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奇縁堂だより33 【本の紹介:直木賞④】

 直木賞受賞作の作品を紹介する記事も今回で4回目になりました。(前回までの記事はこちらから→「奇縁堂だより29」「奇縁堂だより30」「奇縁堂だより32
)
 
今回は第142回(2009年下半期)から第146回(2011下半期)の受賞作5作品を紹介します。
 今回取り上げる作品も前回取り上げた作品と同様に,いくつか映画化やドラマ化されています。
 原作を読んでから映画を観てもよし!映画を見てから原作を読んでもよし!といったように,どちらが先でも後でも両方とも楽しめる作品ばかりです!!

紹介作品一覧

○『廃墟に乞う』
○『小さいおうち』
○『下町ロケット』
○『月と蟹』
○『蜩の記』

作品紹介

○『廃墟に乞う』 佐々木譲 (文庫) ¥250(税込)
 第142回受賞作
 北海道警察捜査一課の刑事・仙道孝司。「ある事件」の影響で現在は休職中の身である。温泉で療養していた仙道の元にかつての上司から連絡が入る。それは千葉県の船橋で起きた殺人事件が起きたということ。そして,その手口が仙道たちが捜査した13年前に札幌で起きた殺人事件と同じだということ。
 13年前の事件の犯人が,今回の事件の容疑者として再び特定される。そんな中仙道の元に容疑者から連絡が入る。
 
 北海道の各地を舞台とした,表題作を含めた6作からなる連作短編小説です。
どんな事件にも理由がある。仙道という刑事を通して事件の背後ある理由を真摯に見つめる作品です。


○『小さいおうち』 中島京子 (文庫) ¥250 (税込)
 第143回受賞作
 時代は昭和初期,尋常小学校を卒業したタキは女中奉公のために東京に出てくる。そしてタキは,赤い屋根が特徴的な洋風モダンな家に住む平井家で働くことになる。タキは平井家で働くうちに,若くて美しい奥様・時子を慕うようになる。
 平井家もそこで働くタキの仕事もうまくいっていた。しかし,平井家とタキの生活に怪しげな雰囲気が漂いだす。それは戦争と,あろうことか奥様の誰にも言えない"恋愛"が原因だった。
 
 物語は,晩年のタキがノートに自らの記憶を綴った形で進行していく。ノートが終われば物語も終わりではなかった。その後,大甥の健太がタキの綴ったノートを読んだことで,物語が動き出す。

 本作は2014年に映画化され,山田洋次が監督を務め,松たか子や黒木華,妻夫木聡などが出演しています。


○『月と蟹』 道尾秀介 (文庫) ¥250 (税込)
 第144回受賞作
 鎌倉に住む小学生の慎一と春也。二人はヤドカリを神様に見立て,願い事をする「ヤドカミ様」というごっこ遊びを思いつく。
 初めは100円が欲しいなどといった子どもらしいシンプルなことを願っていた。ある時,鳴海という少女も「ヤドカミ様」に参加する様になる。子どもらしい願いから,段々と願いが"切実な祈り"になっていき,やがてそれが自分達に向かうことになる。
 そして,願いが祈りに変わるのに呼応する様に,3人の関係にも徐々に変化が訪れる。
 
 子どもが大人になる過程で必ず通る「子ども時代の終わり」。その「時」を丁寧に描いた作品です。


○『下町ロケット』 池井戸潤 (文庫) ¥300 (税込)
 第145回受賞作
 研究者の道を諦め,実家の町工場・佃製作所を継いだ佃航平。町工場の経営はうまく行っていた。しかしある時,競合する大手メーカーから特許侵害で訴えられてしまう。この影響で取引先を失ってしまい,佃製作所は窮地に陥ることになる。
 そんな中,国産ロケットを開発している大企業の帝国重工から,佃製作所が持つある部品の特許を買い取りたいと連絡がある。特許を売却すれば佃製作所は窮地を脱出できる。ただ,その特許には佃の夢が詰まっていた。
 果たして佃の決断は!?

 技術者としての誇りと矜持を持つ大人たち。そんな彼らの「ものづくりに」夢をかける姿と,それを叶えるために全力で取り組む姿を熱く描いたエンタメ小説です!


○『蜩の記』 葉室麟 (文庫) ¥250 (税込)
 第146回受賞作
 豊後羽根藩の檀野庄三郎は,些細なことをきっかけに城内で不始末を犯してしまう。上役の機転により切腹は免れるが,家老からそれと引き換えに領内の向山村に幽閉中である元郡奉行の戸田秋谷の元へ行くことを命じられる。
 秋谷は7年前,前藩主の側室と密通していると疑われた。そして,その廉で家譜の編纂と十年後の切腹を命じられ,その間向山村に幽閉されることになったのである。
 庄三郎が秋谷のもとに遣わされたには,秋谷の監視と編纂補助,そして7年前の密通事件の真相を調べることだった。

 強い信念を持ち,覚悟を決めた人の"静かな強さ"が丁寧に描かれている作品です。
 自分が死ぬ"時"を知っている秋谷。それでも真摯に生きる姿には心打たれます。強い信念を持ち,覚悟を決めた人の"静かな強さ"が丁寧に描かれています。また秋谷の命の期限を知っていながらも,彼に寄り添いながら生きる家族の姿にも心が打たれます。

戸田秋谷を役所広司,檀野庄三郎を岡田准一が演じ,2014年に映画化されています。


ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回も直木賞受賞作品の紹介をしていきます。

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