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空想社会科学読本として『科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日誌』を読む

柳田理科雄氏の『空想科学読本』というシリーズがある。一時期私もよく読んだものだ。
漫画アニメ等の創作物に起こる現象を現代科学を出来るだけ厳密に適用して考えるものだが、著者の科学観や根本的な科学的論理能力の限界、あるいは単なる誌面の都合などにより、振り返ってみると結構くだらない結論を導き出したりしていた。

ただ、『創作物の現象を科学的に考える』というアプローチは多分以後の創作物に様々な影響を与えたんじゃないかな、とは思う。
少なくとも、私はそのような一人だろう。

KAKERU著『科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日誌』は秋田書店の電子コミックサイト「マンガクロス」で連載中の作品だ。
二人の主人公がある時突如として異世界に転移し、各々別地点からそれぞれの思惑に従い、異世界をサヴァイブするが、その過程で様々な形態のデミ・ヒューマン(作中の語ならクリーチャー娘)が登場する。これらの多くは中々科学的なこじつけが上手く出来ている。

例えば、第一巻冒頭で初めに登場するクリーチャー娘『アラクネ』は、伝説上では下半身がクモの美女である。
が、作中においては「三つ子の双生児結合から進化した人類種の亜種」と推定されている。なので一見、クモのように見える下半身だが、触ると骨や筋肉の感触があり、足の先が蹄のようになっている。

これらのように『科学的にもっともらしい理由』が付与されて作者にリビルトされたファンタジー世界の生態が散りばめられた作品だが、この作品の核はこれではない。断言できる。

なぜなら、作者はファンタジー生物がいることによって変性した社会を描くからである。
例えば先のアラクネだが、同種族内で下半身がクモ状になるのは女性のみなので、集落内で力作業は女性が行う女系社会を作っている。
そしてそのような脅威に囲まれて暮らす、現実の人類種のような一般人の社会さえも描写され、その中で主人公の一人は孤立するはめになるなど、病んだ描写も多い。

描写で付け加えれば、主人公と各クリーチャー娘ヒロインとの濡れ場がてらいなく挿入されるので、あらかじめ覚悟しておくことをお勧めする。
二人の主人公のうち一方の目的は『クリーチャー娘によるハーレムをつくること』なのだ。
このあたりはある種伝統的な異世界転移による人生リビルドストーリーと言えなくもない。

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