見出し画像

シティーハンター「シリーズ」として『伊集院隼人氏の平穏ならぬ日常』を読む。

昨年十数年ぶりのアニメ作品「新宿プライベートアイズ」やフランスで制作された実写映画「史上最香のミッション」などでにわかに注目を浴びた北条司によるアクション漫画『シティーハンター』

私は昔日本テレビ系列で制作、放送されたテレビスペシャルシリーズで当作を見憶えたものである。その後もCS系で見たことがあるような気がするが確証はない。

とはいえ、原作が往時華やかなる週刊少年ジャンプで連載された名作であることは言うを待たない。
ギャグ、アクション、ロマンス、お色気と硬軟取り揃え、アニメ化に際しては当時既に円熟の期に達していた神谷明氏を主役に据えたおかげでハードシリアスからコメディブルまでまったく淀みなく面白い。

なお後に神谷氏は当時、やたらジャンプ漫画作品の主演を務める時期が続いたため集英社とグルになってるんじゃないかと噂された、と冗談めかして語られている。

さて、原作に当たる漫画作品が91年に終了し、その後時を経て2001年に『エンジェルハート』という後継作品を発表された。

さらに2005年にアニメ化、2015年にはテレビドラマ化されその作品イメージの奥行きを広げることとなった。特にテレビドラマ化は主演の上川隆也氏の熱演の甲斐あって、原作ファンの実写化に対する不安を大いに払拭することとなったことで評価された。

というのも、シティーハンターは93年に実写映画化されているのであるが、ジャッキー・チェンを主演に据えた当作の奇怪な構成は当時のファンを困惑させたものである。(有名なのは作中でジャッキーがストリートファイターのコスプレをしながら格闘をするシーンが存在する、など)

前置きが長くなった。
シティハンターは「シリーズ」として作品世界を広げていったお陰で、現在では外伝(スピンオフ)が幾つか制作されている。

えすとえむ作『CITYHUNTER外伝 伊集院隼人氏の平穏ならぬ日常』はコミックタタン誌で連載されている「海坊主」こと伊集院隼人の日常を追った作品だ。

原作中盤以後、喫茶店「キャッツアイ」を美樹と共に経営するようになる彼が、喫茶店のマスターとして来客する人物の悩みを解決する様が描かれる。

原作当時であれば2mになんなんとするスキンヘッド&サングラスの魁偉がカウンターで客を待っている喫茶店、などというのは既に一種のギャグとして使われていた設定であるが、本作では『SNS映えする容姿で腕のいい店主』として一般人に受け取られている節があり、時代の移り変わりを感じさせる。

時代の代わりぶりは各所に見受けられ、例えば『バブル時代を振り返る催しをしたい』という学生の相談を受ける回があったり、そもそも海坊主のデザインが微妙に変化していたり(顎鬚を生やし始めている)と、時間的なパラレル世界として描写されている。

『平穏ならぬ日常』と題されているが、そこにあるのは原作のハードな空気から脱し、一市民に寄り沿い生活する海坊主の穏やかな日々である。
巨漢のマスターが女子校生らの頼みからタピオカ作りを始めたり、子供の世話をしたりする様は微笑ましい。

なお、この作品ではある重要な設定が改めて描写されている。それは『新宿プライベートアイズ』で初出とされたもので、登場時期を考えれば当作での描写は前後するか、やや早いものになる。

ここでは敢えて具体的に取り上げないが、原作を読んでいると違和感なく受け取れるものの、後になって「あれ?そうだったっけ?」と首を傾げながら、過去作を拾い始めることになる。

これはなかなかうまい宣伝ではないか、と思うのだが、詳しくは本作と映画を見て諸氏にも感じて欲しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?