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奇縁堂だより 30【本の紹介 : 直木賞②】

 昨日から5月に入ったということもあり,スギ花粉もだいぶ少なくなりましたね。花粉症の私にとって一年で一番大変な2ヶ月がようやく過ぎ一安心です。GWを花粉のことを気にせず過ごせると思うと気が軽いです!

 さて,前回に続いて今回の「奇縁堂だより」も直木賞受賞作の紹介をしていきます。
 今回は102回(1989年下半期)から122回(1999年下半期)の間に受賞した作品のうち,在庫のある5作品を紹介いたします。

 今回紹介する作品から時代は"平成"に入ります。(正確には前回の記事で紹介した第101回から"平成"時代です。)これまでの"昭和"の作品と読み比べ,取り扱うテーマに変化があったのかどうかを読み比べるのも面白いかと思います。

紹介作品一覧

○『小伝抄』
○『佃島ふたり書房』
○『山妣』
○『柔らかな頬』
○『長崎ぶらぶら節』

作品紹介

○『小伝抄』 星川清司 四六判 ¥660 (税込)
 第102回受賞作
 竹本小伝は,世間に彼女のことを知らない人はいないというほどの浄瑠璃語りである。また彼女は,男狂いということでも世間に知られていた。
 そんな一癖ありそうな女に恋をしたのが,醜男の船頭である。船頭の想いは叶わぬ恋なのか?江戸を舞台とした時代ものの恋愛小説です。


○『佃島ふたり書房』 出久根達郎 四六判 ¥660 (税込)
 第108回受賞作
 梶田郡司と加藤六司は,奉公先の古書店で知り合う。そんな二人は生年月日が全く同じということもあり,親しくなり友情を育んでいく。そして二人は,共に一人の女性に惹かれていく。
 明治末から高度成長で大変貌をとげる昭和39年(東京五輪開催の年)の東京・下町の佃島とその佃島にある古書店「ふたり書房」を舞台として,二人の男の友情と一人の女性をめぐる愛の相克を描いた長篇です。


○『山妣』 坂東眞砂子 四六判 ¥550 (税込)
 
第116回受賞作
 ある一人の男の登場によって,越後の静かな山村に嵐が巻き起こる!
 時は明治末期,越後の山村に東京から旅芸人の男がやってくる。やがて男は村の若い夫婦と三角関係になる。そしてその関係が,村に伝わる伝説・"山妣"の姿を浮かび上がらせる。
 徐々に明らかになる"山妣"の伝説,そして熊狩の日,雪を赤く染める惨劇が村を襲う!
男女の愛憎劇を描いたサスペンスでもあり,ホラーでもある長編小説です。


○『柔らかな頬』 桐野夏生 四六判 ¥250 (税込)
 第121回受賞作
 北海道の別荘地で女児が行方不明になる事件が発生する。大規模な捜索をするものの女児は見つからなかった。
 娘がいなくなったのはなぜなのか。これは母親に対する罰なのか。母親がそう思うのには理由があった。母親は不倫をしていたのだ。
 時が流れて4年後,行方不明者を探すテレビ番組に出たところ,元刑事から連絡があり,母親はその元刑事とともに娘を探すことになる。

 ミステリー小説のようでいて,ミステリー小説ではない。ミステリー小説の形をとった,人間が感じる孤独と自由への渇望を描いた作品です。


○『長崎ぶらぶら節』 なかにし礼 四六判 ¥550 (税込)
 
第122回受賞作
 長崎の丸山遊里にいた愛八という芸者が,長崎学の確立を目指す研究者・古賀に本当の恋をする。
 しかし,古賀は志半ばにして破産してしまう。この古賀も破産をきっかけとして,二人は長崎に残る古い歌を探し始める。そして,忘れられた名曲と呼ばれる「長崎ぶらぶら節」に出会う。

 古賀に対してだけでなく,お雪をはじめ多くの人に対して無償の愛を捧げる芸者愛八の生き様が見事に描かれた作品です。


 ここまでお読みいただきありがとうございました。
 読んでみたいと思える作品はあったでしょうか?
 直木賞を受賞しているだけあって,どの作品も完成度が高く,楽しめること間違いなしです!
 
 次回の「奇縁堂だより」も直木賞受賞作品の紹介をしていきます。

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