きばとり 紅

雑学家を自称したりする北海道在住。アマチュア蔵書家、にわかリベラリスト(教養主義者)貧…

きばとり 紅

雑学家を自称したりする北海道在住。アマチュア蔵書家、にわかリベラリスト(教養主義者)貧困層だが本ばっかり読んでいるらしい。将来は未定。

最近の記事

「ふたりソロキャンプ」を読む。

「ゆるキャン△」前後から膾炙した『屋外活動モノ』とも言うべき漫画ジャンルがある。 実際はさらにそれ以前からあるが(「ヤマノムスメ」とかね)、あまりポップなジャンルとは言えなかった。 屋外、自然を描くとなると写実的な画力が求められ、作風もそっちに引っ張られるんじゃなかろうか。 あるいは実録系……こちらもあまり絵的に華やかにはなりにくい。 そう言う意味では出端祐大 作「ふたりソロキャンプ」(講談社)はなかなかの按排である。 物語はソロキャンプを強く指向する中年に差し掛かった

    • 暴君のステロタイプの形成過程として『イヴァン雷帝』を読む。

      このnoteは私信やらなんやらが現状一切ない、殆ど無い記事で構成されているが、この数日それだけじゃ味気ないかなぁ、などと思い、何か他に書きたくなる企画がないか考えていた。 が、今のところ、どうも他に思い当たるものがない。私は余りプライベート色の強い話をネットではしない。まぁTwitterを見ていれば、概ね伝わるだろう。その程度で満足している。 いっそ突き抜けて蔵書紹介記事ばっかり何十と書いてみようか、とだんだん開き直ってきた次第。どうか記事を読む方の興味を満たせますように

      • 『プレ・ライトノベル』としてのSFを考える。

        「ライトノベルのど真ん中」はどこなのか?またラノベの要素はどこから来たのか https://togetter.com/li/1580100 ライトノベルを定義するというのは幽霊の質量を計算するようなあやふやさがあるが、それ故にいろんな人が挑戦したりする。 まぁ結局「貴女の思うそれがライトノベルです」に収束する。せざるを得ない。 ライトノベルはジャンルではない、スタイルである。……と、私は大学時代、現代文に関する教養学科カリキュラムで講師に言われたことがある。 それはそ

        • 競走馬の列伝『名馬を読む』『2』を語る。

          そろそろ中央競馬では『三歳未勝利』クラスのレースが無くなる頃になってきた。 競馬を良く知らない方に説明すると、中央競馬に登録して出走するサラブレッドは、二歳の夏にはレースにデビューし『新馬戦』あるいは『メイクデビュー』という競争に出られる。そこで勝てばさらに上のランクのレースに出られるが、負けた場合『未勝利』というクラスに移される。 『未勝利』クラスのレースには制限がある。8月いっぱいでもってこのクラスのレースはなくなってしまうのだ。 それまでにこのクラスで勝つことが出来

        「ふたりソロキャンプ」を読む。

          シティーハンター「シリーズ」として『伊集院隼人氏の平穏ならぬ日常』を読む。

          昨年十数年ぶりのアニメ作品「新宿プライベートアイズ」やフランスで制作された実写映画「史上最香のミッション」などでにわかに注目を浴びた北条司によるアクション漫画『シティーハンター』 私は昔日本テレビ系列で制作、放送されたテレビスペシャルシリーズで当作を見憶えたものである。その後もCS系で見たことがあるような気がするが確証はない。 とはいえ、原作が往時華やかなる週刊少年ジャンプで連載された名作であることは言うを待たない。 ギャグ、アクション、ロマンス、お色気と硬軟取り揃え、ア

          シティーハンター「シリーズ」として『伊集院隼人氏の平穏ならぬ日常』を読む。

          空想社会科学読本として『科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日誌』を読む

          柳田理科雄氏の『空想科学読本』というシリーズがある。一時期私もよく読んだものだ。 漫画アニメ等の創作物に起こる現象を現代科学を出来るだけ厳密に適用して考えるものだが、著者の科学観や根本的な科学的論理能力の限界、あるいは単なる誌面の都合などにより、振り返ってみると結構くだらない結論を導き出したりしていた。 ただ、『創作物の現象を科学的に考える』というアプローチは多分以後の創作物に様々な影響を与えたんじゃないかな、とは思う。 少なくとも、私はそのような一人だろう。 KAKER

          空想社会科学読本として『科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日誌』を読む

          ハインライン『夏への扉』を読む。

          俗に「三大SF作家」というのがある。 アイザック・アシモフ、アーサー・C・クラーク、ロバート・A・ハインラインの三人をそう呼ぶ。 この中でアシモフとクラークはどちらも思弁的というか、とても「科学的に凝った」SFを書かれていた。 特にクラークは「幼年期の終り」「2001年宇宙の旅」などを見ると、SF的なガジェット以上にガジェットで発生する哲学的なテーマ性に寄った話の方が目立つ。 それ自体は読んでも有意義だし色々と得るものがあるのだが、正直今のエンターテイメントとして考えると

          ハインライン『夏への扉』を読む。

          『プレ・ライトノベル』としてのファンタジーを考える。

          ファンタジーの古典を読もう、と考える。 そこで大上段に『指輪物語』に挑戦するとけっこう息切れする可能性が高いことを指摘したい。 何せあれは映画版でさえ長大なものになっているので気軽に突入すると怪我をする。 そこで私はロバート・E・ハワード著『英雄コナン』シリーズをお勧めしたい。 有史以前の超古代、ハイボリア時代の地球を舞台に蛮族の戦士コナンの活躍を描いた本作は俗に『ヒロイックファンタジーの嚆矢』と言われる。 そこは剣と魔法の世界であり、邪悪な魔法使い、暴君が率いる帝国とそ

          『プレ・ライトノベル』としてのファンタジーを考える。

          『機関銃の社会史』を読む

          その昔ゲーム情報サイト「4Gamer.net」紙上で連載された「ゲーマーのための読書案内」というコーナーは色々なジャンルの本を読み始めるのに大変便利であった。 私もそんな新しい分野の本に乗り込みたい人達に向けた記事としてnoteを充実させたいなぁ。 というわけで今回は『機関銃の社会史』を紹介する。 平凡社から発行されているジョン・エリス著 越智道雄訳の本書は歴史上における機関銃……つまり人間の力ではなく何らかの外部から得られた機械的な動力によって弾丸の装填・発射・俳莢を行

          『機関銃の社会史』を読む

          『ばんえい競馬今昔物語』について語る

          馬産地の生まれながら「ウマ娘プリティダービー」に触れるまで競馬などやったことなかった私だが、いまではすっかり楽しんでいる もっと競馬の事について知りたくなった私は、色々と資料を買い集めることになった。 そして世の中の書店にある「競馬」に括られた棚に入っている本というのは、まぁ七割方こういうものになる。 『この方法で予想すれば、馬券は当たる』 まぁ、当然である。あれはギャンブルなのだから。 キャラコンテンツとして消費する奴なんざごくごく一部である。 だが残り三割こそ、ただギ

          『ばんえい競馬今昔物語』について語る