見出し画像

『プレ・ライトノベル』としてのSFを考える。

「ライトノベルのど真ん中」はどこなのか?またラノベの要素はどこから来たのか
https://togetter.com/li/1580100

ライトノベルを定義するというのは幽霊の質量を計算するようなあやふやさがあるが、それ故にいろんな人が挑戦したりする。

まぁ結局「貴女の思うそれがライトノベルです」に収束する。せざるを得ない。

ライトノベルはジャンルではない、スタイルである。……と、私は大学時代、現代文に関する教養学科カリキュラムで講師に言われたことがある。

それはそうだな、と思う。これほど実体の定かならぬ言葉に括られるグループもなかろう。

中心がない、真ん中がない。
だけど、色々な要素を重ねていったことで出来る一番濃い色の領域が恐らく『ライトノベルの核心』になるだろう。

私は以前、『プレ・ライトノベル』としてファンタジー作品を読むことを話した。
https://note.com/kibatori2646/n/nb0be00ce5983

『プレ・ライトノベル』に上げられる他のジャンルにSFがある。
SFは既に当時(それを“いつか”にするのかさえ異論は多数ある)少年少女向きのサブジャンルを備えていた。
主に往年の名作を部分的に書き直したり抄訳したもので、今でも公共図書館のキッズ向きコーナーで色褪せた表紙を並べているから手に取ってみると良い。

だが、それらがライトノベル接続されるのか、と言われるとちょっと厳しい。
実のところライトノベルに接続される『プレ・ライトノベルのSF』は多くの者が一致した意見を取る。

一つは意外なところだが、『朝日ソノラマ文庫版機動戦士ガンダム』である。
これは富野監督が手ずから執筆したもので、後年続いていくガンダムシリーズを念頭に置くとかなり特異な位置づけがされる作品だ。

しかしこれ単体で読めば、ライトノベルに接続される、ということがそれとなく理解できる。
何せ現在でも『ゲーム/アニメのライトノベル化(ノベライズ)』はライトノベルに包括されるサブジャンルだ。

少年少女から少し上、ティーン・エイジャーのトレンドカルチャーに接触する作品を文字化して包括するライトノベルの特性は当初から備えていた、と言える。

もう一つは笹本祐一氏の『妖精作戦』である。
本来あった少年少女向きのジュブナイルSFに、さらに+αされた作品といえる。

ひと夏のエピソード。謎の組織、超能力とUFO、突然やってくるヒロインと、遮二無二頑張る少年。

特に「遮二無二頑張る少年」は、現実の延長上に接続できる平凡な、だが熱情ある行動によって、作中に起きる超現象のシチュエーション(現れた少女が謎の組織に狙われている!謎の組織を追って宇宙に!)に入り込んでいくのだ。

俗な言い方だが、それらは「平凡なキミとボク」の壁一枚先に、想像しない何かがあるかもしれない……という、想像を与える。

少年少女の先に行った者たち……それは或る種の保護から逸脱したということ……に、自分たちの文学を与えたのかもしれない。

そうして与えらた文学も、もう少しで半世紀の歴史を持つ。
いい加減、「ライトノベルとは○○」という話にも終止符が打たれていいと思うのだが……

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?