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ルイス・キャロルの「アリス」考察

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『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』および関連作品の考察。 作中のパズルを解く記事が中心です。
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#なぞなぞ

『鏡の国のアリス』もう1つのカラスの謎々

『鏡の国のアリス』もう1つのカラスの謎々

(前回の続き)

『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』に姉妹編のパズルがいくつかあることは過去記事で述べましたが、『不思議の国のアリス』第7章で出題される「カラスと書き物机の謎々」に対応するもう1つの「カラスの謎々」が『鏡の国のアリス』第4章に隠れていたことに気付きました。



『鏡の国のアリス』第4章でアリスと双子兄弟の前に現れる巨大な鳥。

トゥイードルダムは「カラスだ!」と叫んでい

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マザーグースの忘れられた謎々⑩

マザーグースの忘れられた謎々⑩

今回は『トゥイードルダムとトゥイードルディー』についての私説です。

(原詩)
Tweedledum and Tweedledee
Agreed to have a battle,
For Tweedledum said Tweedledee
Had spoiled his nice new rattle.
Just then flew by a monstrous crow,
As big

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『不思議の国のアリス』帽子屋の謎々のアナグラム②

『不思議の国のアリス』帽子屋の謎々のアナグラム②

帽子屋の謎々についての新たな発見があったので報告します。

前回は文字列を組み換えるアナグラムの話でしたが、今回は単語の組み換えと駄洒落の複合技です。



まず、帽子屋が出題する2つの謎々、
"A RAVEN"と"LITTLE BAT"から
駄洒落を連想します。

A→A.
(A→A.=アリス)
raven→loving
(レィヴン→ラヴィン)
little→Liddell
(リトル→リドル)

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『不思議の国のアリス』帽子屋の謎々のアナグラム

『不思議の国のアリス』帽子屋の謎々のアナグラム

アナグラムは苦手なのですが、今回は大きな収穫があったかもしれません。



『不思議の国のアリス』第7章で帽子屋が出題する2つの謎々の片方。
"Why is a raven like a writing-desk?"
私の回答は"Like a table"なのですが、この文字列を組み替えると"A likeable T"になるのです。



複数の英英辞典を見比べるとlikeableの語義はpl

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マザーグース『ヘイ、ディドル、ディドル』の謎々について(続)

マザーグース『ヘイ、ディドル、ディドル』の謎々について(続)

1年くらい前に、私はマザーグースの『ヘイ、ディドル、ディドル』の唄が謎々詩で答はmouseだと推定する記事を書きました。

→前回の記事はこちら

詩文に折り込まれた手法の異なる3つのヒントがすべてmouseを示しているので謎々の答はほぼ間違いないと思うのですが、最近新たに思い付いたことがあったので追記します。



まず標準的な形。

Hey diddle diddle,
The cat an

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『鏡の国のアリス』逆さの箱と「桑の木回ろう」

『フィドルディディーの謎』の続きなので、未読の方はそちらを先に御覧下さい。

逆さの箱白の騎士は初登場時、おかしな形の樅の小箱を逆さに肩にくくりつけています。
箱の蓋は開きっ放し。
原文はa queer-shaped little deal boxです。(dealはここでは「樅」でしょう)

白の騎士はこれを「clothesとsandwichesを入れておくための箱だ」と説明します。

①deal

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マザーグースの忘れられた謎々⑨

今回は番外編。『鏡の国のアリス』第9章で言及されているfiddle-de-deeについてです。

複数の書籍やサイトを見たのですが、日本語で紹介されているのは4行1連のバージョン。

原詩AFiddle-de-dee, fiddle-de-dee,
The fly shall marry the humble bee.
They went to the church, and married wa

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『不思議の国のアリス』キャタピラーのアドバイス

『不思議の国のアリス』第4章の終わりから第5章前半に登場するblue caterpillarについてです。

この場面はタロットでは1番の「魔術師」に相当し、レムニスケート(∞:無限大の記号)の形の水煙管(hookah)をふかしています。

『不思議の国』のテニエルの挿絵では水煙管の管がレムニスケートを象っていますが、『地下の国』のキャロルの挿絵ではCaterpillar自身が身体をくねらせてレム

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『スナーク狩り』Bで始まる名前の理由

Lewis Carrollの長編物語詩『スナーク狩り』(The Hunting of the Snark, 1876)は、物語自体が1つの謎々になっています。

この物語には名前がBで始まる乗組員が9人と1匹登場しますが、それは彼らがビリヤードのボールだからなのです。
『スナーク狩り』は、ポケットビリヤードのナインボールのお話だったんですね。
Snarkにはsnookerの意味も含まれているのかも

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『鏡の国のアリス』象蜜蜂と巨大な花

『鏡の国のアリス』第3章冒頭で、アリスが象の蜜蜂と巨大な花を見る場面があります。

ここは、チェス手順では2.●Nf7と3.○d4の間ですから、白のポーンであるアリスがいるのはd2のマス。後方に見える巨大な花はf1にいる白のルークということになります。

チェスのルール上、d2のポーンは、いったんd8まで進んでプロモーションしないことには後方に進むことができません。だからf1には行けず「後回し」に

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『鏡の国のアリス』謎々詩としての「ジャバウォッキー」

Jabberwockyの第2連~第6連は謎々詩です。

この詩全体が第1連と第7連が第2連~第6連を挟む配置で、英国式のクリスマスクラッカーを模した形象詩になっています。

クリスマスクラッカーの中央部分には、通常王冠の玩具や謎々の紙などが入っています。
Jabberwockyの中央部分も謎々です。

私の回答。

謎々の答としては"snapdragon"とか"a snapdragon in a

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マザーグースの忘れられた謎々⑧

今回は"There was a man of double deed"と
"A man of words and not of deeds"です。

原詩AThere was a man of double deed
Sowed his garden full of seed.
When the seed began to grow,
'Twas like a garden full of sno

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マザーグースの忘れられた謎々⑦

今回は「靴に住んでたおばあさん」他です。

原詩1There was an old woman who lived in a shoe,
She had so many children she didn't know what to do;
She gave them some broth without any bread;
She whipped them all soundly and p

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マザーグースの忘れられた謎々⑥

今回は「ヒッコリー、ディッコリー、ドック」です。

原詩Hickory, dickory, dock,
The mouse ran up the clock.
The clock struck one,
The mouse ran down,
Hickory, dickory, dock.

(拙訳)
8、9、10
マウスが時計を駆け上がる
時計が1つ鐘を打てば
マウスは時計を駆け

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