そうかもしれない
真夏と真冬は息をしているだけでえらいと思う。残暑厳しい折、いかがお過ごしですか?
気づいたら八月が終わる。だんだんと夏のキラキラした魔法が解けてきて、身体的な疲れがでてきて、自分労わるモードに移行するフェーズに入っているかも。温泉とか行きたいね。そんな感じの夏日記2023⑤です。
月曜日(晴)
朝。抜けるような青空でいい天気。
ほんの少し、空が高くなった気がする。あちこちで入道雲がわいている。
空の写真をつい撮ってしまう。この時季、夏から秋に変わる直前の雲の感じが好きだ。だけど、どこから撮っても空が狭くて、ベストショットはまだ撮れていない。
火曜日(雨のち曇り)
いつもの店に飲みに行く。いつものご近所さんたちが来て盛り上がる。ある人は町内のゴミ捨ての話を、ある人は虫の話を、ある人は料理の話をしていた。共通の話題はほとんどなくて、みんながみんな言いたいことを言っている。解決策も求めていないし、リアクションすらたいして期待していない。気の許せる人とどうでもいい話をする、という行為そのものに価値があるように思う。
水曜日(晴れのち雨)
仕事が終わったらシャツを脱いで、袖のない服で帰る。パンプスを脱いでスポサンを履き、ゴツいアクセサリーをつけて口紅を塗り、マスクをとってメガネをかける。最近のルーティン。
これがわたしにとってすごい大事で、メリットが2つある。
まずは、誰もわたしに気がつかなくなること。
印象が違いすぎて、認識されないらしい。透明になれる。けっこう楽しい。
それから、気持ちが切り替わること。
もともと切替が苦手なタイプである。見た目を変えることで職場にいるわたしとそれ以外のわたしを完全に切り離すことができて、何が起きても何を言われても他人事でいられる。そんなに嫌なことはほとんどないんだけど。
仕事をしているわたしは、地味で真面目で程よく気遣いが出来て優しい。まあそんな人間存在しないけどな、と心の底で思いながら、演じるつもりで楽しんでいる。
木曜日(晴れ)
休日。飲み友達ノキちゃんと飲みに行く月一の会。安い居酒屋を昼からハシゴする。
最近見てるドラマ「グッドドクター」に出てくる自閉症の主人公が共通の知人そのもので見ていられない、という話をした。ドラマだからいい感じに着地するようストーリーが進む。その人を思い出してイライラしてしまい、見れなくなってしまった。
ノキちゃんの方は最近家族を亡くして、悲しめずほっとしている。それどころか死んでなお、怒りの感情がわいてきてしまう、という話をしていた。
弱い人には優しくするべきとか、親しい人が死んだら悲しむべきとか。
わたしたちは、大人になる過程で教育されてきた「こういうときはこうあるべき」な感情をうまく持てずにいる。それが自分の感情なんだからしょうがないという諦めと開き直りの一方で、素直できれいな人間でいられないことに、少しの罪悪感がある。
こんな話ができる人がいてよかった、と言われた。そう言ってくれてうれしい。
金曜日(晴れのち雲)
夕方帰宅。風がちょっと涼しいかも?と思って窓を開けていたら、近所で祭りをやっているらしくお囃子の音が聞こえた。和太鼓と笛の音。お囃子が終わると、盆踊りの音楽が始まった。
見えないけど、情景が浮かんできて、なんだか得した気分だった。
土曜日(晴)
帰省。なんとなく新幹線ではなく鈍行電車を選んで、2時間半。進むに連れて聞こえる地名や景色が変わってきて、ああ帰ってきたなという気持ちになる。電車の雑なアナウンスとか、途中で海や山が見えることとか。
今回の帰省はちょっと憂鬱。鈍行電車は時間がかかるけど、ゆっくり自分を慣らしている感じがする。
夜。コンビニへ行こうとしたら弟がついてきた。
タバコを吸いながら夜道を歩く。昔は同じ家で同じものを食べていたのに、今はそれぞれ全く違う生活をしている。もう、お互いについて知らないことの方が多い。並んで歩いたりとか、じっくり会話することすら数年ぶりだった。彼は彼なりにこの期間色々あったようだけど、すっかり丸くなったらしい。それを聞けただけでも、憂鬱だったけど帰ってきてよかったかな、と思った。
日曜日(曇時々雨)
日曜日の朝。高速バスに乗って自宅へ向かう。
運転手が接客も車内アナウンスもするんだけど、声のトーンとか気づかいの加減がちょうど良くて快適だった。
高速道路は途中で山の中を通る。晴天。景色がひらけて、標高が高くなって、雲が近くなる。きれい。ああこれが見たかったやつだ、と思い写真を撮るが、うまく写らない。どうやら空が狭いのではなくて、カメラの画角が足りなかったようだ。
気が済んだので、雲を見ながらぼんやりする。景色が流れていくのを見ていたら、ふと、イサカさんに会いたいとおもった。イサカさんは先生で、心理学とか脳科学に詳しい。理系で合理主義な話し方は、理路整然としていて、清々しい。今、イサカさんに会って話したら、このぼんやりした自分の気持ちを言語化するためのヒントをもらえそうな気がする。
落ちてきそうなぼってりした雲が何層にも重なって、夏の正午の太陽に照らされてキラキラしている。エアコンのきいた車内から眺めると、至福。
ずっと窓の外を眺めている私を、向かいの席の男の子が不思議そうに見ていた。そうだよね。変だよね。
昔、弟に聞かれたことがある。どうしておまえはそんなに他人に気をつかうんだ?そんなんで疲れないのか、どうやって回復するのか?と。
夏の空と山の緑と白い雲。あとは例えば、春の田んぼを吹き抜ける風とか、雨が上がった朝の森とか。わたしの心を安らかにしてくれるものは、そういう景色の中にしか無いように思う。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
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