眺めては、うっとりしている。

「行って来なよ」と誕生日プレゼントとして、北海道行きの航空券を買った。

案の定、12月の北海道はどこもかしこも雪景色。むしろ吹雪くほどには天候が荒れたようで、九州という南の地からやってきたお気楽な観光客に、北の大地は冷たく厳しい洗礼を浴びせた。観光向けとは思えない雪道を、旅行カバンひとつで歩き続けたらしい。

帰ってきた母は「吹雪で誰もいなかった!」となぜか興奮し「やっぱり冬はこうでなくっちゃね」と意気込んでいた。無事に生還してくれて何より。


そんな極寒で過酷な北海道旅行をひどく気に入ったようで、今年は自分で北海道行きの誕生日旅行を計画していたそう。とある地を旅行中だと、数日前に写真が届いた。どこもかしこも雪だらけで、街の明かりがキラキラと濡れて輝いている。


いいなあ、という言葉が口をついて出た。

母が旅行している場所は、私がまさに去年の冬まで住んでいた場所。去年の初夏から冬にかけて、北海道のとある場所に身を置いていた。

いいなあ、もう一度行きたいなあ。

朝起きると、真っ白な世界に包まれる北の大地。夜中にいつの間にか訪れていた雪が、静かな気配を漂わせ、窓の外で待ち構えている。カーテンを開けると、一瞬で銀世界が広がる。眩しくって、目を細める。

誰も踏んでいない真っ白な雪原を、サクサクと心地よい音を立て、自分だけの足跡をつけてゆく。

凍てつく指先。火照り出すほっぺた。吐く息は白く、まつ毛に落ちる太陽の光は、なめらかな小麦色に輝く。まばゆくて、暖かい、冬の光。


そういうものの全てが、一瞬で思い出される。いいな、今すぐ、行きたい。

昨日「ホームシック」について書いたけれど、間違いなく今、ホームシックになっている。凛とした空気の匂いや、嘘ひとつない静寂さ。そういう冬の気配全てにいま、恋焦がれている。懐郷病。私の故郷に、たった数ヶ月しか身を置いていない「かりそめのふるさと」に帰りたい。


冬というものにどうしようもなく惹きつけられてしまう私と、過酷で極寒の大地を全身で楽しむ母。

誰かにとって心惹かれる場所が「ふるさと」なんだとしたら、私たちのふるさとはきっと、雪景色が広がる北の大地なんだろう。


「私たちやっぱり親子だなあ」と飛び出した故郷とは別のふるさとを考えながら、母の誕生日が良いものになることをひたすら願う。

お母さん、お誕生日おめでとう。

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