マガジンのカバー画像

季語哀楽

122
季語をテーマにした投稿まとめ。 365日が目標。
運営しているクリエイター

#SF

鳥曇

鳥曇

3月〇日 花曇(はなぐもり)
風は生暖かく、空は霞んで曇りがち。
太陽には暈(かさ)がかかっていた。
明日も広く桜の花びらが降るでしょう。

3月×日 鳥曇(とりぐもり)
渡り鳥が北へ帰っていくのが見えた。
波は穏やか。雲居に紛う。
あっという間に消えちゃって、曇り空と僕だけが残される。

3月△日 風曇(かぜぐもり)
ふううん、じゃないよ。かぜぐもり。
僕が付けた造語なので悪しからず。
換気扇が

もっとみる
流氷原

流氷原

”流れる”ように、”表現”が、”浮かぶ”。

小説家パッケージプラン。
俗世間から開放され、
静かな環境は執筆に最適です。

大手旅行会社が、北海道の流氷原にて新鋭のポッドを宿にした新プランを打ち出した。電気は太陽光で賄い、物資はドローンを使ってのやり取りが可能。一面の氷の世界を散歩すれば、アザラシなどの野生動物に出会えたり、室内からでもフィッシングを楽しんだり。
滞在が短いと割高だが、長く居れば

もっとみる
初午

初午

2X21年、日本に地球外生命体が飛来して久しい。
すらりとした体躯に、狐のように釣りあがった細い両眼。突然やってきた彼らは、高い知能と未知の奇術を有していた。
地域の適度な監視拠点として、彼らは各地の神社をサーバーとして陣取り、そこから雲(クラウド)へ接続している。彼らがこの国を統治して以来、僕たち日本人は下等生物として、馬車馬の如く働かされていた。

ハツウマの日。
僕たちは、儀式の様に神社へ向

もっとみる