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たぶん、そっくりな人。

この記事は、私が札幌市内で、
ある男性から声をかけられることから始まる。

……

「おい、こんなとこで何やってんだよ」

「え、あ、歩いてたけど…」

「久しぶりだから、今度話すべ」

「え、そう?」

「だって何年ぶりだ?」

「…」

「…」

「んー、た、多分…本当に多分なんだけど、これ…もしかすると、しょ、初対面じゃないかなぁ〜って思っ…」

「え!? あ! ご、ごめんなさい!
 ごめんなさい! ほんとごめんなさい!」

たぶん、私にそっくりな人がいる。


人違いだった。比較的あたたかな気温の日、最高気温が3℃の日、っていうか昨日。いつものように札幌市内を1人でテクテク歩いていると、同い年くらいの男性から話しかけられた。

めちゃくちゃニコニコしてた。水たまりで転んでビショビショになった友だちを見て笑うくらいニコニコしてた。だから私もニコニコした。


そしたら話しかけられた。


「おい、こんなとこで何やってんだよ」



なーにやってるも、かにやってるもないよなぁ、と思って「え、あ、歩いてたけど」と答えた。だって、歩いてたから。ウソはついてない。かつ、話しかけてきた男性があまりにもニコニコして嬉しそうだったから、こちらもニコニコしちゃった。




ただ、ぶっちゃけ、
話しかけられた3秒後に思った。



あ、これは人違いっぽいな、そっくりな人が多分いるんだな、何かおもしろそうな匂いがするな、乗っかってみようかな。


「久しぶりだから、今度話すべ」


こ、今度話すの?

どうしようかなぁ。


「え、そう?」と答える。


「だって何年ぶりだ?」


な、何年ぶりなんだろ。

いや、たぶん、本当に多分だけど、私はこの人と会ったことがない。マスクで顔の下半分が隠れているとはいえ、この人とはさすがに会ったことはない。まさに思考回路はショート寸前。


「んー、た、多分…本当に多分なんですけど、
 これ、初対面じゃないかなぁ〜って思っ…」

と言った瞬間、その人の顔からは笑顔が取れて、うろたえていた。で、足早にその場を去っていった。私は仕事に戻った。



少しして思った。


久しぶりに会ったのに、あんなにニコニコして「おい、こんなとこで何やってんだよ」と話しかけられるってことは、よっぽど良い友人関係なんだろうなぁ。


たぶん、この街にそっくりさんがいるんだなぁ。


ど、どんな人なのかなぁ。


今すぐ会いたいよ。


これがなるほど、ミラクルロマンス。


〈あとがき〉
どうしてそんなにおもしろい日常を送ってるんですか? と複数の方から聞かれたことがあります。その度に「日常を切り取ってるだけです」って答えていたのですが、このムーンライト伝説みたいな出来事があってなんか違う気がしてきました。なんでだろう。外にいるからなのかなぁ。最後までありがとうございました。

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